畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2026年 > 中国、気候変動に対応して農業気候区画を見直へ(中国)

中国、気候変動に対応して農業気候区画を見直へ(中国)

印刷ページ
 近年、中国でも気候変動による農畜産物の被害が増えている。これに対し今年の中央一号文件(注1)は、農畜産業の災害対策能力を強化するため「農業気候資源に関する悉皆(しっかい)調査と区画化」を実施するとともに、気象、水循環、地質など自然災害に関する観測・予報を強化し、極端な天候への対応能力を向上するとした。中国では政府が定める農業気候区画ごとに最適とされる農畜産物の栽培、飼育が推奨されており、現在の区画は80年代初頭のもので、今回の見直しは実に40年ぶりのものである。
 この新たな区画化について、中国農業農村部新聞弁公室が指導し、中国農業映像新聞センターが運営するWeChat公式ページ「中国三農」(「三農」は農業、農村、農民のこと)が記事を掲載したため、その主な内容を紹介する。
 
  (注1)中国政府が毎年公表する文書。その年に最も重視する政治課題が取り上げられるとされ、2004年からは毎年「三農」(農業、農村、農民)が主題とされてきた。26年の一号文件については海外情報『中国、26年の中央一号文件を公表(中国)』(令和8年2月27日発)をご参照ください。

25年の天候不順の状況と農畜産物の被害総額

 中国応急管理部の統計によれば、2025年の自然災害に起因する農畜産物の直接被害総額は2426億元(約5兆6793億円)(注2)であった。自然災害の内訳は、大雨・洪水や、土砂崩れなどの地形・地質変動が42.8%、干ばつが30.7%、暴風が20.8%で、その他は台風、低温、森林火災などである。
 高温も問題で、2025年は1961年の観測開始以降最高の気温となり、河南省など複数の地域で30日以上有効な降水が確認できない状況となった。中国農業災害はこれまで、「南方は大雨、北方は干ばつ」と言われてきたが、25年は南方が干ばつで北方が降水量が多いという、これまでの常識が通用しない状況になっている。
 25年、北方については例えば、9〜10月の秋の収穫期に、河南省(24年の豚飼養頭数が全国第1位)で例年の3.0倍の降水量となり、山東省(野菜輸出量が安定的に全国第1位)は例年の2.7倍で、いずれも1961年以降の最高値を更新した。
 これに対し、南方の広西チワン自治区では2024年の秋以降冬、春と三季連続で水不足となり、農村地域の飲用水として7910トンが配給されたほか、政府気象部門が9億トン以上の人工降雨を実施する事態となった。同自治区では26年1月以降も降水量が例年の4割から7割で推移し、一部地域では既に重篤な干ばつ状態になっている。南方では今春、江蘇省南部や湖北省西北部などでも干ばつが発生し、これら地域で春に播種されるコメや小麦の生育が影響を受けている。
 
  (注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2026年3月末日TTS相場である1元=23.41円を使用した。
 

天候不順によって産地が受けている影響

 中国気象局応急減災と公共サービス司の王司長は26年2月、メディアの取材に対し、「気候変動は既に目に見える影響をもたらしている。農畜産業における直接的な影響は栽培適地の北上である。作物、特に三大農作物であるコメ、小麦、トウモロコシでは栽培北限が北上し、品質の劣化、病害虫の発生区域の北への拡大などが起きている」とした。
 例えば、病害虫のウンカ類の越冬北限はかつての北緯25度から28度に北上し、小麦さび病の発生地域は北西方向に200〜300キロメートル拡大した。これらイネ、小麦の主な病害虫による直接的な経済被害だけでも毎年120億元(約2809億円)を超えている。
 他方で、栽培適地が広がった作物もあり、例えば大豆について、黒竜江省では栽培北限が30キロメートル北上し、これまで大豆を栽培することができなかった地域でも栽培が可能となった。また、そばや飼料作物の産地として知られていた(せん)西(せい)省の黄土高原地域ではりんごの栽培可能地域が北に200キロメートル拡大した上、海抜が高いことによる日照の強さなどから、つやがあり、みずみずしい品質の良いりんごが栽培できるようになった。
 

政府の対応:新たな農業気候区画の策定

中央一号文件が「農業気候資源に関する悉皆調査と区画化」について記載するのは2回目で、1回目は2023年の一号文件である。23年に悉皆調査などの実施に向けて検討する、とされた後、まず気象局が23年に予備調査に着手し、24年には同局と農業農村部が協力して7つの省で試行を始め、25年には試行拠点が18の省に拡大した。試行拠点では、従来の農業気候区画に基づく農作物栽培ではなく、現在の気候状況に適した作物や品種の選定、栽培が試みられ、上記の陝西省では48拠点でりんご栽培の最適化を図ることにより、生産効率の向上や気象影響の低減などに成功し、間接的な経済利益が合計で9886万元(約23億1431万円。取り組み期間全体の総額)に上る成果となった。
 これらの検討、試行結果に基づき、気象局と農業農村部は2026年、新たな農業気候区画の策定を本格的に開始する。新区画は25種の作物について5大農業気候区画に分けた編成となり、4年後の29年に完成する。25種の作物とは、コメ、春小麦、冬小麦、春トウモロコシ、夏トウモロコシ、春大豆、夏大豆など生産量が多い主要作物13種と、かんきつ、りんご、アブラナなどの主要な経済作物12種であり、5大農業気候区画とは、総合農業気候区画、植栽気候区画、畜牧業気候区画、漁業気候区画および施設農業気候区画をいう。
 策定に当たっては、気候変動に絶えず対応できるよう、ビッグデータやAI技術などの先端技術を駆使し、各区画が迅速かつ正確に、さらに精緻に変動状況を反映できるシステム・枠組みを整備する。
 新たな農業気候区画について、全国政協委員(注3)の朱氏は、「将来的には、農家がシステムを使えば何を植えたらいいかすぐにわかる、同じ山のこちら側と向こう側、また5キロ離れた地域でもその地域ごとに異なる気候を反映し、何が最適な農作物かがすぐにわかるようになるだろう。農業気候区画は、農畜産業の自然災害の被害を減らすための『説明書』であるとともに、農家が科学的に農畜産業を営み、生産量と収入を増加するための『宝典』である」とした。
 
  (注3)全国政協委員とは、中国人民政治協商会議全国委員会の委員のことをいう。同会議は全国人民代表大会(日本の国会に相当)と合わせて「両会」と呼ばれる中国の最高会議体の一つで、その全国委員会の委員は文学芸術や科学技術、社会科学、経済など34の分野の代表からなり、それぞれの分野での協議を経て選出される。
 
【調査情報部 令和8年4月22日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
Tel:03-3583-9532