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代替性たんぱく質の状況について〜USDA OUTLOOK FORUM〜(米国)

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 2020年2月20、21日の2日間にわたりUSDAが開催した、2020年農業アウトルック・フォーラム(2020 Agricultural Outlook Forum)において、代替性たんぱく質に関する講演が行われ、以下のような報告があった。
 代替性たんぱく質は米国でブームとなっているが、米国における市場規模は10億ドルであり、米国の動物性たんぱく質市場の900億ドル、世界中の動物性たんぱく質市場の1.6兆ドル規模と比べれば非常に小規模である。
 しかし、今後も成長は続くものとみられており、2030年には約300億ドル規模の市場に成長すると予測されている。

 この代替性たんぱく質市場を支えているのは消費者志向であり、主な志向として、健康志向、持続可能性、特異性、栄養成分、動物福祉という要因が挙げられる。1990年代以降に生まれたジェネレーションZと呼ばれる若い世代は環境への影響を重視し、1950年台前後に生まれたベビーブーマーと呼ばれる世代は自身の健康を重視するため、世代によってどの志向が優先されるかは異なってくる。
 また、ベジタリアンやビーガンが代替性たんぱく質市場をけん引してきたが、今後は週1回は畜産物の摂取を控えるという、フレキシタリアンと呼ばれる新たな消費者層が注目されている。

 動物性たんぱく質部門も、ただ黙ってみている訳ではなく、畜産業界の今後20年間の水使用量は現状よりも20%減となる見込みであり、二酸化炭素排出量も減少するとみられている。
 代替性たんぱく質を製造・販売する企業は少し前までは非常にわずかであったが、近年は非常に多くの企業が製造・販売するようになり、乱立の様相を呈している。このような要因として、消費者志向が一番であるが、代替性たんぱく質商品を導入するに当たってコストを必要とせず、若い世代に人気であり、環境への取り組みをアピールできるという点から、飲食店や小売店が参入したことも大きい。

 細胞培養肉に関しては、まだ不透明な部分が大きい。当面の課題として、生産コストの低減、市場への参入に当たっての規制、表示の問題、消費者が受け入れるかどうか、真の環境影響がどの程度のものなのかという点が挙げられる。
 代替性たんぱく質市場は、消費者志向に沿って今後も拡大し続けると思われるが、塩分やたんぱく質含有量などの栄養成分に関しては、消費者が代替性たんぱく質商品に対して抱くイメージと実際は異なることが明らかとなっている。そのため、代替性たんぱく質市場が今後も成長を続けるとは考えられるが、どのような成長速度になるかは、新たな商品に掛かっているとも考えられ、市場の動向が注視される。

(注)米国における代替たんぱく質をめぐる動向については、「畜産の情報」2019年10月号「米国における食肉代替食品市場の現状」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000777.html)を参照されたい。
 
 
【調査情報部 令和2年3月23日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Fax:03-3583-4397