畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 1〜10月の豚肉輸出量は前年同期比増

海外の需給動向【豚肉/EU】  畜産の情報 2021年2月号

1〜10月の豚肉輸出量は前年同期比増

印刷ページ
豚肉生産量、5カ月ぶりに前年同月を下回る
 欧州委員会によると、2020年10月の豚肉生産量(EU27カ国)は、前年同月比2.1%減の198万4260トンとなった(図10)。と畜頭数は同3.1%減の2115万頭、1頭当たり枝肉重量は同1.0%増の92.9キログラムとなった。生産量は、5カ月ぶりに前年同月を下回ったものの、1〜10月の累計は、前年同期比0.3%増の1897万トンとなった。
 
 
 主要生産国を見ると、EU最大の生産国であるドイツ、第3位のフランス、第4位のポーランドでは、それぞれ同2.5%減(424万6000トン)、同0.3%減(183万4000トン)、同1.8%減(161万3000トン)と減少した一方で、第2位のスペイン、第5位のオランダでは、それぞれ同6.8%増(411万9000トン)、同1.0%増(135万6000トン)と増加した(表7)。
 
 
英国向けの輸出量は、前年同期比で減少
 欧州委員会によると、2020年1〜10月のEU域外向けの豚肉輸出量(枝肉重量ベース)は、前年同期比12.1%増の512万4845トンとなった。これを輸出先別に見ると、増加幅が最も大きかったのは中国向けで、同55.9%増の273万4559トンとなり、EU域外向け輸出量の53%を占めている(図11)。次いで、輸出量が多い英国向けは、同16.9%減の71万1838トンと大幅に減少した。また、日本向けも同23.9%減の30万1292トンと大幅に減少した。
 
 
 なお、英国とEUは12月24日に、BREXIT移行期間終了後の英EUの通商・協力について双方が合意した(注)。自由貿易協定(FTA)に関しては、原産地規則を満たすことを要件に、全品目で関税が撤廃され、関税割当も設けないこととなった一方で、英国がEU単一市場から外れるため、英国とEU間の貿易において衛生植物検疫(SPS)措置が適用される。英国農業園芸開発公社(AHDB)によると、貿易に関する手続きの増加によるコストの増加を、畜産物では5〜8%と予想している。

(注) 海外情報「BREXIT移行期間終了後の英EUの通商・協力について双方が合意」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002855.html)を参照されたい。

2030年にかけて、生産量は減少見込み
 欧州委員会は12月に、主要農畜産物の中期見通し「EU AGRICULTURAL OUTLOOK FOR MARKETS, AND INCOME AND ENVIRONMENT 2020―2030」を公表した。
 欧州委員会は、本見通しの中で、いくつかのEU加盟国の環境問題やアフリカ豚熱のリスクに加え、消費者の嗜好の変化から中期的にはEUの豚肉生産量が抑制されるとみている(図12)。
 
 
 豚肉の年間一人当たり消費量は、中国向け輸出の増加によりEU域内の豚枝肉卸売価格が上昇したことから、2019年に減少し始めた。同価格の上昇に伴い安価な代替品へ需要が移ることから、2030年の同消費量は、豚肉の代替として鶏肉が好まれるとみられ、対2020年比で1.4キログラム減少すると予想されている。
 なお、世界的な豚肉需給は、不確かな状況が続くものの、中国では、アフリカ豚熱の影響による供給不足や国内価格の上昇から、輸入が増加していた。しかし、中国国内の豚肉生産能力の改善は予想よりも早いため、2021年には中国からの需要は減少すると見込まれている。そして、養豚産業が完全に回復した場合には、2025年にはアフリカ豚熱発生前の生産量まで回復するとみられている。
 また、EUの豚肉輸出量は、2019〜20年にかけて、ピークを迎えると考えられており、その後、中国からの需要の減少傾向は継続するとしている。しかし、アフリカ豚熱から回復しない可能性のあるその他アジア諸国からの需要もあるため、2021年以降も2018年の水準をわずかに上回って推移すると見込まれる。
 
(調査情報部 小林 智也)