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中国の畜産メディア、一号文件に着目してこの5カ年を振り返る(中国)

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 2025年、中国の家畜・家きん肉生産は1億72万トンと統計上、初めて1億トンの大台を記録した。内訳をみると、豚肉が5938万トン、牛肉が801万トン、羊肉が496万トン、家きん肉が2837万トンとなっている。こうした中、中国農業農村部が管理する広報媒体は2月11日、豚肉と家きん肉(注1)の生産量の増加理由と、食肉生産を支える家畜衛生・防衛の現状を紹介する記事を掲載した。その主な内容を以下に紹介する。

  (注1)主に鶏、アヒルおよびガチョウを指す。

豚肉が安定的に増産した理由

 25年、豚肉の生産量は5938万トンで、例年通り食肉の約6割を占めた。近年の豚肉の安定的な増産を支えたのは、技術革新、品種改良そして管理のシステム化である。

養豚産業の効率化と制御性の向上をもたらした技術革新

 養豚業は、初期の「海外技術の導入」から既に「自主刷新」に移行し、機械に代わってデジタル駆動型技術が普及している。中国の畜産業でデジタルを利用しないものはない。例えば養豚大手の牧原では、自動巡回ロボットと音声制御システムとが発する疾病発生アラートの正確性が95%を超えている。広西揚翔(注2)は飼育区全域にデジタル給餌と節約システムを張り巡らし、精緻に計算した飼料配合、適切な給餌などを進めており、豚の発育状況に合わせた飼料配合の種類は以前の6段階から12段階にまで細分化され、今後も一層の効率的・効果的な給餌を目指している。

  (注2)養豚企業・揚翔の取り組みについては、『畜産の情報』「中国の養豚をめぐる動向と大規模化を担う「ビル養豚」の現状」(2025年4月号)をご参照ください。
 

「種業振興」(注3)が品種改良の要

 中国の90%以上の豚肉は、世界的に飼育されているデュロック、ランドレースまたは大ヨークシャーの交雑で得られたものに由来する。これらの品種が中国に導入されてから40年あまり、中国は自国に合う種の選抜を進めてきた。政府が国家家畜・家きん遺伝子改良計画を継続的に推進し、優れた品種の選抜に加えてその繁殖体制も整備した結果、種豚市場に出回る豚の国産比率は95%に至った。地域固有種の産業化も進み、豚の地域ブランドの認知が進んだことで、消費市場の多様なニーズも満たされている。

  (注3)中国政府の種業振興に関する取り組みについては、海外情報「中国農業農村部、優良な新品種の普及に向けて取り組みを振り返り(中国)』(令和7年12月9日)をご参照ください。
 

管理のシステム化が進み、産業モデルが現代化

 豚肉価格がここ数年で大きく乱高下したため、業界は発展モデルの大きな見直しを迫られ、経営・生産管理を大きく変えてきた。デジタル技術を利用した管理のシステム化はさることながら、特に成果を上げてきたのは「企業+飼養農家」という産業モデルの進展である。例えば、大手の温氏グループは全国4万3000戸の飼養農家と直接契約しており、それら契約農家の総売り上げは24年に118億元(注4)(約2715億円、1元=23.01円)に上った。中堅の巨星農牧も25年上半期だけで687戸の代理飼養農家に対して合計3億7700万元(約87億円)の飼育費を支払った。同社が目指すのは協力農家の収入増だけでなく、技術と管理水準の引き上げである。これら企業と飼養農家が協力する枠組みの定着は養豚業の持続的な発展に重要な役割を果たしている。

  (注4)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2026年2月末日TTS相場を使用した。
 

家きん肉が増産した理由

 家きん肉の生産は効率性と安定性が高く、食肉供給における「安定器」の役割を果たしている。24年の生産量は2660万トンで、25年には2837万トンと6.7%増産した。家きん産業が継続的に発展した理由は、高度集約型飼養モデルの普及、品種改良、疾病の予防・管理によるところが大きい。例えば、25年のブロイラーの立体飼育は約90%、その飼育時生存率は98%に上り、飼料効率も継続的に向上している。品種改良では、国産種である「聖澤901」などのブロイラー品種の同年の市場占有率が31%に上り、外国品種による市場占有率を上回った。

