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ベルギー、2年3カ月ぶりにアフリカ豚熱清浄国に

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 国際獣疫事務局(OIE)は12月22日、ベルギー国内の飼養豚を含むすべてのイノシシ科動物について、OIEコードに基づき、アフリカ豚熱清浄国の要件を満たしたとする同国獣医当局の発表を掲載した。2018年9月、同国の野生イノシシでアフリカ豚熱の発生が確認(参考1)されてから、2年3カ月が経過している。
 EU最大の豚肉生産国である隣国ドイツでアフリカ豚熱の感染が拡大する中(参考2)、ベルギーは徹底した対応によりアフリカ豚熱ウイルスの封じ込めに成功したが、清浄化には2年以上の時間を要した。

 ベルギー連邦フードチェーン安全庁(FASFC)によれば、2018年9月のアフリカ豚熱初発以降、ベルギーは野生イノシシ群のアフリカ豚熱ウイルス封じ込めを目指し、近隣諸国との連携をはじめ、予防対策および監視などさまざまな措置を行ってきた(参考3)。具体的には、養豚場における厳格なバイオセキュリティー措置や、野生イノシシの侵入防止のための300キロメートルにも及ぶフェンスの設置、立入禁止地域の設定、狩猟による野生イノシシの予防的処分などである。FASFCは、これまで計5422頭の野生イノシシのうち833頭でアフリカ豚熱が陽性であったものの、初発から約1年後の2019年8月11日を最後に陽性症例は確認されておらず、同国の600万頭を超える飼養豚への感染は最後まで防ぐことに成功したと報告している。

 今回の2年3カ月ぶりの清浄化に、同国業界関係者らは輸出再開への期待を強める。業界団体の一つであるフランダース農産物販売協会(VLAM)は、ベルギーは欧州における主要な豚肉生産国の一つであり、豚肉製品の3分の2以上を輸出していることから、今回の発表は輸出事業者にとって歓迎すべきものであるとした。ベルギーは年間103万8920トン(2019年。枝肉重量ベース)の豚肉を生産し、72万8072トン(同年。製品重量ベース)の豚肉をEU域内外に輸出している。
 アフリカ豚熱初発以降、多くのEU域外の国がベルギー産豚肉の輸入一時停止措置をとった。すでにシンガポール、フィリピンなどの一部の国では、今回の発表より前に条件付きで輸入を再開しているが、今回の認定でさらに再開となる貿易相手国は増えることとなる。VLAMによれば、過去数十年にわたり、ベルギーは世界70カ国以上に豚肉を輸出してきたとし、貿易再開に大きな期待を寄せている。

 なお、日本政府は2018年9月14日、同国からの豚、豚肉等の一時輸入停止措置を講じている。また、アフリカ豚熱は豚、いのししの病気であり、人に感染することはない。

(参考1)
・べルギー、1985年以来のASF発生。隣接するドイツ、フランス、オランダなどで警戒高まる【海外情報 平成30年9月18日発】

(参考2)
・野生イノシシのアフリカ豚熱、2州に拡大。豚価は下落後、低迷続く(ドイツ)【海外情報 令和2年11月12発】

(参考3)
・ベルギーの農産物販売協会、ASF(アフリカ豚熱)の対応について発表【海外情報 令和元年7月25日発】
【調査情報部 令和3年1月14日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527