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海外情報 畜産の情報  2019年9月号

「Natural Beef」と形容されるウルグアイ産牛肉の特徴と対日輸出見通し

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調査情報部 佐藤 宏樹(現総務部総務課)、石井 清栄

【要約】

 2019年2月7日に解禁されたウルグアイ産牛肉の対日輸出は、解禁前は「冷凍に限られる」とみられていたが、実際には、冷蔵での輸入も行われている。ウルグアイの牛肉関係者は、対日輸出において、「Natural Beef」であることに加え、信頼性の高いトレーサビリティシステムを評価してもらえるような、小規模でも特定のニーズに応えた市場での販売を強化していきたいとする一方、トルコ向けの生体牛輸出の大幅な増加を反映して、生産量の減少が見込まれるウルグアイの輸出余力は限定的ともいえる。

1 はじめに

 2019年2月7日、農林水産省は、16カ所のウルグアイの牛肉輸出施設を対日輸出施設として認定された。本件については、既に政府間合意がなされ、2018年11月27日に衛生条件の締結に至っていたが、今回の施設認定を受け、正式に対日輸出が再開されることになった(図1)。
 

 再開後約10日で、最初の輸出が航空便にて行われ、同年3月5日〜8日に開催された第44回国際食品・飲料展(FOODEX JAPAN 2019)に、ウルグアイ食肉協会(INAC)が出展したほか、FOODEX前後のさまざまなイベントで、“Natural Beef”(後述)と形容されるウルグアイ産牛肉が振る舞われた。 3月4日には、FOODEXの開催に先駆け、「日本ウルグアイ・ビジネスフォーラム」が(独)日本貿易振興機構(JETRO)の主催により開催された。本フォーラムでは、ウルグアイエンゾ・ベネッチ農牧水産大臣が「安心・安全な食料をウルグアイから世界へ」と いうテーマで講演を行った。また、3月6日には、ウルグアイ産牛肉やキャビア、チーズなど、ウルグアイの食を体感できるイベントとして「ウルグアイ・デー・イン・ジャパン」 が開催され、関係者が多数出席した中、ウルグアイの食はもちろんのこと、ウルグアイで親しまれているタンゴなどの音楽を通じて、五感でウルグアイの食文化を堪能することができた(写真1)。
(参考) 海外情報「FOODEXの開催に合わせウルグアイ食肉関係者が来日(ウルグアイ)」
     https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002417.html

 

 現在、複数の商社が取引を開始しており、 実際に2019年5月までに、冷蔵牛肉が202 トン、冷凍牛肉が日本へ111トン輸出されている。また、一部レストランチェーン店では、新メニューとしてウルグアイ産サーロインステーキが採用されており、今後のさらなる需要の増加が期待されている。
 本稿では、このようなウルグアイ産牛肉への関心の高まりを受け、①対日輸出の増加見込み②どのような特徴を持った牛肉が日本に入ってくるのか─という2点について、現地調査に基づき報告する。なお、同国の牛肉産業の概要については、畜産の情報2017年3月号「ウルグアイの牛肉生産の現状と輸出市場での潜在力」を参照されたい。
 また、本稿中のレートは、1ドル=110円 (2019年7月末TTS相場)を使用した。

2 直近の輸出動向と輸出拡大への課題

(1)直近の動向

ア 生体
 INACによると、2018年の牛と畜頭数は、前年比0.2%増の234万3925頭となり、2014年以降続いてきた増加傾向に陰りが見えてきた(図2)。これは、年々高まるEUからの穀物肥育牛需要により出荷サイクルが短くなっていることに加え、トルコへの肥育もと牛と しての生体牛輸出が近年積極的に行われたことで、国内で肥育されと畜に回る生体牛の数が減少していることが要因として挙げられる (図3)。
 
 

