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海外の需給動向【豚肉/米国】  畜産の情報  2020年4月号

2019年の豚肉輸出量、過去最高を更新

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12月の豚肉輸出量、単月ベースで過去最高
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2019年12月の豚肉輸出量は前年同月比29.4%増の30万8875トンと大幅に増加し、11月に記録したばかりの単月での過去最高記録をさらに上回る結果となった(図9、表5)。
 





 

 主要輸出先別について見ると、中国・香港向けは前年同月の6.7倍の増加となる10万3700トンと大幅な増加を見せ、メキシコ向けも同7.2%増の6万7834トンとかなりの程度増加した。一方、日本向けは同1.9%減の4万1256トンとわずかに減少し、韓国向け、カナダ向けもそれぞれ減少した。
 この結果、2019年通期の輸出量は、4年連続しての増加となる前年比7.6%増の286万7289トンとかなりの程度増加し、こちらも過去最高を更新した。
 主要輸出先別について見ると、首位のメキシコ向けが同11.7%減の70万7804トンとかなり大きく減少し、第2位の日本向けについても同5.7%減の52万1020トンとやや減少した。また、前年第3位だった韓国向けも同14.0%減の28万3413トンと大幅に減少し、第4位に順位を落とした。
 一方、中国・香港向けが同169.3%増の48万4031トンと大幅な増加を見せ第3位に浮上し、メキシコ・日本・韓国向けの減少を補って余る結果となった。
 2019年の輸出動向を月別に見ると、下半期に数量を大きく伸ばした結果となっているが、これをけん引したのはやはり中国・香港向けの増加によるところが大きい。USDAは、中国・香港向けが増加した理由について、米中貿易紛争による報復関税が存在していたものの、中国国内で発生したASF(アフリカ豚熱)による不足分について、競合するEU産豚肉相場が高騰し米国産の方が価格競争力があったため、(さらには、後述のとおり、過去最高の生産量を記録するなど供給余力もあった)米国産が同不足分を獲得できたとしている。
 実際に、米国産豚肉輸出量の国別シェアをみると、中国向けは2018年の6.7%から2019年は16.9%へと増加し、主要国の中では唯一シェアが拡大する結果となった。さらに、中国の輸入豚肉における国別シェアについて見ると、EU産が2018年の63.0%から2019年は63.2%と大きな変化がないのに対し、米国産は同7.2%から同12.3%へと増加している(注)
(注): 中国における豚肉輸入の状況については、「畜産の情報」2020年3月号 「豚飼養頭数が回復の兆しを見せるが、輸入量は増加の見通し」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001018.html)を参照されたい。
 このような状況について、米国食肉輸出連合会(USMEF)は次のような見解を示している。
 2019年12月の豚肉輸出量は単月としての記録を更新し、2019年の合計輸出量も過去最高を記録した。
 この堅調な輸出をけん引したのは中国・香港市場である。2019年における中国・香港の豚肉輸入が記録的な数量となる中、同国内の豚肉相場は11月にピークを迎えたが、12月においてもその需要は衰えることがなかった。米国産豚肉の輸出は、報復関税や非関税障壁が存在していたにもかかわらず堅調に推移した。米中経済貿易協定が良い方向に進み、2020年もこの好調な状況を維持できると期待している。
 メキシコ向けについては、12月は直近2年間で最も多い輸出量となったが、5月までは報復関税による影響があったため、年間合計では前年を下回った。
 日本向けは、2019年は前年を下回る結果となった。特にシーズンドポーク(豚肉調製品)は、関税面で有利であったEU産やカナダ産と競合した結果、輸出量が減少した。なお、2020年1月1日に日米貿易協定が発効し、豚肉および豚肉製品の関税は競合国と同水準に引き下げられている。

2019年の豚肉生産量も過去最高を記録
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2020年2月26日に公表した「Red meat and poultry production」によると、2019年の豚肉生産量は、2015年以降5年連続で前年を上回り、前年比5.0%増の1253万6000トンと過去最高を記録した。これは、堅調な国内および輸出需要、繁殖母豚飼養頭数および一腹当たり産子数の増加に伴う肥育豚と畜頭数の増加、中西部における新規食肉処理場の稼働など複数の要因によるものと考えられる。
 なお、USDAは2020年の生産量について、と畜頭数および1頭当たり枝肉重量が増加する見込みであることを踏まえ、前年比4.5%増の1310万2000トンへと増加する予測を示している。
 


 

(調査情報部 藤原 琢也)