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酪農マージン保障プログラムの補完的措置と飼料費算出方法の改善を発表(米国)

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 米国農務省農場サービス局(USDA/FSA)は12月8日、2022年の酪農マージン保障プログラム(DMC:Dairy Margin Coverage)の登録受付の開始とともに、新たな補完的措置と飼料費算出方法の改善を発表した。

酪農マージン保障プログラム(DMC)

 DMCは、全国平均乳価から飼料費を差し引いた額を酪農マージンとし、その額が酪農家各自で選択した保障水準(100ポンド(約45キログラム)当たりのマージン)を下回った場合に、その一部を補てんするプログラムである(注)
 酪農家はDMCに加入するに当たり、保障率と保障水準を選択する。保障率は5%〜95%の間で5%刻みにより選択可能であり、過去3年間のうち最大年間生乳出荷量を「生産履歴」として、「生産履歴」に保障率を乗じた数量が補てん対象数量になる。また、保障水準は100ポンド当たり4.00米ドル〜9.50米ドルの間で0.50米ドル刻みにより選択可能である。そして、これらの選択により掛け金が決定される。補てんの発動基準となる酪農マージンは、全国平均乳価、トウモロコシ全国平均価格、アルファルファ全国平均価格、大豆粕イリノイ州中部価格から1カ月ごとに算出され、各酪農家が選択した保障水準を下回った場合に差額の一部が補てん金として支払われる(図1、2)。

(注)「新農業法でMPPが変更される(米国)」を参照されたい。
 
表1
図1

DMC補完的措置

 多くの酪農家が過去に保障対象数量を選択した際に2011年〜2013年頃の「生産履歴」を用いているが、現在は乳用牛の増頭や1頭当たり乳量の増加への取り組みによって生乳出荷量が増加している。USDA/FSAはこれらを踏まえ、2019年の生乳出荷量を用いて、保障対象数量の不足分を「補完生産履歴」として登録可能とする措置を講じることとした。具体的には、2019年の生乳出荷量から登録されている「生産履歴」を差し引いた量の75%を「補完生産履歴」とする。USDA/FSAによると、本措置は2021年分にさかのぼって措置される。なお、対象となるのは、既にDMCに登録している酪農家であり、保障率と保障水準の変更はできない。
 

飼料費算出方法の改善

 USDA/FSAは、酪農家がより高品質なアルファルファを給与している実態をDMCに反映させるために飼料費の算出方法を改善することとした。50%混合アルファルファの価格を用いて算出していたアルファルファ全国平均価格を見直し、100%純度のアルファルファの価格を用いて算出することとした。

業界の反応

 全米生乳生産者連盟(NMPF)は同8日、これらの措置を受け、USDAと議会への謝意を表明した。NMPFのマルハーンCEOは、「2021年はDMCが酪農家のリスク回避のために非常に効果的であることが分かる年であった。中小規模の酪農家には費用対効果の高いセーフティネット、大規模の酪農家には手頃な災害保障となるDMCに2022年も加入してほしい。我々業界の提言を受けてDMCを改善した議会とUSDAに感謝したい」と述べた。
表2
【国際調査グループ 令和3年12月21日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9805