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かんしょでん粉かすの有効利用について

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最終更新日:2010年3月6日

かんしょでん粉かすの有効利用について
〜きのこ栽培への利用〜

[2008年11月]

【調査報告】

独立行政法人国立高等専門学校機構
鹿児島工業高等専門学校
土木工学科 准教授 山内正仁


1.はじめに 〜求められる焼酎・でん粉副産物の高付加価値利用〜

 鹿児島県では、来襲する台風に強く、かつ、やせたシラス土壌に適するかんしょの栽培と、その加工品であるいも焼酎の生産が古くから盛んに行われている。しかし最近では、いも焼酎の製造の際に副産物として排出される焼酎かすの海洋投棄が原則禁止されたことから、焼酎かす利用法の開発が県の緊急課題となっている。
  現在、鹿児島県内では年間44万2千トン(平成18酒造年度)の焼酎かすが発生しており、それらは直接、または固液分離装置で固形画分・液画分に分離された後、固形画分については液画分から得られるメタンガスやアルコールを熱源として用いて乾燥し、肥料・飼料として利用されている。しかし、焼酎かすを肥料・飼料として利用するだけでは、製品に十分な付加価値を付与できず、安価な既存製品に対抗できない、焼酎かすの有用成分を十分活かしきれていないなどの問題が残る。
  いも焼酎とともに鹿児島県の基幹産業であるでん粉製造業界においても、いくつかの問題に直面している。例えば、でん粉の原料であるかんしょが焼酎生産量の増加により、十分にでん粉原料として確保できなくなってきた。また、価格の安い輸入でん粉のあおりを受け、県内産のでん粉は最盛期の1963年と比較して8分の1まで減少している。そのような状況にあるにもかかわらず、県内では現在も14万5千トンのかんしょを処理し、4万5千トンのでん粉を製造している。
  でん粉製造過程では、でん粉かすが年間2万6千トン発生し、クエン酸原料や飼料、肥料(農地還元)、ボイラーの燃料などに利用されている。しかし、クエン酸については海外の安価なクエン酸におされ、価格が低迷しており、でん粉かすからのクエン酸製造量は減少傾向にある。また、飼料については水分率が高く、腐敗し易い(水分率75%程度)、単独の飼料価値が低いなどの問題がある。肥料(農地還元)については、でん粉かすに含まれる食物繊維などの有用成分を十分に活かしきれていないのが現状である。したがって、焼酎かすと同様、でん粉かすについても、経済的有用性および付加価値の高い利用法の開発が求められている。


〜栄養価、安全性への着目〜
  このような背景の中で筆者は、焼酎かす・でん粉かすともに栄養価、安全性の高い農作物由来の副産物であることに着目し、これらを原料にして付加価値の高い食品を新たに作り出すことが可能となれば、食品リサイクル法上においても高度な有効利用法となり、かつ新規用途開発につながると考えた。さらに、焼酎かすにはアミノ酸類、ミネラル、食物繊維、ビタミンなどの成分が多く含まれており、これらと同様の成分が食用きのこに多く含まれている点、また、でん粉かすは繊維質に富み保水性が高く、体積が大きく、おが屑と同様な特性を持つ点から、これらの性質を統合し両原料(焼酎かす・でん粉かす)をきのこ栽培用培地として利用可能であろうとの推察に至った。
  本研究では、焼酎かす・でん粉かすを食用きのこ培地の栄養材、培地基材として活用することによって、地域に適した環境保全型・資源循環システムを構築することを最終目的とし、焼酎かす、でん粉かすの食用きのこの培地材料としての利用可能性を検証した。


2.焼酎かす・でん粉かすの資源循環システム 〜きのこ培地介在の高度な利用〜

 焼酎かす・でん粉かすをきのこ培地に活用することで直接、肥料・飼料として利用するよりも高度な利用が可能と考えられる。図1に焼酎かす・でん粉かすの資源循環システムのフローを示す。固液分離後の焼酎かす(固形画分)はメタンガスやアルコールを燃焼させることで得られる熱源などで乾燥させ、いずれも粉末の固形物(焼酎かす乾燥固形物)となる。その固形物とでん粉製造過程で発生するでん粉かすをきのこ培地に利用し、有価物(きのこ)を得る。
  また、その過程で発生する使用済み培地(廃培地)は家畜の飼料として活用後、肥料化(たい肥化)する。この肥料をさつまいもの栽培などに利用し、いも焼酎やでん粉を製造する。その製造過程で生じた焼酎かす・でん粉かすが再び、きのこ培地として生まれ変わる。このように焼酎かす・でん粉かすを食品生産のための原料として活用し、食品(きのこ)→家畜飼料→肥料と段階的にその品位に応じて利用した方が未利用資源の有効活用、食品リサイクル法、経済効果などの面で優位であり、経済的有用性および付加価値の高い利用法につながると考えられる。


