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ウクライナ産農畜産物の輸出動向〜黒海穀物イニシアティブの延長〜

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黒海穀物イニシアティブ、60日間の延長を公表

 国連のグテーレス事務総長は2023年5月17日、ロシアが黒海穀物イニシアティブ(注1)の60日間の延長(注2)を受け入れたことを公表した。同事務総長はこの延長を歓迎するとし、ロシア、ウクライナ、トルコに対して同イニシアティブの改善、拡大および延長のための包括的合意を提案していると述べた。また、同イニシアティブと並行して締結されたロシアの食料および肥料の輸出に関する国連とロシアの覚書の重要性を強調し、ウクライナおよびロシアの農畜産物が世界の食料安全保障において重要であることを繰り返した。
 同事務総長は、今後もロシアとウクライナの肥料および食料が、世界に安全に供給されるよう全面的な支援を約束するとした。
 
(注1)22年7月22日、ウクライナとロシアは国連とトルコの仲介の下、ウクライナのオデーサ港(近港のチョルノモルスク港とイズニー港を含む)からの穀物と肥料の安全な輸出航路の確保に関する「黒海穀物イニシアティブ」に署名し、これに基づき輸出を共同で進める共同調整センターを設置。
(注2)同イニシアティブのこれまでの延長については、海外情報「ウクライナ産穀物の動向〜黒海穀物イニシアティブの延長〜(ウクライナ)」を参照されたい。

ロシア、60日間の延長を確認するも運用の修正に言及

 現地報道によると、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、黒海穀物イニシアティブの延長が60日間であることを確認し、同イニシアティブにより世界の食料安全保障の確保に貢献できると述べた。また、同イニシアティブの第一の目的は最も困窮している国々への食料輸出であることを強調したうえで、食料危機に該当しない地域への輸出が主体となっている運用は、可能な限り迅速に修正される必要があると述べた。

ウクライナ産農畜産物の輸出状況

 2022年のウクライナの農畜産物輸出量は表1から表3のとおり、黒海穀物イニシアティブおよび連帯レーン(注3)の下で輸出された。トウモロコシ、バター等、脱脂粉乳およびチーズの輸出量は、ポーランドなど、連帯レーンによる隣国向けが急増したことにより、それぞれ前年比2%増、同43%増、同63%増および同30%増と増加した。しかしながら、小麦、大麦、食肉および全粉乳の輸出量は、前年を大幅に下回った。
 
(注3)連帯レーンについては、海外情報「欧州委員会、ウクライナ産農産物の輸出支援策を発表(EU)」を参照されたい。
表1 ウクライナの穀物輸出量
表2 ウクライナの食肉輸出量
表3 ウクライナの乳製品輸出量
【渡辺 淳一 令和5年5月19日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527