 2018年において、と畜頭数の約2割に相当する生体牛が輸出されており、生体牛輸出の9割以上を占めるトルコからの生体牛需要が牛肉産業に与えている影響は非常に大きい。米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、トルコ政府は、2018年初旬に生体牛輸入の関税を撤廃したことで、生体牛輸入がより活発に行われた(図4)。そのため、ウルグアイからも多くの生体牛が輸出された。
 トルコは、国内生産力強化のため、去勢されていない雄子牛を多く購入したとされている。ウルグアイの繁殖農家や荷受組合によると、トルコ側の購入価格は国内販売価格に比べ5〜10%高いことから、価格面でも優位性があったとしている。これに伴い、国内の生 産者出荷価格も結果的に上昇した(図5)。また、これらの要因に加え、昨今の価格面に与えている要因としては、中国からの需要増加が挙げられる。2018年8月以降、継続的に発生しているアフリカ豚コレラの影響で、中国は豚肉に限らず食肉全てにおいて輸入量 を増やしているとされている。この結果、ウルグアイの肉用牛生産者出荷価格は、前述のと畜頭数減も相まって、今年に入ってから急激に上昇している。
 




牛肉
 国内での牛肉生産量の約85%が輸出に仕向けられているが、ウルグアイ中央銀行によると、2018年の牛肉輸出量(製品重量ベース)は、前年比6.7%増の32万4778トンと過去最高を記録した(表1)。



 輸出先国別にみると、最大の輸出先である中国向けは、引き続き堅調な需要に加え、米国や豪州と比較して価格が安いことから、南米からの輸入を増やしており、前年比14.4%増となった。また、ロシアについては、それまで最大の輸入相手国だったブラジル産畜産物から同国が禁止している成長促進剤が検出されたことを受け、2017年12月から2018年10月末までブラジル産牛肉および豚肉の輸入を停止していた(注1)ことにより、代替需要が生まれ、同160.6%増と大幅に増加した。EU向けは、ヒルトン枠(EU規則593/2013)と高級牛肉無税枠(同481/2012。QUOTA481)(注2)での輸出が大半を占めており、ヒルトン枠の消化率は近年98%以上と、順調に推移している(表2)。
注1: 詳細は、海外情報「ロシア向け牛・豚肉の輸出停止に伴う現地の反応( ブラジル)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002090.html)、「ロシアがブラジルからの牛肉および豚肉の輸入を再開(ブラジル)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002325.html)を参照されたい。
注2: ヒルトン枠は、EUにおける高級牛肉の低関税輸入枠で、放牧肥育であることなどが条件とされている。
    QUOTA481は、同じく高級牛肉の無税枠で、一定期間の穀物給与などが義務付けられている。




 中国について、INACの担当者は、特定の部位だけではなく、「いずれの部位も購入する国」と形容しており、その需要の大きさに驚きを見せている。今年5月14日〜16日において上海で開催されたSIAL(Salon International de l'Alimentation・国際食品見本市)では、3日間で200人を超えるバイヤーがINACブースを訪れたとしており、「実際に契約に結びついたケースも多かった」と語った。また、同国最大のパッカーであるBPU社の輸出担当者は、この状況は、生体牛の価格高騰に苦しむパッカーにとって非常に明るい見通しであるとした。実際、中国向 け冷凍牛肉輸出単価は2019年に入り前年を上回って推移しており、5月には、直近3年では最高となる1トン当たり4328ドル(47万6080円)となっている(図6)。一方で、「バブルがいつ崩壊するか」と不安視する関係者もおり、一部パッカーでは、国際価格に左右されないよう、できるだけエンドユーザーと近い取引先と契約するケースも見られているという。
 

 ロシア向けは、トリミングが全体の半分以上を占め、残りも前肢分体などと、低級部位が中心で、現地パッカーによれば、「ロシア向けは、中国向けの輸出認証を持っていないパッカーが中心となって輸出している」とのことであった(表3)。しかし、ブラジルの代替需要の色が濃く、2018年11月に、同国がブラジルからの輸入を再開させて以降、急激に輸出量が減少しており、同国向けの需要は一巡したと考えられている(図7)。
 


 

