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海外の需給動向【牛肉/EU】 畜産の情報 2021年12月号

2021年9月の牛枝肉卸売価格、 前年同月をかなり大きく上回る

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2021年1〜7月の生産量、前年同期比1.2%減
 欧州委員会によると、2021年1〜7月までの牛肉生産量(EU27カ国)は、前年同期比1.2%減の385万トンとなった(表1)。これは、COVID-19の拡大に伴うと畜場の閉鎖などの影響で生産量が減少した前年同期をさらに下回っている。1〜7月の生産量の推移を見ると、1月は、アイルランドが前年同月比20.3%減と大幅に減少したことなどからEU全体で同14.1%減とかなり大きく減少した。アイルランドの大幅な減少について、同国では20年12月までの英国のEU離脱(Brexit)移行期間の終了後、両国間の国境管理の混乱が懸念されたことで、20年に駆け込み的な輸出が行われ、その反動が表れた形となったものである。一方、3〜5月は、前年同期の減産の反動で前年同月比増となり、5月までの累計は前年同期並みとなった。しかしながら、この数年上昇している飼料価格などを受けて飼養頭数は減少基調にあり(図1)、その後は前年同月を下回って推移したため、減少幅が拡大した。
 今後においては、この減産基調は継続するものの、飼料高による早期出荷や景気回復による外食需要などに伴いと畜頭数は増えることから、減少幅は縮小し、21年の牛肉生産量は前年比0.5%減となると見込まれている。





 

英国への冷蔵牛肉輸出は大幅に減少
 2021年1〜7月の冷蔵および冷凍牛肉の輸出量は前年同期比0.4%減の25万7373トンとわずかに減少した(表2)。冷凍牛肉の輸出量は同13.6%増とかなり大きく増加したものの、冷蔵牛肉の輸出量は、最大の輸出先である英国向けの大幅な減少により同9.4%減となったことが影響している。
 一方、21年1〜7月の冷蔵および冷凍牛肉の輸入量は同12.4%減とかなり大きく減少した(表3)。Brexitに伴い、英国から輸入される畜産物の動物検疫手続きの混乱から、英国からの冷蔵・冷凍牛肉いずれの輸入量も減少している。さらに、南米産牛肉の供給減(注1)により、南米地域からの輸入も伸び悩んでいる。
 

(注1)海外情報「アルゼンチン、牛肉輸出制限措置を追加緩和」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003065.html)を参照されたい。
 




 

牛枝肉卸売価格、上昇傾向が続く
 欧州委員会によると、牛枝肉卸売価格(注2)は、COVID-19の規制に伴う外食需要減少などの影響を大きく受け、2020年3月以降、急激に下落した(図2)。その後、徐々に外食需要が回復する中、生産量および輸入量が低迷していることから21年1月以降、一貫して上昇を続けている。21年9月の同価格は、100キログラム当たり394ユーロ(5万2796円、1ユーロ:134円)(注3)と前年同月比12.0%高となった。
 

(注2)参考価格(A/C/Z-R3)とは、EUにおける牛枝肉卸売価格の指標的な価格であり、A=若雄牛(12〜23カ月齢)、C=去勢牛(12カ月齢以上)、Z=若齢牛(8〜11カ月齢)のうち、R=枝肉の格付けが上(6段階評価の上から4番目)、3=脂肪の付着度合が平均的(5段階評価の上から3番目)なものの加重平均価格である。
 

(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の10月末TTS相場。
 


(調査情報部 国際調査グループ)