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海外の需給動向【豚肉/中国】  畜産の情報  2020年3月号

豚飼養頭数が回復の兆しを見せるが、輸入量は増加の見通し

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豚飼養頭数は大幅に減少するも、繁殖雌豚頭数は前月に比べて増加に転じる
 中国国家統計局によると、2019年12月末の豚飼養頭数は前年同月比27.5%減の3億1041万頭であった。また、中国農業農村部によると、同年11月の総飼養頭数は同39.8%減、繁殖雌豚は同34.5%減と大幅に減少した。しかしながら、同年8月以降に実施している豚の増頭対策(注1)の効果もあり、11月の総飼養頭数は前月比2.0%増、繁殖雌豚頭数も同4.0%増と増加に転じており、回復の兆しがみえてきている(図7)。
 

 
(注1) 豚の増頭対策については、『畜産の情報』2019年12月号「豚肉生産量が減少し、輸入量が大幅に増加」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000871.html)を参照されたい。

豚肉生産量は下半期に大幅減少
 2019年の豚肉生産量は前年比21.3%減の4255万トン、同年12月の豚と畜頭数は、前年同月比36.5%減の1453万頭であった(図8、9)。生産量、豚と畜頭数ともに、下半期に大幅に減少していることがわかる。
 

           


 
 と畜頭数の月別推移をみると、例年、新年や春節休み(1月下旬〜2月上旬)の需要に向けて前年末のと畜頭数は増加する。2019年は7月以降減少傾向で推移していたが、同年11〜12月は増加に転じた(図9)。需要期に向けて、豚肉供給体制も回復してきている可能性がある。

一時的に需給が緩和したものの、豚肉小売価格が再び上昇
 増頭対策や備蓄豚肉の放出(注2)などによりわずかに需給が緩和したため、豚肉小売価格は、2019年11月後半から2020年1月前半にかけて下降していた。しかしながら、春節需要により再び価格が上昇し、同年1月は1キログラム当たり52.4元(836円:1元=15.95円)となった。また、生体出荷価格も同様の傾向を示し、同月は同35.4元(565円)となっている(図10)。 
 

 
 現地報道によると、政府は、12月中旬以降に中央備蓄豚肉を17万7000トン、地方備蓄豚肉を12万トン以上放出しており、春節後も中央備蓄豚肉の放出を続ける旨を公表している。今後の価格動向はこのような対策に左右されるが、1年間で約1150万トン減産したことを踏まえると、引き続き高水準で推移すると考えられている。
(注2) 備蓄豚肉の放出については、海外情報「備蓄豚肉を相次いで放出(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002579.html)を参照されたい。

豚肉輸入量は需要期に向けて大幅に増加
 豚肉輸入量も増加しており、2019年の輸入量は、前年同期比67.2%増の199万4189トンであった(表4)。
 

 
 月別の豚肉輸入量の推移をみると、需要期に向けて輸入量も増加し、それに伴い輸入価格も上昇していることがわかる(図11)。
 


 

 中国政府は、2019年12月6日に、米国からの豚肉の一部について輸入関税を免除する旨発表した。また、2020年1月15日には、米中経済貿易協定の第1段階の合意に至った(注3)。この中で、豚肉を含む農産物については、米国からの購入目標も定められていることから、今後は米国からの輸入がさらに増加すると考えられる。

 2019年6月から中国向け輸出を停止していたカナダについても、同年11月から輸入が再開しており、今後、輸入量はある程度回復すると考えられている(注4)。一方、EUでは、豚肉輸出量が高い水準で維持されるとみられている。このような状況から、2020年以降は、輸入先国やその輸入量が大きく変動する可能性が高い。

(注3) 米中経済貿易協定の第1段階の合意については、海外情報「米中経済貿易協定の第1段階の合意と農業団体の声明(米国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002600.html)を参照されたい。

(注4) 中国向けカナダ産豚肉をめぐる経緯については、2020年2月号「1〜10月の豚肉輸出量、中国向けが大幅に変動」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000954.html)を参照されたい。


 

(調査情報部 寺西 梨衣)