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中国の新たなセーフガード措置に対する中国国内の反応(中国)

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 中国商務部は2025年12月31日、牛肉輸入量の増加が国内産業に損害を与えているとの判断に基づき、セーフガード措置の実施を26年1月1日から適用すると発表した(注1)。この決定に対する中国国内の反応について、中国農業農村部のほか主要な業界団体である中国畜牧業協会や中国肉類協会は26年1月15日時点で公式見解を発表していない(注2)
 このような中、セーフガード措置の実施について中国政府系メディアである新華社は1月5日、「わが国が輸入牛肉に対して実施する保障措置にはどのようなメッセージが込められているか」と表し、農業農村部畜牧獣医局関係者のコメントなどを紹介する記事を公表した。記事は3つのメッセージに分けられており、それぞれの主な内容を以下に紹介する。

 (注1)セーフガード措置の内容および豪州の反応については海外情報「中国の新たなセーフガード措置に対する豪州の反応(豪州)」(令和8年1月6日発)をご参照ください。なお、ある中国メディアは、措置の対象となった国や地域のうち2025年実績より輸入割当量が少ないのはブラジルと豪州の2か国であること、ブラジルの牛肉輸出のうち52%は中国向けで、26年に失われる貿易額は30億ドル以上に及ぶ可能性があるとするブラジル関係業界の声を報じた。
 (注2)セーフガード措置を実施するために調査を開始した時点での中国食肉業界の反応については海外情報「中国商務部、輸入牛肉に対するセーフガード措置実施の調査を開始(中国)」(令和7年1月28日発)をご参照ください。

メッセージ1「国際貿易の『安全弁』を起動させて国内産業の困難な状況を緩和する」

 このメッセージは、今回のセーフガード措置は中国食肉産業にとって必要なものであるということを表していると考えられる。記事では次の現場の声を紹介している。

(1)「牛肉は最近1キログラム当たり60元台(1360円、1中国元=22.66円(注3))である。最も低かった頃より少しは高くなったものの、以前は80元(1813円)、100元(2266円)で売れていたことを考えるとまだまだ安過ぎる」(北京市民が日頃買い物をする市場である農貿市場で食肉を販売している事業者)。なお、記事によると、中国政府が価格動向を定点的に観測する36の大都市、中都市では、2022年11月初旬から25年3月中旬まで牛肉の小売価格が下落し続け、25年3月19日に36.82元(834円)と直近の6年間で最低の価格を更新した。

(2)「牛が高く売れない。売ってもエサ代をねん出するのがやっとであり、飼育頭数を減らしていくしかない。当社では最も多いときには7000頭以上の母牛を飼育していたが、今では数百頭の規模にまで減少した」(内モンゴル自治区赤峰市の畜産企業幹部)

(3)「輸入牛肉は、最初は需給バランスの調整機能を果たしたが、近年輸入量が増加するに伴い、国内の供給を圧迫するようになり、国産牛肉の価格を暴落させ、関連産業を大幅な赤字に陥らせてしまった。赤字で大量の母牛がと畜されたことによって牛肉の供給能力が低下し、安定的な産業の発展が脅かされる悪循環に陥ってしまっている」(中国畜牧業協会秘書長)。なお、記事によると、輸入牛肉は価格が国産の半分以下であり、輸入量は19年の166万トンから24年には287万トンと73.2%も増加し、国内市場に占める割合も20%から31%に拡大した。

 (注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2025年12月末日TTS相場を使用した。

メッセージ2「措置の内容は各方面の利益のバランスを取った、慎重なもの」

 このメッセージは、中国政府の今回のセーフガード措置に対する評価を代弁するものと考えられる。記事では、措置の実施を公表した商務部のほか、措置決定前の調査に協力したウルグアイ肉類協会などの次の声を紹介している。なお、2001年に世界貿易機関(WTO)に加入して以降、中国がセーフガード措置に関する調査を行い、実際に措置を発動したのは鉄鋼製品および食用砂糖に限られるという。

(1)「今回の措置の趣旨は、国内産業が段階的に困難を乗り越えることを助けることにあり、正常な牛肉貿易を妨げるためのものではない。中国の市場は常に開放的で、われわれと貿易パートナーとの間の牛肉貿易は大きな協力の余地がある」(商務部報道担当官)

(2)「今回の措置は、中国国内の産業の安全を確保するために必要なものである。中国が行ったセーフガード措置を実施する前の調査はWTO規則に完全に則ったものであり、調査の実施も透明な手続きによって公開で行われ、ウルグアイをはじめとして各国が提出した意見が十分に尊重された。今回の措置が両国の協力関係に影響を及ぼすことはない」(ウルグアイ肉類協会主席)

(3)「今回の措置は、直近3カ年の平均輸入量に照らして輸入割当総量を定め、各輸入先国が占めていた比重に応じて国別の輸入割当量を定めた上で、それを超えた分についてのみ追加で課税するものである。このような設定の仕方に加えて、措置期間を3年間に限定していることは、政府の輸入製品に対するセーフガード措置の発動が極めて慎重に行われていることを表している」(中国政法大学WTO法律研究センター専門家)

メッセージ3「国内産業のレベルアップを推進し、国内外の良好な相互連携を促す」

 このメッセージは、畜産業の振興に関係する中国政府関係部署の反応を表すものと考えられる。記事は「今回の措置は現時点では妥当な措置であるが長期にわたって実施するようなものではない」として、次の3部署の施策方針や関係者の声を紹介している。

(1)「食糧などの重要農畜産品の価格を合理的なレベルに維持し、農民の収入を安定的に向上させ、脱貧困を果たした成果を堅持する」(2026年の農業政策の方針を決める中央農村工作会議(議長は習近平国家主席、25年12月29日、30日に開催された)で示された方針)

(2)「農業農村部は、今回の措置によって輸入の程度が適切に制御され、国内産業が直面する困難が解決していくこと、国内産業が回復し、発展し、レベルアップするために必要な時間が確保されることを支持する。部としては引き続き国内産業の困難を解消するための各種施策(注4)を推進するともに、引き続き関係国との経済交流・協力を力強く行っていく」(農業農村部畜牧獣医局関係者)

(3)「今後は肉牛飼育のコストカットと品質向上を一層推し進め、状況に最も適したデジタル技術を導入し、適切な経営規模で飼育し、供給能力と市場競争力とを着実に高めることにより、国産牛肉と輸入牛肉とが供給を補い合えるような良好な相互連携を実現することが求められる」(国家発展改革委員会価格監測センター農産品価格監測室室長)

 (注4)中国農業農村部が実施してきた飼育農家への支援施策については、海外情報「中国農業農村部、肉牛乳牛生産の安定化に関する通知を公表(中国)」(令和6年11月8日発)をご参照ください。
【調査情報部 令和8年1月20日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532