図1 焼酎かす・でん粉かすの資源循環システム


3.材料および方法


(1)供試菌株
  本試験では、培養菌糸体および子実体(通常呼ばれるきのこ)に、免疫賦活、抗腫瘍作用および神経成長因子合成促進作用など、人体に対する機能性を示す成分を含有することが報告され1―3)、かつ、エノキタケ、ブナシメジ、ナメコなど主要品目よりはるかに有利な単価で販売されているヤマブシタケ(Hericium erinaceum;(株)キノックス)を用いた。


(2)培地の調製
  焼酎かす・でん粉かす培地および標準培地の培地条件を表1に示した。また、焼酎かす・でん粉かすの性状を表2に示した。焼酎かす・でん粉かす培地では、最適配合割合を明らかにするために、これらの材料をそれぞれ培地乾重量の20%〜80%、76%〜16%まで変化させた。また培地のpHを5.0〜6.0程度に調製するために、貝化石(鹿児島県吉田町産;未凝結の貝砂状のアラゴナイト系石灰)を培地乾重量の4%添加し、これらの材料をミキサーで30分かく拌した。さらに、培地の水分率が64%程度になるように水道水を加えてかく拌し、調製した。最後にこれらの試料をポリプロピレン製のビン容器(容量:850mL、口径58mm、ウレタン無し)にそれぞれ表1の試験区ごとに瓶詰め重量のとおり充填した(表1参照)。
  一方、標準培地(BL)は広葉樹(ブナ)と栄養材(コーンブラン)の乾燥重量比が2:1になるように混合し、水道水を加えて水分率を64%程度に調製したものをポリプロピレン製の瓶容器に600g充填した4、5)(表1参照)。なお、標準培地においても焼酎かす・でん粉かす培地と同様、貝化石を添加した。
  充填後、121℃で3時間高圧滅菌処理を行った瓶に、クリーンルーム内で供試菌を瓶当たり約10g接種した。なお、各試験区の供試瓶数は32本とした。


表1 培地条件
注:滅菌後の水分率、pH

表2 焼酎かす・でん粉かすの性状
(単位:%)
注:脱水処理後のでん粉かす

(3)栽培条件
  接種した瓶は、温度22±2℃、湿度75±5%に制御した室内で培養し、作業時のみ蛍光灯を点灯した。培養期間終了後、発生処理として菌掻き(瓶口周辺に付いている古い種菌を取り除くこと)を行い、再びキャップを付け、温度13±2℃、湿度85〜90%に制御した発生室に瓶を移し、子実体(きのこ本体)の形成を促した。なお、本研究では100ルクス(lux)程度の光を1日8時間照射することとした。


(4)調査方法
  きのこ菌糸の生長過程を調査するために、菌周り日数(きのこの菌糸が伸長し、瓶全体にまん延する時期)を調査した。また、菌糸の張り具合(密度)を栽培18日目に定性的に評価した。
  子実体については、針が形成され胞子の落下が始まっている状態のものを収穫し、生重量、栽培所要日数を算出した。また、形態的特性を調査するために収穫した子実体を房ごとに縦径と横径、ならびに高さの最大値を計測した。子実層針の長さについては、子実体の断面における菌柄(基部)の付根から針の先端部までの長さを各房5本ずつ測定した。


