一部で表面化している、品種が多過ぎる一方で突破力のある品種は少ない問題、あるいは、育種の成果は多いのにその応用は進まないなどの問題に対応すべく、優良農作物品種について産業チェーン全体での管理を一歩進めることとし、今後の3カ年で優良な品種の普及を進めることとした。特に登記品種
(注5)の動態管理を強化し、市場に出回る偽物品種は元より、普及する価値のない品種も駆逐していく。具体的には主に次の措置を行う。
ア 品種の追跡評価を深化する。対象品種について現場での産量向上活動や普及の成果がどうであったかを評価する。
イ 偽物のクリーンアップを継続的に行う。近年種苗業界では「偽種子」
(注6)が注目されている。「偽種子」(の利用)とは、ある登録品種またはその親品種について、市場で販売するときの商品外形に簡単な加工を行ったものや交配など簡易な育種手段により得られた品種、さらには登録品種であると偽って他の品種を売ったり、登録品種をそのまま盗用し、販売したりといったことを指し、種苗市場の秩序化を著しく阻害するものである。農業農村部は2021年以降、「偽種子」クリーンアップの仕組みを構築し、品種のDNA鑑定技術なども利用して、既にひまわり、きゅうり、すいかについてのクリーンアップを終えてきた。今後この取り組みを他の種にも拡大し、登記品種の真正性の監督を強化し、植物新品種権を侵害する行為を厳しく取り締まっていく。
ウ 登記品種の駆逐を加速する。審定されてから数年が経っているにも関わらず栽培面積が増えていない品種など、生産を推進するのに適さなくなった品種を市場から退場させる。また、対象となった品種については遺伝資源バンク(
圃場)などにおいて長期的に保存し、欠点がある、生産リスクがあるといったような品種や権利侵害の疑いがある品種などが登記されることのないようにし、あわせて登記品種の抹消を進めることによって、品種登記制度について「新規登録と登録の抹消」が常に行われる状態を目指す。
(注5)中国には、主要農作物(水稲、小麦、トウモロコシ、綿花および大豆)については審定を受けたものしか市場に流通できないとする「審定登記制度」が、また、非主要農作物の中でも主要なもの(非主要農作物登記目録に収録されたばれいしょ、かんしょ、そらまめ、ひまわり、トマト、りんご、ぶどうなど29種)についてはその市場流通名称などを届け出させる「登記制度」がある。
(注6)「偽種子」対策の概要とひまわりの例については海外情報『中国農業農村部、不適切な農作物の種苗登記を抹消(中国)』(令和6年5月28日発)をご参照ください。