 対日輸出を考察するに当たり、近隣国の状況として、韓国向けの現状を報告する。韓国向け輸出は、2013年の解禁以降、順調に数量を伸ばし、2016年には3486トンに達した。しかし、2017年になると一転、15年と同じ水準まで減少、18年には伸びたものの16年の水準に至らなかった(図8)。これについて、INACや現地パッカーにヒアリングしたところ、韓国向けは、新たな市場が解禁されたということで、一時期注目を集め、数量を伸ばしていたものの、①韓国が締結しているFTAの対象国に比べると、現地輸入関税が高く、他国との価格競争力の面で断念 したパッカーが多かったこと②中国の需要が大きく、韓国向けに無理して輸出する必要がなくなったこと─などの要因により、大きな市場とはならなかった。また、韓国の畜産関係者は、「ウルグアイ産牛肉がスーパーマーケットなどで販売されているのは見たことがなく、レストランでもメニューに採用されているという例は聞いたことがない」と語った。 現時点で韓国向け輸出を行っているCarrasco社によれば、「市場の多角化という観点から同国との取引は続けるが、メインは中国向けであり、急激に韓国向け輸出量を増やすことは考えられない」とのことであった。
 
 

(2)輸出拡大への課題

 USDA/FASによると、2019年のウルグアイの牛肉輸出量は、生体牛輸出の増加によると畜頭数の減少に伴う生産量の減少に加えて、競合するアルゼンチンやブラジルにおける現地通貨安の影響による価格競争力の低下などから、前年比5.6%減の44万トン(枝肉重量ベース)とみられている(図9)。
 

 生産については、ほとんどの関係者が、「2019年の減少は確実で、生体牛の確保に苦慮している」とのことだった。また、今後についても、一部の関係者は、「ここ最近の種付けは順調と聞いているので、2021年以降は回復する可能性があるが、少なくとも2020年までは減少するのではないか。いずれにせよ、大幅な増産は見込めないであろう」とのことであった。なお、近年牛肉産業に大きな影響を与えたトルコ向け生体牛輸出については、トルコリラ安の影響で、購買意欲が減退しているとされており、今後は減少することが見込まれている。
 ウルグアイ牛肉産業が抱えている課題として、同国は南米の中でも小国であり、土地にも限界があることから、大幅な増産が難しいという点が挙げられる。草地等面積を見ても、近年横ばいで推移しており、今後もこの流れは変わらないと見込まれる(図10)。今のところ、規模拡大に向けて大規模投資が行われる動きもみられない。

 

 また、繁殖部門の成績が低いという点もある。例えば、受胎率については、公式な統計はないが、70%強とみられている。これは、良好な草地は肥育用に回され、状態があまり良くない草地で繁殖が行われることが多く、母牛の健康状態が良好ではないとされてい る。また、育成も状態の良くない草地で行われることが多いため、子牛の増体が芳しくないという。加えて、人工授精が行われるのは、一部の未経産牛に限られ、ほとんどが自然交配によるという。
 これらについて、政府や生産者団体は対策を講じ始めている。国立農牧研究所(INIA)と農牧水産省(MGAP)は2018年、共同で「牛生産技術普及促進協議会」を立ち上げた。これは、国内の各地域に協議会を設立し予算を割り付け、協議会が中心となり地域におけ
る畜産生産に関する問題(水資源の効率的な利用、草地改善など)を吸い上げて、個々の生産者への融資プログラムを実施するものである。これは、長期的な視野での畜産生産の問題解決が目的であり、本協議会のマネジメントを担当しているMGAPの担当者によると、現状は融資プログラムを通しての課題解決を行うこととなっているが、将来的には、協議会を通じての定期的な技術者の派遣や草地改善指導などを行えるようにすることが狙いだとしている。
 生産者団体の動きとしては、CREA(注)が2015年以降、傘下の生産者に①経産牛群を栄養状態別に複数に分け、最も栄養状態が悪い牛群に最も質の良い牧草を給与する②早期離乳を積極的に行うなどを提唱し、生産者への技術指導─などを行ったことで、受胎率が2015年の74%から2018年は90%まで向上したとしている。
 また、INIAは、積極的に草地改良技術を開発し、ウェブサイトで公開している。しかし、「それらを見に行くのは新しい技術の導入に熱心な一部の農家に限られる」(同担当者)と話しており、国全体への普及の難しさがうかがえる。
 このように、官民ともにこの課題について理解はしているものの、末端の生産現場まで広まっているのは一部となっているのが現状である。