食肉1億トン生産を支える家畜衛生・防疫

 食肉生産1億トン達成の背後には、産業全体での「事を起こさない」ための取り組みがある。一見軽々しい言い方に感じられるかもしれないが、それを支えているのは膨大かつ複雑な動物防疫・リスク管理システムの構築、実施プロジェクトである。
 中国の家畜衛生・防疫は主に次の3つの課題を抱えている。1)基層政府(地方の最も基本的な政府のことを指す。日本の市町村に相応)の体制と、煩雑で責任ある業務との均衡が取れていないこと、2)飼養主体が極めて高度に分散し、強制ワクチン接種など基礎的な防疫措置を隅々までいきわたらせるためのコストが高いこと、3)一部の生産者の責任感と主体意識が弱いこと−である。
 これらの課題に系統立てて対応してきたのが、「法令」「実施体制」「技術」「保障」という4方向からの家畜衛生・管理の枠組み構築とその運用である。

法制度と責任体制の完備

 法令改正によって、疾病発生状況に関する報告制度、ワクチンの強制接種、区域別清浄化制度などが整備され、家畜衛生・防疫に関する飼養主体の責任と、それを監督管理する地方政府および行政担当部門の責任とが明確にされてきた。これらの取り組みにより、例えばワクチン強制接種の対象となる疾病は抗体合格率が常に90%以上を維持している。

法を執行する組織・ネットワークの強化

 公的な獣医チームの存在を前提に、民間防疫サービスの利用や特任動物防疫専門員制度の創設などが大々的に試行されてきた。例えば、江蘇省(こうそしょう)(りょう)寧省(ねいしょう)などの地方では、省政府が民間サービスを利用する、特任専門員を招へいするなどによって衛生・防疫の専門組織を基層政府に提供し、基層政府の人材不足を補い、防疫ネットワークをより緻密にする取り組みが行われている。

技術・デジタル利用によるコントロール力の向上

 「インターネット+監督管理」モデルが力強く推進され、家畜衛生・防疫に関する各種証明書のノンペーパー化(紙媒体を発行しないこと)を皮切りに、輸送段階の情報管理も強化され、防疫に関する全工程で情報のオンライン化が進められている。重要な情報が全て情報システムの中で生まれ、運用されることで、生産や経営側、基層政府の人員も移動の手間が減り、書類を作成する手間も減少し、利便性が大幅に向上している。現在、衛生・防疫に関する各種申請や合格証明などはオンラインで全て実施、取得することができ、その実施率も99%に達している。オンライン化が進むことで、省内または省をまたぐ家畜・家きんの移動に関する報告の実施率もそれぞれ99%、83%に達し、生産地で、輸送過程で、また目的地でのトレーサビリティ(追跡可能性)とリスク管理が大幅に向上している。

財政面、緊急時対応面での保障の強化

 中央政府と地方政府ともにワクチンの強制接種、強制殺処分、無害化処理施設の整備などへの基礎的な財政手当を継続的に行っている。同時に、重大な疾病案件が発生したときの応急対応策の策定、緊急時に必要となる物資の準備・保管、平時の訓練など、突発的な重大案件が発生した緊急時にも速やかに対応するためのコントロール力の向上が常に図られている。

 これらの取り組みにより、25年、重大な疾病案件は安定的に推移し、高病原性鳥インフルエンザの発生報告が2件、口蹄疫の発生報告が3件など、発生件数は限定的となり、かつ、発生後も速やかに対処され、疾病がまん延する前に適切に制御された。「事が起きない」のは決して偶然などではなく、これらの緻密かつ戦略的に設計され、不断に実施されている取り組みの効果なのである。

 なお、食肉生産量1億トンを達成した背景には、これら家畜衛生・防疫措置のほか、食の安全や環境保全に関する取り組みがあることも忘れてはならない。例えば食の安全では、家畜抗菌薬剤の使用の低減が図られ、低減行動に参加する飼養農家の数は15万戸に上り、全国の抗菌薬剤の使用量は17年に比べて6%減少した。と畜工程を含む食肉加工全工程における品質安全サンプリング調査の合格率も99.4%に達している。また、ふん尿の資源化利用では、全国全体でふん尿総合利用率が80.1%に達した。
 以上のような取り組み全体で国民の「舌の上の安全」が守られている。
【調査情報部 令和8年3月10日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
Tel:03-3583-9532