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農業界は共同で第1段階の米中経済貿易協定を支持する書簡を発出(米国)

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 6月16日、米国農業団体や企業を含む約200もの関係組織らが連名で、トランプ大統領や米国農務省(USDA)のパーデュー長官などに、第1段階の米中経済貿易協定(以下、「協定」)を支持する内容の書簡を送った。
 書簡には、協定が締結されたことに対する米国政府当局への謝辞からはじまり、米国農業の短期的および長期的な成功と成長にとって協定は必要不可欠であり、農業部門における何百万人もの米国人の雇用の維持にも貢献しているという、米中貿易の重要性が記されている。また、現在の米国産農産物の中国向け輸出のペースは、協定での努力目標を下回るペースではあるが、米国の農家、牧場主、農村コミュニティは、中国が今後輸入ペースを加速させて目標を達成するとして、依然として楽観的であると、中国の今後に対する期待感を述べている。
 2020年の米国農業総所得は昨年比で9%に相当する110億米ドル(1兆1880億円、1米ドル=108円)の減少が予想されている中、協定による米国産農産物および食品の中国向け輸出はかつてない素晴らしい好機であり、米国農業の雇用を増加し、製造、包装、保管、輸送、物流、重要な港湾ネットワークの維持など、サプライチェーン全体の経済活動をさらに強化するためのメカニズムを提供するものである。また、中国はカナダ、メキシコに次ぐ3番目の米国産農産物の輸出先であり、中国で急速に成長している中産階級は、米国に更なる輸出機会を提供するものであると、書簡の中で米中貿易の必要性を繰り返し強調している。
 2020年2月14日に発効した協定により、この書簡において協定による好影響とされた項目や、その他これまでに中国向けの輸出アクセスが改善された項目は以下の通り。

<トウモロコシ>
 中国は、世界需要のほぼ25%を占めている巨大市場である。米国産トウモロコシは2013年後半から遺伝子組み換え作物(GMO)の問題により、中国におけるシェアが90%超から10%未満に減少したため、協定によるGMOの取り扱いが改善されることが期待されている。

<大豆>
 2017年は大豆の輸出額は139億米ドル(1兆5012億円)にのぼり、中国向けの米国産農産物の輸出額の52%を占めていた。その後、2018年以降の報復関税によって輸出量は大きく減少したが、2020年の輸出量は増加傾向にあり、協定による農産物の購入目標が影響していると考えられる。

<家畜飼料>
 協定により、加工用の米国産大麦、飼料用の乾草チモシー、アルファルファのペレットとキューブ、アーモンドミールのペレットとキューブなどの家畜飼料の輸出解禁やトウモロコシ蒸留粕(DDGS)などの家畜飼料を扱う輸出施設リストの更新が行われた。

<牛肉>
 2017年に中国は米国産牛肉の輸入を再開したが、それまでに13年間もの時間が費やされた。そして、協定により、30カ月齢超の牛由来の牛肉または牛肉製品の輸入制限が撤廃され、米国の牛肉生産で使用が認められている3種類の成長ホルモン(ゼラノール、 酢酸トレンボロン、 酢酸メレンゲステロール)の中国における最大残留基準値の設定、中国向け輸出施設リストの更新など、輸出アクセスの改善がもたらされている。また、2019年には最大で47%であった報復関税は、現在は12%まで削減されており、協定による恩恵が大きいとしている。

<豚肉>
中国は米国産豚肉にとって非常に重要な市場であり、協定により、中国向け輸出施設リストの更新が行われたほか、2019年には最大で72%であった報復関税は、現在は33%まで削減されている。報復関税により中国市場での米国産シェアは減少したため、協定により低関税を維持することが、欧州やブラジルなどの競合国との競争において重要であるとしている。

<家きん肉>
 協定により、米中両国は、米国で高病原性鳥インフルエンザまたは病原性ニューカッスル病の発生が確認された場合において、疾病発生の影響を受けない地域からの輸出を継続することを認める地域主義協定への署名を行った。中国産家きん肉については、中国における当該疾病の清浄化が確認された後に、本地域主義が適用されることとなっている。

<乳製品>
 中国は米国酪農業界の将来的な成長にとって非常に重要な市場であると位置付けており、協定により、ヒト用の乳限外ろ過粉末の輸出解禁につながる中国国内の基準の公表や中国向け輸出施設リストの更新が行われた。しかし、米国産乳製品に対して賦課された報復関税は維持されたままになっている。

<ペットフード>
 協定により、家きん肉由来原料を含むペットフード製品の輸入解禁や反すう動物由来原料を含むペットフードの輸入制限の撤廃が行われた。
 
 協定で合意された条項のうち、既に実施されている条項とまだ実施されていない条項が存在しているため、米国農業の分野によっては協定の恩恵に濃淡があるようにみられる。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などによる影響で、中国が協定発効から2年以内に米国から農産物や工業製品などを購入するという目標を達成するペースで購入が進んでいないことなどを懸念する声や、米中間の様々な問題が存在する状況においても、米国農業界としては、協定を維持することにより、米国産農産物の輸出先を確保し、今後の先行きを少しでも明るいものとすることが最優先であるという意思が感じられる。
 なお、中国海関総署(日本でいう税関)は6月21日、米国の食肉大手パッカー・タイソン社スプリングデール工場でCOVID-19が発生したことを理由に、同工場からの鶏肉輸入を停止したことを発表したほか、中国は香港で導入された新たな国家安全保障法制について、トランプ大統領が批判したことへの対抗措置として、豚肉、大豆など米国産農産物の一部の輸入停止を示唆したことが報じられている。一方、6月24日、USDAと米国の食品安全医薬品局(FDA)は諸外国によるCOVID-19に関連した食品輸入制限は科学に基づく対応ではないため、適切な対応を促す共同声明を発出している。協定合意の履行については政治的課題も含め様々な要因が混在し、複雑性が増している状況と考えられ、今後も注視していく必要がある。

【参考:新型コロナウイルス関連情報(米国)】
【国際調査グループ 令和2年6月29日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9805



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