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海外の需給動向【牛肉/米国】 畜産の情報  2022年2月号

好調な輸出需要を背景に牛肉価格は引き続き高値で推移

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11月の牛肉生産量、前年同月比5.0%増
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が毎月更新する「Livestock & Meat Domestic Data」によると、2021年11月の牛肉生産量は107万9000トン(前年同月比5.0%増)と前年同月をやや上回った(図1)。これは、需要が堅調な中、同月の1頭当たり枝肉重量は前年同月比0.6%減となったものの、と畜場の稼働日数が前年同月より1日多く、と畜頭数が同5.6%増となったことが要因として挙げられる。



 

11月の牛肉卸売価格、引き続き高水準で推移  
 米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)によると、2021年11月の牛肉卸売価格(カットアウトバリュー)は100ポンド当たり283.5米ドル(1キログラム当たり725円:1米ドル=116円(注1))(前年同月比24.3%高)と引き続き高値で推移している(図2)。米国内の底堅い需要に加え、中国や日本、韓国向けの好調な輸出が価格を押し上げているとみられる。部位別では、特にかたばら(ブリスケット)、ともばら(ショートプレート)などがアジアからの好調な需要を受けて、高値となっている。
 このような状況下で米国大統領行政府は、直近の牛肉を含む食肉価格の高騰について、大手食肉パッカーを批判している(注2)。これに対して、食肉団体などは強く反発しており、今後の展開が注目されている。

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2021年12月末TTS相場。

(注2)海外情報「米政権、大手食肉会社の価格引き上げを批判(米国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003132.html)を参照されたい。
 



 

10月の牛肉輸出量、前年同月比9.0%増  
 USDA/ERSの「Livestock and Meat International Trade Data」によると、2021年10月の牛肉輸出量は12万7700トン(前年同月比9.0%増)と引き続き記録的なペースが続いており、同年1〜10月の累計では129万7800トン(前年同期比19.6%増)となった(表)。
 10月の牛肉輸出量を主要輸出先別に見ると、日本、韓国、中国向けは前年同月を上回った一方、その3カ国を除く主要輸出先向けは前年同月を下回った(図3)。 
 最大輸出先である日本向けは、外食需要の低迷から冷凍品が減少傾向にある一方、好調な小売需要に支えられた冷蔵品の伸びが大きく、全体では2万8200トン(前年同月比4.8%増)となった。2番手の韓国向けについては、米韓自由貿易協定に基づく関税引き下げが追い風となる中、日本と同様、冷凍品が伸び悩む一方、冷蔵品が大きく増加しており、全体では2万7800トン(同16.0%増)となった。この2大輸出先に接近する中国向けは、20年2月に発効した米中経済貿易協定第1段階合意以降、豪州産からの代替需要と現地の好調な食肉需要を背景に記録的な水準が続いており、2万1500トン(同2.4倍)と大幅に増加した。4番手のメキシコ向けは、前年同月が多かったことから、その反動で前年同月比ではかなり大きく減少したものの、1万1600トン(同13.4%減)と2021年1月以降はおおむね1万トン台で好調に推移している。





 

(調査情報部 河村 侑紀)