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欧州委員会、食料供給の安定などの実現に向けた政策文書を発表(EU)

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 欧州委員会は3月23日、食料供給を安定させ、エネルギーや肥料など投入資材のコスト高に苦しむEUの農家の支援プログラムを含む、「食料供給の安定・食料システム強靭化」の実現に向けた政策文書を発表した。
 同文書は(1)ウクライナおよび世界の食料供給を安定させるための対策(食料援助などの人道的支援)、(2)EUの食料システムを安定させるための生産者への支援と価格高騰対策、(3)欧州の食料システムを持続可能で強靭なシステムへ転換させるための対策、の3つで構成されている。その概要は以下の通りである。
 また同委員会は、(2)に付随して農業部門に対し、危機管理準備金(注1)を使用して5億ユーロ(691億円、1ユーロ:138.20円(注2))の支援措置を講じるとした(注3)。
(注1)市場の混乱、動植物の疾病、その他予期しない問題が発生し、農業生産や流通に重大な影響を及ぼす事態に対応するために積み立てられた資金。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「3月末・月中平均の為替相場」の3月末TTS相場。
(注3)加盟国は、この資金を原資に総額15億ユーロ(2073億円)を限度に上積みが可能

1.EUの食料システムを安定させるための生産者への支援と、価格高騰対策(短期的な措置)

・豚肉の民間在庫補助の発動(注4)
(注4)「欧州委員会、豚肉の民間在庫補助を実施すると発表(EU)」を参照
・輸入飼料の要件の緩和
・農業および肥料部門の国家補助規律の緩和(個別生産者に対して最大50000ユーロ(69万1000円)の補助金を交付)
・共通農業政策(CAP)の直接支払いと農村開発援助の早期支払いの実施
・2022年に限り、CAPのグリーニング支払いの条件である休耕地での食料および飼料用の作物生産を許可(休耕を受給要件とする農業従事者のグリーニング支払いに関し、栽培を実施しても受給対象とする)
・加盟国ごとのバイオ燃料混合比率の引き下げを容認
・直接または間接的な影響を受けた生産者などの事業者に対し、資金繰りや光熱費の上昇分を支援する一時的危機対応措置を採択(同措置は対象者に対する補助金の直接交付を含む)
 また、この文書の中で、食品価格高騰に対処するために、加盟国が国内の食料供給を担保するための輸出規制に強く反対する一方、食品などに対する付加価値税を軽減またはゼロにすることが認められている。

2.欧州の食料システムを持続可能で強靭なシステムへ転換させるための対策(中長期的な措置)

 短期的な緊急支援は必要であるものの、長期的には、食料システムを持続可能で強靭なシステムにすることが求められ、Farm to Fork(農場から食卓まで)戦略と生物多様性戦略で定められた、持続可能なシステムへの移行目標を維持することが重要とされている。
 特に化石燃料や肥料といった生産資材を少数の国に依存している現状を解消するため、例えば窒素肥料原料の天然ガスからグリーンアンモニア(注5)への移行、バイオマス資源の利用促進、家畜排泄物からの肥料分の回収などに向けた研究への投資を推進するとしている。
(注5)再生可能エネルギーを利用し、製造プロセスでの二酸化炭素発生を抑えて製造されたアンモニア

3.関係者による反応

 EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca)は3月23日、同日付のプレスリリースを通じ、休耕地の耕作が認められたこと、輸入飼料に対する規制が一時的に緩和されたことを歓迎しつつも、肥料価格高騰に対する緊急措置が含まれなかったことに不満を表した。
 また、同団体およびバイオ燃料の関連団体を含む7団体は3月30日、共同声明を発表し、バイオ燃料の混合比率の引き下げを認めたことに対し、域内で生産される再生可能燃料を促進するとする欧州委員会の従来の方針に矛盾していると指摘した。このため、欧州委員会に対して引き下げ措置を取らないよう加盟国への働きかけを求めている。
【調査情報部 令和4年4月12日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527