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海外の需給動向【鶏肉/ブラジル】 畜産の情報 2019年7月号

1〜3月の輸出は減少も、中国とメキシコの今後に期待

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サウジアラビア向け輸出減が生産量にも影響を与える
  ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2019年1〜3月の冷蔵・冷凍鶏肉輸出量は、前年同期比8.4%減の86万8321トン(製品重量ベース)となった(表9)。これは、昨年から、主要輸出先であるサウジアラビア向けにおける新たなハラル制度の影響や、加塩鶏肉の主要輸出先であるEU向けにおける衛生上の懸念により、一部の主要パッカーからの輸出が制限されたことで、生産縮小や工場の稼働率の低減に追い込まれたことが要因とされている。

(参考) 
農畜産業振興機構HP海外情報「EUがブラジルの食鳥処理工場20カ所からの輸入を禁止へ」
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002208.html

 

  国別に見ると、サウジアラビア向けが、前述の要因に加え、今年1月に、サウジアラビア側が認定した輸出施設リストから33施設が除外され、25施設となったことなどにより、前年同期比25.0%減の11万3043トンと大幅に減少した。また、日本向けも、日本国内の生産が堅調に推移していることに加え、相場安も続いていることから、同8.6%減の9万1328トンとなった。一方、中国向けは、同国の旺盛な需要を背景に同2.9%増の11万4187トンとなっている。中国からの引き合いは日に日に強まっているとされ、各パッカーは、価格交渉において強気の姿勢を見せており、今後の中国向け輸出量および輸出額の増加が期待されている。

(参考) 
農畜産業振興機構HP海外情報
「サウジアラビアがブラジルの鶏肉輸出認定施設を一部取り消し」
(ブラジル)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002374.html

 

 



鶏肉の国内価格が高騰
 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、ブラジルの鶏肉相場は、2019年に入ってから、上昇傾向で推移している(図7)。これは、国内需要が堅調に推移していることに加え、輸出需要においても、中国や中東からの引き合いが強まっている中で、生産量が前述の通り減少していることが背景にある。5月21日には、1キログラム当たり4.96レアル(約136円)と、飼料不足による生産コスト高により高騰した2016年10月の水準を上回った。
 


メキシコが鶏肉輸入無税枠を追加
  メキシコ政府は5月24日、冷蔵・冷凍鶏肉の輸入関税が無税になる関税割当枠を5万5000トン追加すると発表した。この関税割当は2013年に創設され、2019年12月31日までの7年間で30万トンが割り当てられていたが、これは2019年2月までに全て消化されたと報じられていた。その結果、2019年1〜3月のメキシコ向け輸出量は、前年同期比38.7%減の1万5210トン、4月は同84.0%減の1232トンと、大幅に減少していた。
 これを受け、ブラジル側からは歓迎の声が上がっており、ブラジル動物性タンパク質協会(ABPA)のフランシスコ・トゥーラ会長は、「今回の鶏肉輸入無税枠の追加により、メキシコへの鶏肉輸出が回復することは間違いない」と自信を見せている。


(調査情報部 佐藤 宏樹)