(注) CREA(地域農業者連盟)は、ウルグアイの他、アルゼンチンなど南米諸国にみられる非営利組織で、肉用牛生産者を含む、先進的な農業者が個々の直面する課題を共有し、それらの課題の解決や改善を図る活動を行っている。アルゼンチンのCREAについては、畜産の情報2017年10月号「アルゼンチン酪農乳業の現状と今後の見通し〜新政権発足後を中心に〜」コラム1に記載しているので、参照されたい。

 一方、国内市場に目を向けると、近年トリミングなどを、ブラジルなどからの輸入品で代替する動きが進んでいる。2018年の牛肉輸入量は、前年比148.3%増の1万6177トンと前年から2.5倍近く増加した(図11)。輸出量と比較すると、微量に過ぎないが、今後、輸入が増加し、国産品を付加価値が高い輸出へ仕向けて行く流れが進展する可能性がある。

 

3 「ウルグアイ産牛肉」の生産の現状

 本章では、「ウルグアイではどのような牛肉生産を行っているのか」「ウルグアイからどのような牛肉が日本に入ってくるのか」と いう観点から、現地の農場を取材した結果を報告する。

 (1)Natural Beefとは

 ウルグアイで生産される牛肉の多くは「Natural Beef」と形容され、輸出時もプロモーションワードとして使用されている(写真2)。これについて、INACに定義を確認したところ、「①畜産副産物未使用②成長ホルモン未使用③『自然』に近い形で飼養している牧草肥育」であるとの回答であった。①および②については、主要輸出先国であったEU向けに対応するため、1980年代までに、畜産副産物、成長ホルモンおよび増体目的の飼料添加物の使用を法律で禁止したことから、この点を同国産牛肉の強みとしてアピールしている。また、③については、出荷頭数のうち、牧草肥育の割合が85%、穀物肥育(注1)の割合が15%とされており、「自然に近い形で飼養された赤身肉」というのがセールスポイントとなっている。なお、穀物肥育牛についても、近年需要の高まりがみられており、従来から高級牛肉無税枠(QUOTA481)を持つEUや、米国、最近では中国からも需要があるという。
 

 品質については、ウルグアイナチュラルミート認定プログラム(PCNCU)(注2)を始め、国内外のいくつかの認証制度によって保証されているが、多くのパッカーでは、「ウルグアイ産牛肉というだけで、豊かな自然環境の中で育っているという背景から、一定の品質は保証されているので、仮に認証を取得しても、それが付加価値につながることは少ない」と語っており、実際に浸透している認証は少ない。その中でも、より多くのパッカーに採用されているのが、USDAの認証である「NEVER EVER 3」である(写真3)。この認証は、上記の法律を順守しているのは当然のこと、抗生物質の使用も禁止しており、もし抗生物質を使用した場合は、使用していない牛群と分けて管理しなければならないなど、法律の規定に上乗せした要件が付される。 しかし、この点が、Natural志向を持つEUなどの市場では付加価値と評価されている。

注1 : フィードロット由来または仕上げ期に穀物を給与されていること
注2 : 詳細は畜産の情報:海外編2007年3月号「ウルグアイの牛肉産業の概要(輸出市場獲得に向けた取り組みを中心に)」を参照されたい。


 

 
 
 

 (2)トレーサビリティシステム

 トレーサビリティ法(法律第17997号2006年7月12日制定)の下、全ての牛を対象としたトレーサビリティが整備されている。この制度では、政府が無料で配布する個体番号が記録された耳標とICタグにより、出生時期、と畜までの移動履歴、所有者の変更などの情報を把握することが可能となる。パッカー搬入後は、INACの食肉産業情報電子システム(SEIIC)の下で、通称「ブラックボックス」と呼ばれるデータ登録システムを通じて枝肉重量などの情報がINACにリアルタイムで送信される仕組みとなっており、輸出される部分肉から個体までのトレースバックも可能となっている。これらは、州を超える移動のみに義務がある米国や、トレースの範囲が生産農場からと畜場までとなっており、部分肉はロット管理となっている豪州と比較すると、輸出国の中でも先駆的な制度と して確立されているといえよう。INACも対輸出プロ−モーションにおいても、「Natural Beef」と併せて、ウルグアイ産牛肉の大きな強みとして、積極的にアピールしている。
 

