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海外の需給動向【豚肉/中国】  畜産の情報 2019年12月号

豚肉生産量が減少し、輸入量が大幅に増加

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豚飼養頭数がさらに減少も、減少スピードは緩和
 中国ではASF(アフリカ豚コレラ)の影響で豚飼養頭数が減少しており、2019年9月時点の総飼養頭数は前年同月比41.1%減、繁殖雌豚は同38.9%減であった(図8)。
 

  このため、中央政府や地方政府は、同年8月以降、豚の増頭対策を打ち出している。これは、(1)消毒施設の建設、種豚の導入や出荷頭数の増加に対する補助金、(2)環境規制により制定された養豚禁止区域からの移転に対する、移転先の用地の提供−など多岐にわたるものである。これらの施策の効果もあり、同年9月の豚飼養頭数は、8月までと比べて減少のスピードが緩和されている(図8)。

豚と畜頭数や豚肉生産量が大幅に減少
 豚と畜頭数は、2019年6月までは、2月を除き過去3年(2016〜18年)の平均よりも多かったが、同年9月には、前年同期と比べて35.8%減の1234万頭まで減少した(図9)。また、同年第3四半期(7〜9月)の豚肉生産量は、同42.1%減の711万トンであった(図10)。
 



 

 

 例年であれば、9月の中秋節や10月の国慶節といった大型連休に向けてと畜頭数が増加するが、本年8月以降については、と畜可能な豚が不足し、豚肉生産量も減少していることが見てとれる。

子豚価格および豚肉小売価格が上昇
 豚肉供給不足を受け、生体出荷価格および豚肉価格は上昇を続けている。2019年10月の生体出荷価格は1キログラム当たり35.2元(555円:1元=15.76円)と、前年同月比約2.1倍となった。豚肉小売価格は同48.5元(764円)であり、同約2.0倍であった(図11)。
 

 
 また、2019年2月までは、多くの生産者がASF発生のリスクが高いと考え、自らの農場への子豚の導入を見送っていたため、子豚価格は下降していた。しかしながら、同年3月以降は、ASF発生件数が減少してきたことや、生体出荷価格の上昇により高い収益が見込めることから、増頭の機運が高まっている。このため、同年10月の子豚価格は、同2.7倍の66.0元(1040円)であった(図11)。

鶏肉や牛肉価格も上昇
 このような中、牛肉や鶏肉など他の畜産物に消費がシフトしているとされており、2019年10月の小売価格は、豚肉が前年同月比約2.0倍に対して、牛肉が同20.1%高、鶏肉が同25.3%高となるなど、すべての畜産物で小売価格が上昇傾向にある(図12)。特に鶏肉は、2019年1〜9月の生産量が前年同期比10.2%増加しているものの、豚肉減少分を補うには至らないため、今後も価格は上昇すると考えられる。
 

 
豚肉輸入量は大幅に増加

国内の豚肉供給不足を受けて豚肉輸入量も増加し続けており、2019年1〜8月の輸入量は、前年同期比40.4%増の116万トンであった(表13)。これは、昨年の総輸入量に匹敵する量であるが、国内の豚肉生産が本年中に回復する見込みがないことから、今後も輸入量が増加し続けると考えられる。
 



 米中貿易摩擦により、米国からの豚肉輸入には、2018年4月と7月にそれぞれ25%の追加関税が課せられたため、同年後半は米国からの輸入が減少していた。しかしながら、2019年1月以降の輸入量は増加している(図13)。
 

 輸入価格をみても、2018年10月以降上昇を続けており、特に2019年5月以降の米国産豚肉の価格上昇が大きい(図14)。これは、中国が多量の豚肉を輸入することで国際相場が上がっていること、くず肉だけではなく、かた肉やモモ肉などの部位も購入していることが要因であると考えられる。 
 米国からの豚肉輸入関税については、一部緩和するとの報道があったものの、米中貿易摩擦解消の見通しは立っていない。しかしながら、豚肉供給不足を補うには、今後も米国も含めた諸外国から豚肉を輸入する必要があるのではないかと考えられる。
 


〔参考〕海外情報「中国がアルゼンチンからの豚肉輸入を解禁(アルゼンチン)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002454.html

(調査情報部 寺西 梨衣)