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2022年農業政策の方針〜AFBF年次会合から〜(米国)

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 全米最大の農業生産者団体であるアメリカン・ファーム・ビューロー・フェデレーション(AFBF)は、2022年1月7日から12日にかけてジョージア州アトランタで第103回年次会合を開催した。
 この会合では例年、現職の大統領または農務長官が登壇し、その年の農業政策の方針などについて演説する。今年は、1月10日にバイデン大統領のビデオメッセージの上映およびヴィルサック農務長官の演説が行われた。
 バイデン大統領はビデオメッセージを通じ、AFBFの会員である生産者に対して日頃の感謝の気持ちを伝えるとともに、生産者はこの国の根幹を担っていると述べ、農業の重要性の認識を示した。また、政権は、生産者が農作物を生産して販売するための公平な競争の場を確保することに尽力していると述べ、ホワイトハウスにはあなた方の仲間がいることを忘れないでほしいと強調した。
 その後に行われたヴィルサック農務長官による演説の主な内容は以下の通りである。

貿易に関する取り組み

 農務長官が最初に取り上げた議題は貿易分野であり、現政権の最優先事項の一つは、20年2月に発効し21年末で期限切れとなった米中経済貿易協定第1段階合意(フェーズ1)を含む既存の貿易協定の合意内容を相手国に履行させることだと強調した。また、中国はフェーズ1で合意した米国からの購入目標額を約160億米ドル(1兆8560億円:1米ドル=116円(注1))下回っており、今後数年間で未達分を補うため、合意内容を完全に履行する必要性についてタイ米国通商代表部(USTR)代表が中国と対話を続けていると話した。さらに、購入目標額以外でも、衛生植物検疫(SPS)措置やその他貿易障壁に関する事項についても完全に履行するよう、中国に働きかけていくとした。
 続けて、同長官は、中国以外の国々に対しても市場アクセスの拡大を模索し続けるとしている。インドの米国産豚肉の輸入解禁や、ベトナムのトウモロコシ、小麦、冷凍豚肉の実行最恵国(MFN)税率の引き下げは、こうした米国政府の取り組みの一例であるとし、アジア市場においては中国に集中せずに多様化していくとも述べている。
 米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)については、メキシコが米国産生鮮ばれいしょの輸入を再開する予定としており、これは15年間に渡る米国政府の取り組みの成果と強調した。また、その他の成果として、米国の乳製品に対するカナダの輸入関税割当の運用に係る紛争では、カナダの運用が協定違反と裁定され、米国が勝利したことも挙げている(注2)。同長官は、こうしたUSMCAの履行にも引き続き注力していくとしている。

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2021年12月末TTS相場。

(注2)詳細は、「USMCA紛争解決パネル、カナダの乳製品輸入に係る関税割当の運用を協定違反と裁定(米国、カナダ)|(令和4年1月12日発)」を参照されたい。

気候変動と自然保護に関する取り組み

 農務長官は、土壌や水資源の持続可能性に関する取り組みの拡大を発表し、カバークロップ(被覆作物)(注3)のさらなる利用拡大にも言及した。また、同長官は、資金投入を通じて、生産者が一丸となって気候変動に配慮した手法を確立し、現場で納得のいく方法で気候変動に配慮した農産物の生産を促進すると述べた。これは、気候変動に配慮した農産物を求める消費者の要望に応えることで生産者が新たに収益を生み出すことを目指すとしている。こうした取り組みは、自発的な動機(インセンティブ)に基づいたものであるべきとし、規制することはできないと強調した。続けて、米国農務省(USDA)による炭素市場(カーボンマーケット)の設立を否定し、政府ではなく民間企業が開設・運営すべきとした。USDAの役割は、あくまでもプロジェクトを支援し、生産者が気候変動に配慮した方法を採用できるよう資金(リソース)を提供することだと述べている。

(注3)土壌侵食の防止や土壌中への有機物の供給などを目的として、主作物の休閑期などに栽培される作物。ライ麦、冬小麦など。

サプライチェーンと災害支援に関する取り組み

 農務長官は、コロナ禍で長期化するサプライチェーン(供給網)の混乱の原因として、ステイホームによるEコマース需要の拡大、天災、労働力不足などを挙げ、バイデン政権は、主要な港湾の稼働時間を拡大するなど、政権がコントロール可能な対策を講じたと言及した。また、多くのコンテナが空の状態でアジア方面へ返送されている問題について、今後数週間のうちに、輸出市場に農産物を送るために5億米ドル(580億円)規模の新たな対策を発表するとした。
 同長官は、災害支援については、既存のプログラム(作物保険、家畜保障プログラムなど)を活用して、損害を被った生産者の申請プロセスを簡素化することを約束すると述べた。
 食肉市場の改革は政権の大きな関心事であるが、同長官は、中小規模の食肉加工業者の事業拡大を支援していくと強調した。また、パッカー・ストックヤード法(注4)を強化し、どのような状況が違反となるのかを明確化した規則を今後制定するとし、加えて、肉牛生産者が適正な価格で取引していると確信できるような法案を超党派の議員と協力して作成すると述べた。

(注4)家畜取引や価格形成について、大手食肉企業による不公正な行為から生産者を守り、公正で競争性の高い市場を確保するために1921年に制定された法律。
【河村 侑紀 令和4年1月27日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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