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国産鶏肉・鶏卵等のトレーサビリティを開始(韓国)

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 韓国では、家畜防疫と畜産物に対する消費者の信頼向上に寄与するため、家畜とトレーサビリティ管理に関する法律により、家畜と畜産物の生産や移動にかかる情報の公開制度を進めてきた。この制度は、2008年に国産牛(牛肉)から導入され、輸入牛肉(2010年)、国産豚(豚肉)(2014年)、輸入豚肉(2018年)に適用対象を拡大してきた。そして、2020年1月1日からは、国産の鶏およびアヒルの生体、肉および種卵ならびに食用の鶏卵が対象となった(表1)。
表1 家畜とトレーサビリティ管理に関する法律の主な改正点(2020年1月1日施行分) 
 同制度では、トレーサビリティ管理として、生産、流通の各段階において畜産物の経営者等に対して畜産物品質評価院(以下「畜評院」(注1))への申請や届出等が義務付けられており、今回対象が国産の鶏等に拡大されたものである(表2)。
表2 家畜とトレーサビリティ管理に関する法律の段階別の主要内容
(注1)畜産物品質評価院とは、農林畜産食品部傘下の畜産物の流通情報事業を主管している政府機関

 そして、消費者は、販売段階で表示されている12桁の識別番号でモバイルアプリなどを介して商品の生産から流通までの詳細な情報が照会可能となる。

 また、2020年1月1日からは、今まで輸入畜産物のみ表示の義務があった飲食店など(注2)は消費者の選択権の保証のため、国内産畜産物に対しても識別番号をメニューなどに表示しなければならないとした。
 日本の農林水産省に当たる農林畜産食品部の関係者は、「今回の措置により、鶏、鶏卵等に対する消費者の知る権利などが強化されるとともに、効率的な防疫管理など政策的な活用も期待できる」と述べた。
(注2)店舗面積が700㎡以上の飲食店、学校給食提供者、通信販売業者

 一方で、現地報道によると、鶏肉産業は不況が続く中、トレーサビリティ制度に伴うコストの増加により、さらなる状況の悪化を懸念している。また、牛や豚に比べて飼養羽数が多いため、管理はより困難であるとし、制度の見直しを求める声も出ている。
 さらに、鶏卵では、畜産物衛生管理法により、すでに生産者固有番号、飼育環境、産卵日(採卵日)の鶏卵への記載が義務付けられており、事実上の二重規制との指摘もある(注3)。
 鶏卵流通業者は、今回の制度実施前(2018年11月~19年12月)に行われた3回のモデル事業でも現実と乖離する部分が多い点を強調し、改善を求めてきたものの、改善されずに今回の実施となったことから強く反発している。
(注3)鶏卵への産卵日(採卵日)等の義務化については、海外情報「韓国食品医薬品安全処、鶏卵に生産者等の刻印を義務化」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002346.html)や畜産の情報2020年2月号「韓国の畜産業界における環境問題への取り組み」コラム1「鶏卵に産卵日(採卵日)の記載を義務化」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000970.html)を参照されたい。
【小林 智也 令和2年1月27日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4389