4.結果および考察


(1)栽培試験について 〜収量性の向上、菌掻きから収穫までの日数に短縮効果〜
  表3に栽培試験結果を示した。焼酎かす・でん粉かす培地における菌周り日数は、16日〜18日程度であり、焼酎かす、でん粉かすの配合割合の違いによる菌周り日数の差はあまり見られなかった。しかし、標準培地と比較すると2日〜4日程度遅くなる傾向にあった。馬替6)は、脂肪酸エステルがきのこ菌糸(ヒラタケ)の伸長に及ぼす影響を調査し、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステルが菌糸の伸長を阻害することを明らかにしている。
  焼酎かす・でん粉かす培地には、米やかんしょ原料中に含まれる成分が発酵や蒸留の工程でアルコールと結合した脂肪酸エステルが含まれていることから、これらの成分が、菌糸伸長を阻害したものと考えられる。
  今回の試験では、培養日数を平成15・16年度種苗特性分類調査報告書(やまぶしたけ)に準じたため、すべての試験区で31日目に菌掻き作業を行った。
  ヤマブシタケは、培養段階で菌糸が培地内にまん延していくと同時に、接種面から上方にマット状の菌塊が発達し子実体となるため、配合条件(試験区1)によっては、一部菌糸がキャップを持ち上げたものもあった。ヤマブシタケの場合、培地内に多少の未まん延部があっても、発生処理後にまん延してしまい、収量に影響を及ぼさないとの報告がある4)。このことから、今後培養日数は20日程度に短縮できるものと考えられる。菌掻きから収穫までの日数は焼酎かす・でん粉かす培地の試験区1〜3で22日間程度であり、標準培地(BL)より3日間程度短くなった。また、収量も試験区1〜3では標準培地のそれぞれ2.6倍、2.2倍、1.9倍と非常に多かった。さらに栄養材10g当たりの収量性を比較すると、焼酎かす・でん粉かす培地では、試験区1を除き、標準培地より高くなった。特に試験区3は22.1gと収量が最も高く、標準培地の1.5倍であった。菌糸密度は焼酎かす・でん粉かす培地では栄養材の添加量が多いほど培地表面は白く、菌糸密度が高くなる傾向にあった(図2)。
  つぎに子実体全体の形を観察すると、その形状は混在型で、子実体の発生における房別れの状態は散状型が多かった(図3)。また栄養材添加率が高いものほど、子実体は大きくなったが、特に試験区1では、子実体が非常に大きく、房が均一に形成されていない場合は、培養瓶のバランスが不安定になり、倒れ易くなった(図4)。
  本試験では子実層針が形成されるまで栽培を行ったため、総栽培日数が52日〜58日と非常に長くなった。さらに、収穫時期がやや遅れたことで、子実体の中心部に褐変が見られた。しかし、本試験を通して焼酎かす・でん粉かす培地は、ヤマブシタケの栽培において、収量性が高く、菌掻きから収穫までの日数を短縮できる効果的な培地であることが明らかになった。また、その最適配合条件としては、培養日数、栄養材10g当たりの収量性および、子実体の形状、作業性などから判断して、試験区2、3の焼酎かす添加率40〜60%、でん粉かす添加率36〜56%が最適であると考えられた。


表3 ヤマブシタケの栽培試験結果
クリックすると拡大します。

図2 栽培18日目の各試験区の菌周り状況

図3 栽培終了時のヤマブシタケ(試験区2;でん粉かす36%+焼酎かす60%+貝化石4%)

図4 房が均一に形成されていないヤマブシタケ(試験区1)
(左:栽培終了時の状況、右:収穫後、子実層針側を上に向けた状態)

(2)培地材料費の算出 〜大幅なコスト削減の可能性〜
  (1)の試験結果から焼酎かす・でん粉かす培地のヤマブシタケ栽培における材料費を算出した。その結果は表4に示した。培地詰め量を540g(配合割合(乾物%);でん粉かす46%、焼酎かす乾燥固形物50%、貝化石4%)、水分率64%の条件で培地を作製すると、瓶1万本当たり、でん粉かすは乾物で894kg(脱水かすで3,216kg(水分率72.2%))必要となる。でん粉かすは、現在、クエン酸原料として利用される場合、でん粉工場が輸送経費持ちで産廃手数料を支払っている状況にある。また、飼料利用の場合、でん粉かすは日持ちがしないことから、一度でん粉かすに生石灰を加え、水洗いし、脱水後、無償に近い状態(トラック1台で数百円程度)で農家に供給されている。このようにでん粉かすの状態では、付加価値が全くついていない状況にある。したがって、でん粉かすの材料費は0円とした。焼酎かす乾燥固形物はビン1万本当たり乾物で972kg(現物で1,047kg(水分率7.2%))必要となる。この使用量から栄養材費を算出すると26,175円となる。さらにpHコントロール材として貝化石(36円/kg)を添加しているため、1万本当たり2,873円必要である。これらを合計すると、焼酎かす・でん粉かす粕培地では、材料費が1万本当たり29,048円となった。
  2008年度版きのこ年鑑に記載されている経営指標によると慣行培地の1万本当たりの培地材料費は85,050円(おが屑(広葉樹);40,800円(6,800円/m3)、おが屑(針葉樹);13,500円(4,500円/m3)、コーンブラン(とうもろこしのぬか);17,000円(68円/kg)、その他栄養材;13,750円(55円/kg))であることから、かんしょ残さでヤマブシタケを栽培すると、材料費を3分の1程度に抑えることが可能であり、きのこ栽培業者にとっては材料費の軽減と収量増加により収益の増加が見込まれる。またでん粉製造業者にとっては、今まで処理が問題となっていたでん粉かすがおが屑の代替として利活用されることで、処理経費の削減につながり、結果としてでん粉製造コストの低減にもつながるものと考えられる。


