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米酪農団体、カナダへの報復関税を要求(米国、カナダ)

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 全米生乳生産者連盟(NMPF)および米国乳製品輸出協会 (USDEC)は5月16日、カナダが同日に最終決定した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の乳製品の関税割当案が不十分なものであるとして、米国政府に対し報復関税を課すことを要求した。

背景および経緯

 昨年12月、米国とカナダの間で設置されていたUSMCA紛争解決パネルは、カナダの乳製品輸入に係る関税割当の一定割合をカナダ国内の加工業者向けに確保していることはUSMCAの条項に違反しているという米国側の主張を認め、カナダ政府に対し是正を求めていた(注)。これを受けてカナダ政府は、新たな関税割当案を3月に示し、パブリック・コメント期間を経て今般最終決定とした。
 この決定では、加工業者のみならず流通業者も、牛乳、チーズ、クリームなど14の製品カテゴリーで関税割当への申請が可能としている。しかし、実際は市場占有率に基づき割当数量が決定されることから、結果として引き続き大手加工業者の割当数量が多くなる側面があるため、米国側は当初の関税割当制度と大きな変更がないと不満を示していた。
 
(注)詳細は「USMCA紛争解決パネル、カナダの乳製品輸入に係る関税割当の運用を協定違反と裁定(米国、カナダ)」を参照されたい。

米国政府の対応

 米国通商代表部(USTR)および米国農務省(USDA)は、共に今回のカナダの決定に失望を表明し、USTRのタイ代表は「我々はあらゆる選択肢を検討し、今後数日間で次のステップを決定する」とコメントを述べた。一方、現地報道によると、ヴィルサック農務長官(前USDEC会長)は、カナダの再考を期待する旨を述べたが、すぐに報復関税を課す予定がないことを示唆したものと報じている。

NZからも紛争解決の申し立て

 カナダは、ニュージーランド(NZ)からも環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)下での乳製品輸入規則を遵守していないとして、5月12日に紛争解決のための協議要請書を提出された。NZは、カナダがCPTPPで示した関税割当の多くを消化していないことを問題視している。
 米国の報道によると、USMCAのみならずCPTPPでも提訴されたことについて、カナダの乳製品貿易の苦境が深刻化したとしている。
【上村 照子 令和4年5月26日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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