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EU、豪州とFTAで大筋合意、豪州産牛肉や砂糖に対して新たな関税割当を設定 (その2:EU側の措置と反応)(EU・豪州)

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 欧州委員会は2026年3月24日、豪州と自由貿易協定(FTA)締結で合意したと公表した。これにより、豪州向け輸出に対する関税の99%以上が撤廃される。欧州委員会は、年間約10億ユーロ(1849億円(注))の関税負担削減に寄与し、今後10年間で豪州向け輸出が最大33%増加すると見込んでいる。EUは、地政学的な不確実性が高まる中、経済安保の強化やサプライチェーンの多角化を図るためFTA締結を積極的に推進しており、25年9月にはインドネシアと、26年1月にはインドとFTA締結で合意している。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」2026年3月末TTS相場の1ユーロ=184.91円を使用。以下同じ。
(参考)海外情報「豪州とEU 、FTAで大筋合意(その1:豪州側の措置と反応)(豪州・EU)」もご参照ください。

合意における農畜産物の取り扱いの内容

(1)豪州向け輸出

 豪州向け輸出については、チーズの関税(現行は1キログラム当たり1.220豪ドル)が撤廃される。EUの豪州向けチーズ輸出量は25年に2万8000トンとなっており(表)、関税撤廃により約2000万ユーロ(約37億円)の関税負担が削減されると見込まれる。また、トマト缶など調製食料品についても関税が撤廃される。
 このほか、165の農産物・食品および231のアルコール飲料の地理的表示(GI)が保護されるとしている。

(2)豪州からの輸入

 豪州からの輸入については、牛肉、羊・山羊肉、一部の乳製品、砂糖、コメなどをセンシティブ品目として、関税割当を設定する。
 牛肉については、新たに合計3万600トン(枝肉重量ベース)の2つの関税割当が設定される。1つは牧草肥育牛肉に限定され、割当数量は1万6830トン(全体の55%)、枠内税率は無税である。もう1つの割当数量は、1万3770トン(条件なし、全体の45%)、枠内税率は7.5%である。これら割当数量は10年間で段階的に導入され、発効時の割当数量は3分の1とし、5年間は据え置きとなる。なお、25年の豪州からの牛肉輸入量は7200トン(部分肉ベース)となっており(表)、最終的な割当数量は現行輸入量の約3倍の水準となる。
 乳製品については、脱脂粉乳8000トン、バター5000トン、たんぱく質濃縮ホエイなど2000トンの関税割当(枠内無税)を設定する。なお、25年の豪州からのチーズ以外の乳製品輸入量は290トンとわずかであり(表)、割当数量は現行輸入量を大幅に上回る水準となっている。
 砂糖については3万5000トンの精製原料用粗糖の関税割当(枠内無税)を新設し、発効時の割当数量は2分の1とし、2年間は据え置きとなる。この関税割当の利用には、民間の持続可能性認証スキームによる認証が義務付けられる。また、でんぷん誘導体について、新たに1000トンの関税割当を設定する。豪州からの粗糖およびでん粉誘導体の輸入実績はほとんどない(表)。
 このほか、(1)輸入品の気候、環境、アニマルウェルフェアに関するEU基準への適合の確保、(2)豪州からの輸入が急増した際のセーフガード措置が設けられる。ただし、この内容の詳細については、3月24日時点では明らかにされていない。
表

今後の流れと関係団体の反応

 EU側では、今後合意文書の公表を経て、署名、批准に向けたEU理事会と欧州議会での承認プロセスが進められる。
 今回の合意について、EU最大の農業生産者団体のCopa-Cogeca(欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会)は、センシティブ品目に対する関税割当の設定は容認できないとし、「中期的に多くの農業部門が持続不可能なものになる」と非難する声明を発出した。同団体は、特に地理的表示の保護や関税割当の運用などの今後示される合意内容の詳細を確認した上で、影響を評価するとしている。一方、Eucolait(欧州乳製品輸出入・販売業者連合)は、今回の合意について「乳製品部門を含むEU産業の競争力と回復力の強化に寄与する」と評価し、早期の発効を望む姿勢を示した。
【調査情報部 令和8年4月1日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
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