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海外の需給動向【豚肉/チリ】  畜産の情報  2020年3月号

生産拡大が限られる中、輸出入量が大幅に増加

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豚肉生産量はわずかな減少にとどまる
 チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)によると、2019年の豚肉生産量は、前年比0.7%減の52万9957トンとなった(図5)。同国では、2012年までは順調に生産拡大が進んでいたが、環境問題によって国内最大の養豚生産企業であるアグロスーパー社の母豚15万頭規模の農場が閉鎖に追い込まれて以降(注1)、生産量はおおむね減少傾向で推移していた。依然として生産拡大は難しい状況であるものの、養豚生産企業が繁殖成績や飼料要求率の改善に注力したことに加え、大手企業が導入している種豚の遺伝的改良が進んだことなどから、2018年に生産量が増加に転じ、2019年もわずかな減少にとどまった。
 
 
(注1) 環境問題によるアグロスーパー社の農場の閉鎖の詳細については、「畜産の情報」2019年6月号「チリにおける養豚生産の拡大可能性」(https://www.alic.go.jp/content/001165332.pdf)を参照されたい。

輸出量は2年連続で過去最高を更新
 2019年の豚肉輸出量は、前年比15.7%増の17万2555トン(製品重量ベース)と、2年連続で過去最高を更新した(表2)。
 
 
 国別に見ると、最大の輸出先である中国向けは、同国で発生したASF(アフリカ豚熱)の影響に伴い、同国が輸入を拡大させていたことに加え、春節に向けた手当てにより2019年後半に特に引き合いが強まったことから、同93.1%増となった。また、単価は同79.3%高になっており、月別にみると年末に向けて大きく上昇したことから、中国が強気の買い付けをしていたことがうかがえる(図6)。
 
 
 一方、ロシア向けの輸出量は同42.4%減と大幅に減少した。この背景としては、2017年12月から18年10月にかけてロシアがそれまで主要輸入先国であったブラジルからの輸入を衛生上の問題により停止していたことから(注2)、一時的にチリ産豚肉への引き合いが強まったものの、再開後にブラジルからの輸入に一部戻ったためとみられる。
 また、ロインなどの高級部位を多く輸出している日本向けは輸出量・輸出額ともに大きな変動は見られず、依然として安定した輸出先国となっている。
(注2) ロシアのブラジル産牛・豚肉の輸入停止と再開の詳細については、海外情報「ロシア向け牛・豚肉の輸出停止に伴う現地の反応(ブラジル)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002090.html)、「ロシアがブラジルからの牛肉および豚肉の輸入を再開(ブラジル)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002325.html)を参照されたい。

輸入量はブラジル・米国がともに4万トンを上回る
 2019年の豚肉輸入量は、ブラジル・米国からの輸入量がともに4万トンを上回り、輸入量全体をけん引したことから、前年比33.9%増の9万8297トン(製品重量ベース)と、大幅に増加した(表3)。生産量が増えない中で、輸出量が増加したことから、国内需要を満たすために、輸入量が増加したものとみられる。
 
 
 同国ではブラジル産などの安価な輸入品を国内消費向けとして加工品に仕向け、高級部位を積極的に輸出していくという動きが進んでいるといわれている。中国向け輸出については比較的安価なものが多いものの、環境問題により生産拡大が限られることから、今後も輸出入においてこうした動きが継続するものとみられる。
 
(調査情報部 山口 真功)