表4 ヤマブシタケ栽培における材料費(瓶1万本当たり)
(単位:円)
注:2008年度版きのこ年鑑に記載されている経営指標参照

5.おわりに

〜環境保全型・資源循環システム構築への期待〜
  本研究では、地域に適した環境保全型・資源循環システムを構築することを最終目的とし、焼酎かす・でん粉かすの食用きのこ栽培への利用可能性を検証した。その結果、焼酎かす添加率40〜60%、でん粉かす添加率36〜56%、貝化石4%の割合で培地を調製し、ヤマブシタケを栽培すると、収量は標準培地の1.9〜2.2倍となり、また栽培期間を3日程度短縮できることが明らかになった。さらにきのこ栽培業者にとっては、材料費の大幅な軽減、またでん粉製造業者にとっては、でん粉かすの委託処理経費の軽減にもつながると同時に未利用資源としても期待ができる。
  きのこ類は免疫力を高める成分を含み、健康食品、予防医学の食材としても見直されている。今後は、焼酎かす・でん粉かす培地で栽培したきのこ(ヤマブシタケ)の機能性成分の分析を行い、慣行培地で栽培したものより、さらに機能性の高いきのこを生産することが可能か明らかにする。また、現在のところ、ヤマブシタケ以外にヒラタケ栽培(図5参照)においても本培地が利用可能であることを明らかにしているが、他の食用きのこについても栽培試験を実施し、焼酎かす・でん粉かす培地の利用可能性を調査する予定である。


図5 焼酎粕・でん粉粕培地で栽培したヒラタケ

〜使用済み菌床の飼料への利用〜
  さらに、きのこ収穫後、使用済み菌床(廃菌床)が排出される。現在のところ、廃菌床の利用については、一部がたい肥化または農地へ還元されているが、ほとんどのきのこ生産農家は処分に困っているのが現状である。他県では、廃菌床を燃料用ペレットにする計画もあるが、きのこ菌糸およびその副産物が残存する廃菌床については、家畜飼料としての可能性が大いに期待できる。
  鹿児島県のような全国有数の畜産県においては、地元から安価で供給できる飼料は、飼料購入費や飼料輸送コストの削減に、多大に貢献すると考えられる。例えば、乳用経産牛1頭当たり必要なTDN(可消化養分総量)は年間20,392kgであり、そのうち濃厚飼料由来のTDNは12,235kgである。廃菌床飼料化および給与技術を確立し、濃厚飼料由来TDNの10%を、廃菌床飼料で代替すると1頭当たり年69,910円の飼料費低減が可能であり、50頭規模飼養農家では、年間350万円程度の飼料コスト削減が実現できるものと推察される。
  飼料価格が高騰している昨今、地域資源を利用した高品質の飼料が安価で供給されることになると畜産業への貢献も可能となり、焼酎かす、でん粉かすの新しい資源循環システムも構築される。


謝辞
 本研究を実施するにあたり、サザングリーン協同組合、九州化工(株)より焼酎かす、でん粉かすを提供していただいた。ここに記して謝意を表す。


参考文献
1) 水野 卓、河合正充:キノコの化学・生化学、東京、学会出版センター、2001、73―97
2) 河岸洋和:神経成長因子の合成を促すキノコの2次代謝産物、日菌報、42、11―16(2001)
3) 株式会社特産情報きのこ年鑑編集部:2004年度版きのこ年鑑、175―179、218―223、269(2004)
4) 株式会社特産情報きのこ年鑑編集部:2008年度版きのこ年鑑、211―215(2008)
5) 全国食用きのこ種菌協会:平成15・16年度種苗特性分類調査報告書(やまぶしたけ)、13―14(2005)
6) 馬替由美:きのこ栽培における乳化剤の培地添加の検討、
森林総合研究所所報No.129、
http://www.ffpri.affrc.go.jp/shoho/n129-99/129-8.htm(1999)

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