(3)事例紹介〜ウルグアイではどのよ うな牛肉が生産されているのか〜

 本調査では、首都モンテビデオ周辺の3農場を取材した。なお、主要生産県等については、畜産の情報2017年3月号「ウルグアイの牛肉生産の現状と輸出市場での潜在力」参考1および表4を参照されたい。

ア Santisima Trinidad農場
 同農場では、肉用牛の繁殖から育成・肥育までを行っている。2011年に、CREAのメンバーである現在のオーナーが購入し、肉用牛を956頭飼養し、一部羊も飼養している。 農場の面積は984ヘクタールで、そのうち草地が870ヘクタール(牛用670ヘクタール、羊用200ヘクタール)、耕地(トウモロコシなどの穀物)114ヘクタールとなっている。草地は、自然草地が7割で、改良草地が3割となっている。改良草地は、自然草地の上にライグラスやクローバーなどを播種するパターンと、自然草地を全て除草した後に播種するパターンの2通りあるという。穀物については、現金獲得のための外部販売用であるが、今年のような豊作のときは冬期の補助飼料とすることがあるという。
 同農場では、CREAの繁殖成績改善プログラムを実施した結果、受胎率は、2016年の76%から2018年は97%と飛躍的に向上した。これについて担当者は、「早期離乳を実施したことで、母牛の消耗を最低限に抑えることができた」と語った。品種は、アンガスとヘレフォードの交雑種となっている(写真4)。その理由として、同者は、「アンガス種の血統を強くしたい気持ちはあるが、一方でヘレフォードの方が増体が良く、また個人的 な主観だが、交雑種の方が純粋種より受胎率が良いと考えている」と話した。
 

 出荷先は、肥育牛としてのパッカー向けが6割、肥育もと牛としてのフィードロット向けが4割となっている。パッカーへは、生体重約500キログラムで出荷している。価格交渉は、出荷が近づいた頃に、荷受業者を通 してパッカーへ牛群の提案を行うという。パッカーによって、プレミアムを付ける基準(基準重量、重量ごとの価格の上昇率など)が異なるため、牛群の平均重量や体格から判断し、荷受業者にパッカー選定を任せるのではなく、自ら提案を行っている。また、近年はフィードロットへの出荷も増えているという。フィードロットへは、同約360キログラムで出荷しており、ほとんどがQUOTA481の枠を利用して、EUへ輸出される。
 両者への出荷価格(去勢牛)の違いを比較すると、
・パッカー:生体1キログラム当たり1.75ドル(193円)=生体1頭(約500キログラム)当たり875ドル(9万6250円)
・フィードロット:生体1キログラム当たり2ドル(220円)=生体1頭(約360キログラム)当たり720ドル(7万9200円)
 となる。両者の差は155ドル(1万7050円)だが、360キログラムから500キログラムまで肥育する場合半年間かかることから、コストを考えると、フィードロットへ出荷した方が利益を得ることができるという。そのため、今後もフィードロットへの出荷割合が高まっていくと見込んでいる。
 
 


イ Los Taras農場
 同農場は、繁殖部門に特化し、約3年前から、草地管理に力を入れ、2018年からは週に1回、外部の専門家の指導を仰いでいる。牧区を細分化し、自然草地と改良草地でそれぞれ回復期間を判断、適正な牧区運用に努めたところ、2018年は、1ヘクタール当たりの年間増体重(注)が、2016年の144キログラムから162キログラムまで増加し、受胎率も85%と、国内平均を上回った。また、草地が改善したことで、冬期の補助飼料の使用量を抑えることができ、生産コスト減につながった。
 品種は、アンガス種とヘレフォード種の交雑種が主体だが、年々アンガス種の血統が強 くなっている(写真5)。これについて、農場主によれば、近年アンガス種の引き合いが強まっており、フィードロットへ販売する際に、ロット全体が真っ黒である(=アンガス種の血統が強い)と、取引価格が上昇するとのことであり、このため本農場ではアンガス種の血統を強くし、現在フィードロットへ全頭出荷している。また、2018年は国内出荷価格より5〜10%高くトルコ向けに生体牛輸出を行ったという。

