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米政府、西海岸の余力港湾の活用と輸出入のバランス回復を要請(米国)

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 米国運輸省(USDOT)および農務省(USDA)は2021年12月16日、米国西海岸の港を利用する主要な海上輸送企業に対して、両省長官名の書簡を発出し、新型コロナ感染症(COVID−19)の拡大によって生じたサプライチェーンの混乱を解消するよう要請した。

USDOTおよびUSDAによる要請内容

(1)余力のある港湾の活用

 COVID−19によって、世界中の物流に前例のない混乱が生じたことを踏まえ、政府と産業界は、あらゆる手段を講じて既存のインフラを最大限に活用すると同時に、将来も見据えてサプライチェーンの回復力を高める必要がある。そして、既存のインフラを最大限に活用するためには、混雑しているロサンゼルス港やロングビーチ港ではなく、余力のあるオークランド港、ポートランド港などの他の港湾を活用すべきである。特に、外国籍のアジア向け輸送船によるオークランド港の抜港が相次いだことで、輸出業者は米国産農畜産物を混雑しているロサンゼルス港やロングビーチ港までトラック輸送して輸出せざるを得なかった。しかし、オークランド港への寄港を再開することで、ロサンゼルス港やロングビーチ港の混雑が緩和され、長距離トラック輸送の負担も軽減され、米国産農畜産物の迅速な輸出も可能になるだろう。

(2)輸出入の相互バランスの回復

 貿易本来の輸出入の相互バランスの回復も重要であるが、多数のコンテナが空の状態でアジア地域に返送されている。これによるコンテナ不足が米国産農畜産物の輸出を妨げ、港湾混雑の原因にもなっている。さらに輸出業者には、コンテナ利用に係る手数料の発生など不当な対応が求められてきた。このような不均衡は持続可能ではなく、利用可能な多数の空コンテナがあるにも関わらず、米国輸出業者のコンテナ利用の拒否などが行われることは受け入れ難いものである。これらが早急に解決されなければ、米国連邦海事委員会(FMC)によるさらなる調査と措置が必要になるだろう。
 特に、(2)については、FMCの権限強化などを盛り込んだ米改正海運法案が2021年12月8日に米国下院を通過したこと(注)を背景として、海上輸送企業に通達したものと推察される。

注:米改正海運法案については、海外情報「海上輸送の管理等強化を目的とした米改正海運法案が下院を通過(米国)」を参照されたい。
 

外国籍船舶によるオークランド港の抜港と寄港再開の流れ

 2021年に入り、複数の外国籍船舶がロサンゼルス港およびロングビーチ港の港湾混雑を回避するため、オークランド港での船積みを決定した。しかし、労働力不足などの問題によって同港でも混雑が生じているとし、2021年6月以降、ドイツを拠点とするHapag−Lloyd社、フランスを拠点とするCMA CGM社、イスラエルを拠点とするZim社などが相次いで抜港を決定した。  一方で、オークランド港は同年10月、海上輸送企業に対して、同年8月以降、船舶の滞留は発生しておらず、港湾のコンテナ取扱量に余裕があるとして、米国西海岸のサプライチェーン停滞の緩和に向けて、同港に寄港するよう呼びかけた。同港の同年12月15日の発表によると、海上輸送企業が11月に入り、徐々に同港への寄港を再開したことにより、11月のコンテナ輸入量は前年同月比で約6.5%増加、2021年1月から11月までのコンテナ輸入量は前年同期比で約8.0%増加した(図)。
図
【調査情報部 令和4年1月7日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9805