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牛肉を含む特定の農産物などに対する相互関税およびブラジル向け追加関税を撤廃(米国)

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 トランプ大統領は2025年11月14日、同年4月以降導入した世界各国・地域に対する相互関税について、牛肉を含む特定の農産物などを対象外とする大統領令を発令した。さらに11月20日には、ブラジルに対して8月6日以降講じていた40%の追加関税についても、同様の品目を対象外とする大統領令を発令した。いずれの大統領令も、米国東部時刻11月13日午前0時1分から発効された。

1.これまでの経緯と今般の大統領令の概要

 米国は2025年4月以降、国家緊急事態の宣言に基づき、輸入品に対して世界各国のさまざまな品目に相互関税および追加関税を導入してきた(注1)。一方で、このような関税は米国における商品価格の高騰や、製造業などにおけるコスト増にもつながることから、米国では自給・生産できない品目を別途指定し、相互関税が課せられる範囲から除外してきた。これまでは天然鉱物や医薬品原料などが指定されていたが、今般、25年11月13日米国東部時刻午前0時1分以降に消費目的で輸入される特定の農産物などが、世界各国・地域に対して課されている相互関税の対象から除外されることとなった。主な農畜産物をHSコード別に分類すると、下記の通りとなる。下記以外には、肥料や木材なども対象外となった(注2)
 
- 2類:牛肉(冷蔵および冷凍)、牛の舌・内臓(冷蔵および冷凍)
- 7類:生鮮トマト、一部のイモ類(さといもなど)、たけのこ、乾燥しいたけ
- 8類:オレンジ、ライム
- 9類:茶・コーヒー、香辛料
- 16類:牛肉加工品
- 20類:調製たけのこ、一部の味噌・豆製品・ナッツや果実・植物の調整品、オレンジ果汁
- 21類:茶・コーヒー抽出物
- 22類:清涼飲料水のオレンジジュース
 
(注1)詳細は海外情報「米国の追加関税措置について、日米合意を踏まえた大統領令を発令(米国)(令和7年9月19日発)」をご参照下さい。
(注2)HSコードと対象品目については、米国ホワイトハウスのファクトシートおよび農林水産省公表資料などをご参照ください。また、商品ごとの実際のHSコードは商品の形態などに応じて米国の税関で判断されますので、輸出を行う際には事前に米国の税関当局にご確認ください。

 
 本大統領令は、当初世界各国・地域に対して講じられた相互関税のみを除外する措置であり、例えば豪州は10%、NZは15%、アルゼンチンは10%がそれぞれ除外される。
一方、ブラジルについては相互関税10%に加え、追加関税として40%が課され、合計50%の関税率が適用されていたところ、25年11月20日の米大統領令により、牛肉を含む特定の農産物などに対して追加関税の対象外とする措置がとられた。対象品目はほぼ上述の品目と同様であり、2類の牛肉、牛の舌・内臓および16類の牛肉加工品については、対象となるHSコードは全て一致している。なお、同年8月のブラジルからの米国への牛肉輸入量は、枝肉重量ベースで2万599トンとなっており、前年同月比37.7%減と大幅に減少していた。

2.日本産を含めた米国の牛肉輸入への影響

2025年、米国では牛肉生産量の減少により、輸入量が前年を大きく上回っている。25年1〜8月の米国の牛肉輸入量は、枝肉重量ベースで173万353トン(前年同期比25.8%増)と大幅に増加した。今回の関税除外措置により、年末年始にかけての牛肉の輸入量はさらに増加すると見込まれる。
 米国には、国・地域ごとに牛肉の低関税数量枠(TRQ)が設定されている。日本が所属する「その他」の国・地域カテゴリーに対するTRQ内6万5005トンの最恵国税率(MFN)は、4.4米セント/キログラム(6.9円/キログラム:1ドルあたり157.63円で算出(注3))の従量税であり、TRQを超えると26.4%の従価税による関税率のみが課される。日本に対する相互関税は、MFNが15%未満の物品については15%まで引き上げられ、15%以上の物品についてはMFNのままとすることとなっていたが、今般の大統領令により、26年のTRQ内の関税率は15%から4.4米セント/キログラムとなり、TRQ外の関税率は26.4%で変更なしとなる(図)。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年11月末TTS相場。
 
図 米国における日本産牛肉関税率(合計)の推移
「その他」の国・地域カテゴリーのTRQを日本と共有しているブラジルは、今回の大統領令によって相互関税(10%)および追加関税(40%)の双方の対象から牛肉が除外されることとなった。このため、年明けの低関税枠は、25年1月同様(注4)の期間もしくはさらに短期間で全量消化される可能性がある。
(注4)25年1月の「その他」の国・地域カテゴリーのTRQは、1月17日に全量消化され、その大部分はブラジル産牛肉で占められていた。
【調査情報部 令和7年12月11日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9533