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豪州乳業メーカー各社、新年度乳価を発表(豪州)

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 豪州乳業メーカー各社は、2016/17年度(7月〜翌6月)の開始に当たって、生産者支払乳価を相次いで発表した。各社とも前年度よりも安い乳価設定となり、中でも、最大手の酪農協系乳業メーカーであるマレーゴールバン(MG)社は、前年度を2割以上下回る大幅な引き下げとなった。

豪州最大手、2割超の大幅引き下げ

 MG社は2016年6月28日、同社の2016/17年度(7月〜翌6月)の生産者支払乳価について、乳固形分1キログラム当たり4.31豪ドル(340円、1豪ドル=79円)とすると発表した(緊急支援策(MSSP)(注)に伴う天引き後の価格)。前年度の当初乳価(同5.60豪ドル(442円))よりも23.0%安と大幅な引き下げとなった(図)。
MG社 生産者支払乳価の推移
 これについて同社は、乳製品国際価格の低迷が今もなお続いていること、2016年の間は大幅な回復が見込めないことの2点を理由として挙げている。現地報道では、酪農家の平均的な生産コストは同5〜5.50豪ドル(395円〜435円)程度であるとしており、同社は「酪農家にとっては、非常に厳しいシーズンが続くことになる」としている。
 現地報道によると、MG社の発表に対する酪農家の声として、想定していた最悪のシナリオよりもさらに低い乳価設定となったとしており、現在の乳価が続けば、事業を継続できない酪農家が、今後増えてくるのではないかとしている。

(注)緊急支援策(Milk Supply Support Package:MSSP)の概要

 2016年5月の生産者支払乳価の引き下げと併せて発表されたもので、2015/16年度の最終的な生産者支払乳価と保証水準との差額を、MG社自身の資金投入により補てんするというもの。総額1.4〜1.9億豪ドル(111〜150億円)程度となると見込まれているが、同社はこの資金の財源について、酪農主産地である豪州南部の生産者支払乳価から、向こう3年の間、一定額を天引きする形で調達するとしている。
 2015/16年度の最終乳価が未確定のため、MSSPの総額は確定していないが、現段階では、2016/17年度のMSSPに伴う天引き額は0.14豪ドル(11円)と定められた。

乳業メーカー各社も、引き下げの動き

 MG社の発表と前後して、豪州の乳業メーカー各社も、生産者支払乳価を発表したが、いずれも前年度よりも安い乳価設定となった(表)。
豪州の主要乳業メーカーの生産者支払乳価の動向
 こうした乳価設定について、現地報道は、乳製品国際需給の不均衡が続いていることに加え、乳製品国際価格の回復が2017年前半までかかるとの見方が背景にあるとしている。
 豪州フォンテラ社も同様の見方を示しており、6月30日付けのプレスリリースの中で、乳製品国際需給は今後も不均衡状態が続く可能性が高いと述べている。しかし一方で、直近の動きを見ると、ニュージーランドでの生産減や、乳製品国際価格下落に伴うアジア各国での輸入需要の高まりを受け、年度末にかけて、不均衡な需給状態は徐々に回復に向かう兆しもあるとしている。

【参考】
 (1)豪州乳業メーカー、2015/16年度生産者支払乳価を1割以上引き下げ(5月9日付け既報
 (2)ニュージーランド乳業メーカー、2016/17年度生産者支払乳価を発表(5月30日付け既報6月10日付け既報

 
【竹谷 亮佑 平成28年7月5日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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