(注)年間の増体重=(出荷時体重−導入時体重)÷(出荷月齢−導入月齢)×12
   1ヘクタール当たりの年間増体重=年間の増体重÷土地面積


 


ウ Don Horacio農場
 同農場は肥育専業であり、去勢牛(アンガス種の純粋種9割、ヘレフォード種との交雑種1割)を300頭肥育している。牛は、同じ経営者が所有している繁殖農場(Cerrolargo農場)と育成農場(Tacuarembo農場)から導入している。草地の割合は、自然草地1対改良草地1で、改良草地はライグラス、クローバー、ロータスなどを使用している。繁殖農場における繁殖成績は、生産コストとの兼ね合いから、必ずしも一番上を目指す必要はないと考えており、人工授精は未経産牛の約7割のみに使用し、その他は自然交配を行っている。また、受胎率は平均80%程度だが、生産マネージャーは「これ以上受胎率を上げるためには、早期離乳などにも取り組まなければいけないが、それを行うことによる収益的なメリットは薄い」とし、現状を維持していくことが最善だと語った。
 アンガス種の純粋種が中心となっているのは、出荷先の契約パッカーがアンガス種を多 く求めていることに加え、導入元の農場はあまり草地の質が良くないので、ヘレフォード種よりサイズが小さいアンガス種の方が、受胎率が高いことによる。また、除草剤や化学肥料を使わず、補助飼料に非遺伝子組み換えの穀物を使用するなど、できるだけ有機に近い生産を行うことで、契約パッカーからプレミアムを得ることに成功しているという。なお、有機に近い生産を行った牛肉は、主に米国に輸出される。
 

(4)フィードロット

 現在、ウルグアイ産牛肉の約15%が穀物肥育であるといわれている。飼料となるのは、ソルガム、トウモロコシ、大豆、小麦などで、特にソルガムについては、輪作体系において土壌改良の効果を持ち、生産コストもトウモロコシより圧倒的に低いことから、ウルグアイでは広く利用されている。飼料穀物は、国内産では不足するため、3割程度がアルゼンチンなどからの輸入となっている。価格に関しては、穀物の種類が多いことから一概には言えないが、国産の方が約1割程度輸入より安いとされている。そのため、多くのフィー ドロット農家は、近隣の農家から口約束で穀物を入手する一方、大規模農場であれば、自ら生産する農場も少なくない。
 ウルグアイにおけるフィードロットの特徴として、大規模農場が少ない点が挙げられる(図12)。飼養頭数が5000頭以上の農場は全体の5%にとどまり、小規模の牧草肥育農場が穀物肥育に移行したというパターンが多 い。
 

 穀物肥育牛肉の今後の見通しについて、フィードロット協会(AUPCIN)は、①輸出先は現在EUのQUOTA481に限定されており、価格変動リスクが牧草肥育牛肉より小さいこと②中国の富裕層向けの引き合いが強まっていること─などから、生産量は増加傾向で推移するとしつつ、土地の制約から規模拡大が難しいため、小規模の牧草肥育農家が仕上げ期に穀物を給与する程度であることから、急激かつ大幅な増加は考えにくいとしている。
 

4 関係者の声から考える対日輸出の可能性

 日本の商社によると、同国産で需要がある主な部位としては、冷蔵のリブロースやサーロインなどの高級部位に加え、トリミングなどの冷凍の低級部位であると推測される。高級部位に関しては、「健康志向が強まっている昨今、赤身比率が高いので、ニーズはある」と話す商社関係者も多く、一部の居酒屋やレストランを中心に既に取引が開始されている。一方、低級部位に関しては、「豪州産との勝負になるが、まずは価格と品質のテストを行っている段階」と話すにとどめる関係者が多かった。
 約3年前の前回調査で明らかとなった課題(①限られた輸出余力②限られた用途(冷凍のロイン系アイテムへの評価が低く、ひき材に限られる)③豪州産との競合)については、輸出余力を除き、やや情勢が変化していることが分かった。

