2025年1月20日に発足した第二次トランプ政権では、米国の産業保護などを目的として多くの貿易政策が講じられてきた。3月にはカナダ、メキシコ、中国に対して追加関税を課す大統領令が発効され
(注2)、4月2日には、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく国家緊急事態が宣言された上で、日本を含む世界各国・地域に対する新たな相互関税措置が発令された。
これまでの関税率の経緯および今般発表された内容については、下記(1)〜(3)の通りとなっている。なお、9月4日に発令された大統領令の中では、日米間の合意内容の履行状況を見ながら対応を変えることも記載されており、今後、状況が変化する可能性がある。
(注2)3月に講じられたカナダ、メキシコ、中国に対する追加関税措置については「【海外情報】米国食肉業界、関税措置による食肉輸出への影響を懸念(米国)(令和7年3月25日発)」をご参照ください。
(1)世界各国・地域に対する相互関税措置の発表
4月2日の発表では、原則として4月5日以降、すべての輸入品に対して10%をベースラインとする相互関税率を追加で課すこととし、第二段階として4月9日以降は特定の国・地域ごとに別途定める関税率(日本については24%)を相互関税率として、輸入品に対して追加で課すこととされた。
ベースラインの相互関税は予定通り4月5日から発効され、すべての輸入品に対して10%が追加されたものの、第二段階の関税については、4月9日の発効日に、4月10日から7月8日までの90日間一時停止することが発表された。しかし、7月7日、第二段階の相互関税について、さらに8月1日までの延期が発表されるとともに、特定の国・地域ごとに設けられる予定の第二段階の相互関税について、追加で課される税率の変更が公表され、日本については25%に変更された。
(2)日米政府間合意の発表と第二段階の相互関税の適用
7月22日、日米政府間での合意が発表され、日本に対する相互関税については、最恵国(MFN)税率が15%未満の物品は15%まで関税率を上昇させ、MFN税率が15%以上の物品については関税率の追加を行わないこととなった。一方、7月31日に発令された新たな大統領令においては、世界各国・地域に対する第二段階の相互関税の施行について、8月7日までの延期が示された上で新たな相互関税率が発表され、日本に対しては一律に15%を関税率として追加するという内容となっていた。
(3)日米政府間合意を反映するための大統領令の発令
9月4日に発令された大統領令については、7月22日の日米間の合意を反映するものであり、その大統領令を踏まえた新たな関税措置が9月16日に発効された。関税率については8月7日までさかのぼって適応され、超過して徴収された関税については、還付されることとなっている。なお、還付手続きについて、米国税関・国境警備局(CBP)は、関税が支払われる前の申請を求めており、可能な限り通関後10日以内の申請を推奨しているが、関税を支払った後でも、事後修正や異議申立(関税生産から180日以内に輸入者、代理人又は弁護人が行うことができる)のプロセスにより還付請求ができる。
なお、例として日本産牛肉の関税率の状況について、公表情報などを基に下記の通り整理した(図1)。