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豪州とEU、FTAで大筋合意(その1:豪州側の措置と反応)(豪州・EU)

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 豪州連邦政府は2026年3月24日、EUとの自由貿易協定(FTA)について、大筋合意したことを発表した。18年から続いていた本交渉は、豪州産牛肉や羊肉の大幅なアクセス拡大をEU側が拒否したため、23年に一度決裂していたが、米国トランプ政権の通商政策などによる不確実性の高まりを背景に交渉が再開され、今回の妥結に至っている。これにより、EU向けの牛肉や乳製品、砂糖などは新たな関税割当数量枠が設置されるとともに、野菜などは関税が即時撤廃される(表1)。牛肉や羊肉、乳製品は、現行のEU向け輸出実績を大きく上回る水準のアクセスを得る結果となった(表2)。
表1
表2
 豪州のアンソニー・アルバニージー首相は、連邦議会での欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長との共同演説において、今回の合意によりEU向けの製品輸出の約98%が無関税となり、豪州に年間100億豪ドル(1兆1168億円:1豪ドル=111.68円(注1))の経済価値をもたらすとその成果を強調した。また、同委員長からも、EU側の試算によると、この協定により豪州の実質GDPは約78億豪ドル(8711億400万円)増加する見込みであると伝えられた。

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2026年3月末TTS相場。 
(注2)詳細は、海外情報「EU、豪州とFTAで大筋合意、豪州産牛肉や砂糖に対して新たな関税割当を設定(その2:EU側の措置と反応)(EU・豪州)
 」をご参照ください。 

今後の流れと関係団体の反応

 豪州側では、今後合意文書が公表され、署名手続きを2026年末または27年初頭を目途に行い、その後、批准に向けた連邦議会での承認プロセスに約1年を要すると見込まれている。
 政府が本協定の成果を伝える一方で、農業界からは厳しい視線が向けられている。豪州の赤身肉(注3)業界の政策決定機関であるレッドミート諮問委員会(RMAC)は、今回確保された牛肉・羊肉の新たな関税割当枠は、23年に交渉が決裂した際にEU側が提示していた水準と同等であり、他の競合国が獲得している水準から大きく下回っているとし、政府に対する失望を示す声明を公表した。また、主要な業界団体である全国農業者連盟(NFF)は、地理的表示(GI)に基づく名称利用(注4)については一定の成果があったと認めたものの、今回の結果は貿易自由化が豪州農業に利益をもたらすという理念が揺らぐ事態だと警告した。一方、豪州園芸産業の主要な業界団体であるオースベジ(AUSVEG)は、多くの園芸作物の関税が撤廃されたことは大きな成果だとし、特にたまねぎはNZが24年にEUとのFTAを発効して以降、EU市場でのシェアがNZ産に奪われていたことから、豪州の生産者にとって大きな機会になるとコメントしている。このように品目によって反応は異なるが、野菜の業界を除けば、ほとんどが今回の協定を非難している状況にある。
 
(注3)一般的に牛肉、羊肉など赤色(ミオグロビン)を多く含む家畜の肉を指す。ここでは牛肉、羊肉、ヤギ肉のことを指す。
(注4)ある商品が特定の原産地に由来し、特別な品質や評価を持つことを示す名称(「パルメザン」など)の利用に関する取り決めが、今回の交渉における焦点の一つとなっていた。
【調査情報部 令和8年4月1日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 国際調査グループ (担当:調査情報部)
Tel:03-3583-9532