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米国向けの生鮮牛肉輸出が17年ぶりに再開(アルゼンチン)

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 アルゼンチン工業生産・労働省農産業庁は12月11日、米国向けの生鮮牛肉輸出が17年ぶりに再開されたと発表した。
 再開後初の輸出は、500キログラムのリブアイ(ojo de bife)が、アルゼンチン最大手パッカーの1つであるSwift Argentina社から、空輸にて行われた。これについて、エチェベレ工業生産・労働副大臣(農産業庁担当)は、民間の素早い反応によって早急に出荷されたこと、かつリブアイという高級部位の輸出に成功したことについて「非常に満足」していると語った。加えて、「2018年は牛肉輸出業界において歴史的な年だったと記憶されるだろう。アルゼンチンは、世界で6番目、メルコスール(南米南部共同市場)では2番目に大きな牛肉輸出国(注1)としての地位を確立し、輸出量はこの1年で70.1%増になった」と語った。

(注1)メルコスール最大の牛肉輸出国はブラジルである。

 アルゼンチンの2018年1〜10月の輸出量は、需要が旺盛な中国や、主要輸入相手国だったブラジルからの輸出を成長促進剤の検出により一時停止したロシア(注2)からの引き合いが非常に強まったことなどから、前年同期比67.6%増の28万3781トンとなった(表1)。現地関係者によると、政権交代後の輸出環境の改善(注3)から、パッカーの輸出意欲は非常に高まっており、生産余力もあることから、2019年以降もさらなる生産・輸出拡大が見込まれ、米国向け輸出の拡大にも期待が高まっている。

(注2)詳細については、海外情報2017年12月27日発「ロシア向け牛・豚肉の輸出停止に伴う現地の反応(ブラジル)」参照。
(注3)政権交代後の輸出環境改善状況については、畜産の情報2018年7月号「アルゼンチンの牛肉生産・輸出の現状とパタゴニア地域の潜在力」を参照。
表1
 アルゼンチンから米国への生鮮牛肉輸出は、1997年に解禁され、ハンバーガー用の赤身肉に加え、ヒレやサーロイン、リブアイなどの高級部位が中心となって行われていた。当時は、米国の好景気や牛肉価格上昇などを背景に高級部位の引き合いが強く、アルゼンチン国内では、ヒルトン枠(注4)以上の可能性を持つ市場ではないかとも期待され、同国向け輸出最盛期であった1999年には、全体の輸出量の約15%となる2万3505トンを輸出した(表2)。しかし、2000年〜2001年ごろにかけて発生した口蹄疫の影響で輸出停止となって以降、今般の再開まで17年の年月を要する結果となった。  エチェベレ副大臣は、今後、同国への輸出の8割がハンバーガー用の赤身肉、残りの2割が高級部位になるだろうと語った。なお、アルゼンチンは、米国に対して現在年間2万トンの関税無税枠を保有しており、同副大臣は、この枠は、輸出業者にとって1億5000万〜1億8000万米ドル(171億〜205億2000万円、1米ドル=114円)の価値があるとしている。なお、枠外税率は26.4%となっている。 (注4)ヒルトン枠とは、EUが定める高級牛肉関税枠で、従価税20%。牧草肥育でなければいけないなど一定の条件がある。
表2
 アルゼンチンの業界団体は今回の輸出再開に対して歓迎の意を表しており、アルゼンチン牛肉振興機関(IPCVA)のウリセス・フォルテ代表は、「長年の交渉の結果だ。今般の再開はアルゼンチンの牛肉業界にとって非常に好意的なものとなる」とした上で、「米国向けの再開は、アルゼンチンの衛生条件が世界レベルであることの証明となり、メキシコをはじめとしたカリブ海諸国や韓国などの巨大市場へのアプローチのきっかけとなるだろう」と語った。
【佐藤 宏樹 平成30年12月17日発】
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