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海外の需給動向【牛乳・乳製品/NZ】 畜産の情報 2021年9月号

生乳生産量および輸出は好調も、取引価格は低調

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2021/22年度の生乳生産量は、好調なスタート
 ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2021/22年度(6月〜翌5月)の幕開けとなる2021年6月の生乳生産量は、23万4423トン(前年同月比1.8%増)と前年同月をわずかに上回った(図24)。現地では、好調な輸出を背景に、ニュージーランド(NZ)乳業最大手のフォンテラ社が生産者支払乳価を、前年を上回る乳固形1キログラム当たり平均8NZドル(632円:1NZドル=79円)としたことを受けて、酪農家が増産意欲を高めているとされる。なお、7〜9月の天候についてNZ国立水・大気研究所(NIWA)は、気温・降雨量ともに、平年並みかそれ以上と予測しており、牧草地への好影響が期待される。
 

 また、米国農務省(USDA)は、7月16日に発表した「Dairy:World Markets and Trade」で、21年5月のNZの生乳生産量が前年同期より好調に推移していることを受け、21年(1〜12月)の同国の生乳生産量予測を、前回公表(20年12月18日)の2220万トンから2240万トンに1%上方修正した。USDAは、乳牛頭数の減少が予測されるものの、1頭当たり乳量が増加することでその影響は相殺されると予測している。

主要乳製品4品目、すべての輸出が増加
 ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2021年6月の主要乳製品4品目(全粉乳、脱脂粉乳、バターおよびバターオイル、チーズ)の輸出量は、全品目で前年同月を上回った(表12、図25)。
 



 品目別に見ると、全粉乳とチーズが前年同月に比べ大幅に増加した。全粉乳については、主な輸出先である中国向けが8万6109トン(前年同月比145.6%増)と大幅に増加した。なお、全粉乳輸出量全体に占める中国向けの割合も、前年同月の3割から5割へと大幅に拡大した。チーズについては、日本向けは3890トン(同30.4%減)と減少したものの、中国向けは9025トン(同18.7%増)、豪州向けは3901トン(同31.8%増)といずれも大幅に増加した。なお、チーズ輸出量全体に占める中国向けの割合は、前年同月から変わらず3割程度であった。
 Stats NZによると、これら乳製品などの一次産物の輸出が好調だった結果、21年6月の同国の総輸出額(全輸出品目の合計)は過去最高を記録した(60億NZドル、4740億円)(注1)。また、同月の国別輸出額については、最大の輸出先である中国が、総輸出額の3割(18億NZドル、1422億円)、乳製品輸出額の4割(7億300万NZドル、555憶3700万円)を占めている。

(注1)海外情報「2021年6月の牛肉輸出額、過去最高を記録(NZ)」
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003015.html)を参照されたい。


GDT、市場関係者の予測に反して下落
 2021年7月20日に開催されたグローバルデーリートレード(GDT:乳製品の国際価格の指標の一つであるフォンテラ社主催の電子オークション。月2回開催)の1トン当たり取引価格は、「予想されていた結果とは全く異なる」と報道される結果となった。フォンテラ社が、今回のオークションを前にGDTでの全粉乳販売量を1000トン削減すると発表したことから、市場関係者は小幅な価格上昇を予測していた。しかし、その予測に反して、全粉乳を含む3品目で前回に引き続き下落した(表13、図26)。
 



 脱脂粉乳および全粉乳については、通常通り北アジア(注2)が応札をけん引したものの、それぞれ前回比5.2%安の1トン当たり2971米ドル(33万3000円)および同3.8%安の同3730米ドル(41万8000円)となった。バターも、北アジアからの引き合いが強かったものの、応札量は前回より大幅に少なく、同0.8%安の同4419米ドル(49万5000円)となった。チーズは北アジアと東南アジアから同程度の応札があった結果、主要4品目の中で唯一、同1.3%高の同4022米ドル(45万円)となった。
 現地では、今回の下落が生産者支払乳価の引き下げにつながることを懸念する声もあるが、フォンテラ社は現地取材に対し、この下落は「予測の範囲内」とコメントし、現時点で乳価を引き下げる意向はないことを示唆するとともに、今回の下落には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)デルタ株の流行が影響を与えたとの見解を示している。なお、COVID-19デルタ株の流行が乳製品市場や価格に与える影響について現地専門家は、アジアの主要な乳製品市場に特に焦点を当てながら、今後数週間にわたって注視する必要があるとコメントしている。

(注2)ニュージーランド外務貿易省は、中国、日本、香港、韓国、台湾を北アジアとしている。
 
(調査情報部 阿南 小有里)