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海外情報 畜産の情報 2021年2月号

新型コロナウイルス感染症関連の情報

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調査情報部
 調査情報部では世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各国政府の対応など需給に影響を与えるタイムリーな情報を、海外情報としてホームページで随時掲載しております。
(掲載URL:https://www.alic.go.jp/topics/index_abr_2020.html
 ここでは、前月号でご紹介したもの以降、12月末までに掲載したものをまとめて紹介いたします。

【北 米】(令和2年12月24日付)食肉業界労働者のワクチン優先接種を推奨(米国)

 12月20日、疾病対策予防センター(CDC)の予防接種諮問委員会(ACIP)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン優先接種対象者を更新した(表)。すでに接種が開始されている医療関係者および長期療養施設入居者に次いで、75歳以上の人々と必要不可欠な業種の中でも3000万人の最前線の労働者(フェーズ1b)に、優先的にワクチン接種を行うことを推奨し、ワクチン接種計画とその実施に際し、この勧告を用いるよう連邦および州政府などに求めた。
 

 
 フェーズ1bに含まれる最前線の労働者には、消防士、警察官、教師などの教育関係者、米国郵便公社を含む配送業者、食料供給に携わる農家や食肉業界関係者および生鮮食品店に従事する労働者などが含まれている。12月4日に北米食肉協会(NAMI)は全国豚肉生産者協議会(NPPC)と全米肉用牛生産者・ 牛肉協会(NCBA)との連名で、CDCおよび各州知事宛に、食肉業界関係者が優先的にワクチン接種を行えるよう要望していたところであった。
 今回のCDCの発表を受けて、NAMIのジュリー・アナ・ポッツ会長兼CEOは、「必要不可欠な業種の最前線で懸命に米国の家庭に食肉を供給し続け、米国農業経済を支えてきた食肉業界の労働者のワクチン優先接種は、食肉業界に携わる労働者の安全性を長期的に確保するために必要であり、食肉業界の労働者が暮らしている農村地域などにもメリットが大きいと考えられる。また、食肉業界が所有する最先端の冷凍施設を低温保存が必要とされているワクチンの保管場所として提供することで、食肉業界がワクチン接種を支援する可能性についても検討している」と述べている。
 NAMIによれば、COVID-19が流行した今春以降、食肉業界が負担した感染予防対策費は、すでに15億ドル(1560億円:1米ドル=104円)に達している。そして、食肉業界に従事する労働者のための感染予防対策として、個人用保護具の数千万個分の配布、検温や健康観察の実施、仕切り版の設置や社会的距離を確保するための食肉処理場の改築、検査の実施、感染または濃厚接触者となった場合の給与補償、処理場内の頻回消毒や換気の強化などを行っている。また、このような感染予防対策により、一般の感染率よりも食肉業界に従事する労働者の感染率は8分の1未満となっている。さらに、最前線で働く食肉業界の労働者へワクチン接種を優先的に行うことは、産業界、労働組合、市民団体の主導者からも支持されており、海外でもワクチン配布計画の重要な検討事項として認識されていると述べている。

【国際調査グループ】

【欧 州】(令和2年12月2日付)英食肉加工協会、食肉処理場従業員へのCOVID−19ワクチンの優先接種を要請(英国)

 英国食肉加工協会(British Meat Processors Association)は11月20日、北アイルランド食肉輸出業者協会などと共同で、食肉処理場の従業員に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種の優先順位を医療従事者に次ぐ位置付けとすることを政府のワクチン・予防接種合同委員会に要請した。
 同協会のニック・アレンCEOは、「食品加工を行う上で、食肉処理場内の作業環境を低温に維持しなければならないことが課題となっている(注:換気による温度変化は受け入れ難いとの意味)。加えて、多くの食肉処理場は農村部に位置しているため、労働者は、宿泊施設や通勤手段を共有せざるを得ないことが多い。こうした要因が食肉処理場に基本的に存在しているため、従業員が新型コロナウイルスに感染するリスクが高くなっている。食肉処理場の従業員がワクチン接種を受けることができれば、地域社会に必要とされる安全や安心が確保されると同時に、必要不可欠な食品供給が円滑に継続することができる」とした。
 英国では9月から新型コロナウイルス感染者が再び増加しており、政府は11月5日からイングランド全域でロックダウン(都市封鎖)を行っているが、12月2日にこれを解除し、各地域の警戒レベルに応じた段階的な封鎖制度を再導入すると発表している。なお、政府は、医薬品の規制に関する法律を改正し、新型コロナウイルスのワクチン承認を迅速に行えるようにしたことから、ワクチンの早期接種開始への期待が高まっており、今回の要請はワクチン接種開始に乗り遅れまいとした業界の意向を示したものとなっている。
 なお、COVID-19による食肉産業への影響として、欧州委員会が10月に公表した食肉の短期的需給見通し(注)の中でも、COVID-19による食肉処理場の操業停止などの影響から、2020年上半期の牛肉生産量が前年同期より2.4%減少したことが報告されている。

(注) 海外情報「欧州委員会、食肉の短期的需給見通しを公表(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002794.html)を参照されたい。
 

【調査情報部 小林 智也】