① 限られた輸出余力
 前述の通り、生体牛輸出増加によると畜頭数の減を受け、少なくとも直近数年間の輸出余力は大きくないといえる。また、輸入品による国内消費の代替で一部余力が生まれる可能性があるが、現時点では、どれだけ代替できるかはまだ未知数であり、予見できない。

② 限られた用途 
 今般の調査の中で、冷蔵での輸出も行われていることが分かった。ある日本商社によると、「ウルグアイがEU向けに冷蔵牛肉を輸出する際の賞味期限は120日とされており、仮に日本向けも同じ期限となれば、パッカーを出てから日本まで到着するのに船便で60日かかるとしても、まだ60日ある。そのため、対日輸出は冷凍に限定されているというわけではなく、冷蔵でも行われるだろう」とのことであった。また、現地パッカーは、「冷凍品に関しては、取り扱うアイテムが中国市場と競合する可能性が高いことに加え、ウルグアイ産牛肉のおいしさを伝えるためには、冷蔵で高級部位を仕向けたい」と考える者が多 く、積極的に冷蔵を輸出したい構えだ。現在、多くのパッカーが、具体的な賞味期限を設定するに当たって、60日間冷蔵した牛肉のサンプルの色やにおいなどの検査を行っている。航海中にも熟成が進むことから、一部の取引では、品質の劣化を防ぐため、冷蔵で輸入した後、港で急速冷凍して、消費者に提供されるまでは冷凍のまま輸送するという「チルフロ(チルドフローズン)」という技術を使用しているという。

③ 豪州産との競合
 豪州産と比較すると、価格面においては、そこまで変わらないという声が多く聞かれた。本稿執筆時点では、サンプル程度の量しか日本に到着していないため、豪州産とのCIF価格の比較はできないが、関係者の声をまとめると、特に、冷凍の中級、低級部位に関しては、日豪EPAによる関税メリットを考慮に入れても、ウルグアイ産も十分価格競争できるのではないかとしている。しかし、 数量面において圧倒的な差があることから、ウルグアイ側も、豪州産と真っ向勝負を挑むことは考えていなかった。

 今回の調査において、ほぼ全ての関係者が、 ウルグアイ産牛肉の対日輸出で狙うのは、「あくまでもNatural Beefであることや、信頼性の高いトレーサビリティシステムなどを評価してもらえるような小規模でも特定のニーズに応えた市場」であるとしていた。

5 おわりに

 ウルグアイの牛肉生産は、トルコ向けの生体牛輸出の大幅な増加の影響を受け、しばらくは回復が難しい。また、生体牛価格も上昇 していることから、パッカーの収益が圧迫されている状況となっている。そのため、既に生産量の85%が輸出に仕向けられている現状も踏まえると、輸出量の大幅な増加は想定しにくいと考えられる。ただし、2018年以降、国内市場向けに輸入量が大幅に増加していることから、この流れ次第では、生産量に占める輸出量の割合が高まり、将来的に輸入相当分の輸出余力が生まれる可能性もある。
 対日輸出に関しては、解禁前は「冷凍品に 限られる」と思われていたのに対し、実際に解禁され、将来のビジネスとして見据えられている今、徐々に潮流が変わってきたように思われる。日本側、ウルグアイ側ともに、輸入増加に向けた機運が高まっており、チルフロ技術など試行錯誤が重ねられている点においても、各社の真剣な取り組みがうかがえる。一方、解禁直後は輸出量の増加が予想されたものの、他国と比べた関税上のデメリットなどの問題から停滞した韓国の事例もあることから、今後の動向を注視する必要がある。
 今回の報告により、ウルグアイ産牛肉に関心のある関係者にとって、和牛とも、米国産とも、また豪州産とも異なる同国産牛肉の理解が深まるものとなれば幸いである。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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