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「米国人のための食生活指針」、糖類摂取量の上限を初めて明記(米国)

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最終更新日:2016年1月14日

 米国保健福祉省(HHS)と米国農務省(USDA)は2016年1月7日、「米国人のための食生活指針(2015-2020 Dietary Guidelines for Americans)」を公表した(注1)
 この指針は、米国国民の健康を維持するために、日常の食生活において摂取を推奨するまたは控えるべき品目や栄養素などを記載したもので、1980年に初めて作成されて以降、5年ごとに見直されることとなっている。
 7回目の改訂となる今回、糖類(注2)の摂取量について、初めて具体的な制限値が提言された。今回公表された指針の主旨は、以下の通りである。
図
 糖類の摂取量については、飽和脂肪酸を含む脂肪と同様、1日当たりの摂取カロリーの10%未満にとどめることが望ましいとされた。指針には、現在の平均的な米国国民の糖類からの1日当たりの摂取カロリーは、13%以上に当たるおよそ270キロカロリーとある。指針の中では、糖類は「食品の嗜好性や保存性を高め、特色ある食感や色味などを生み出すことができる」といった効用があるとした一方で、「糖類の含まれる飲料、スナック類や菓子類の摂取を制限することが、カロリーを抑制し、健康的な食生活様式につながる」と明記されている。
 また、「糖類を高甘味度甘味料(注3)に置き換えることは、短期的には摂取カロリーの低減につながるだろう」とし、長期的な影響に関する明記は避けつつも、糖類を高甘味度甘味料に置き換えても、それぞれの物質の1日摂取許容量(注4)を超えないだろうとの米国食品医薬品局(FDA)の見解を紹介した。
 
 指針の改訂に基づき、大手小売店などが商品のラインナップや商品に含まれる栄養素の構成を見直すこともあり、この改訂は、米国国民の食生活に対し、一定の影響力があるとされている。
 実際に、清涼飲料水の製造事業者や流通事業者で構成する米国飲料協会(American Beverage Association)は、指針公表と同日に声明を発表し、「国民の健康的な目標体重の達成・維持のため、全面的に協力する。」「飲料製造事業者は、国民の清涼飲料水からのカロリー摂取低減という共通の目標に向かって、容量の変更や分かりやすいカロリー情報の提供に努める」とし、このような動きが、「飲料からのカロリーや糖類の摂取低減への一助となるだろう」との見解を示している。また、指針でも高甘味度甘味料の安全性が肯定されたことを併せて取り上げた。
 一方で、砂糖の消費拡大活動を行っている米国砂糖協会(The Sugar Association)は同日付けの声明において、今回の指針が「科学的な根拠に乏しいにもかかわらず、糖類の摂取量を制限し、それが目標とされていることには失望した。」との態度を明らかにし、「科学的に正確な検討プロセスの欠落は、消費者の無関心や不信、混乱を招く」と非難している。
(注1)2015年2月19日に、米国食生活指針諮問委員会によって両省の次官あてに答申され、公開討論や意見聴取(パブリックコメント)を経た報告書(「Scientific Report of the 2015 Dietary Guidelines Advisory Committee」が基礎となっている。報告書の概要などについては、2015年2月26日に既報の海外情報「『米国人のための食生活指針』の答申、糖類摂取量の数値制限を明記(米国)」を参照されたい。
   URL: http://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_001203.html
 
(注2)糖類とは、果物などに自然に存在する糖を除く、砂糖、異性化糖、ぶどう糖、ハチミツなどに含まれる糖と定義されている。
 
(注3)FDAが承認している高甘味度甘味料は、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロースなどである。
 
(注4)1日摂取許容量(ADI)とは、人が一生涯にわたり毎日摂取しても、健康上、悪影響がないと推定される化学物質の1日当たり最大摂取量をいう。


【丸吉 裕子 平成28年1月14日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8609