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海外需給【牛肉/EU】畜産の情報 2025年9月号

域内の需給ひっ迫で牛枝肉価格は記録的な高値が続く

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25年4月の牛肉生産量、前年同月比1.9%減
 欧州委員会によると、2025年4月の牛肉生産量(EU27カ国)は54万3040トン(前年同月比1.9%減)とわずかに減少した(図1)。これは、飼料価格の下落と堅調な牛肉価格による長期肥育の傾向から、1頭当たり枝肉重量が299.5キログラム(同1.5%増)とわずかに増加したものの、飼養頭数の減少により牛と畜頭数が181万3430頭(同3.3%減)とやや減少したことが影響した。英国農業園芸開発委員会(AHDB)によると、飼養頭数の減少は、環境規制の強化などによる長期的な要因に加えて、西欧における家畜疾病による繁殖成績の低下や子牛の死亡率の上昇などが影響したためとされている。
 欧州委員会は、25年7月29日に公表した農畜産物の短期的見通し(注1)の中で、25年の牛肉生産量を前年比1.3%減の656万9866トンと予測している。
 
(注1)海外情報「欧州委員会、食肉の短期的需給見通しを公表(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_004185.html)をご参照ください。
 



 
25年6月の枝肉卸売価格、前年同月比31.4%高
 2025年6月の牛枝肉平均卸売価格(注2)は、1キログラム当たり6.64ユーロ(1144円、1ユーロ:172.25円(注3)、前年同月比31.4%高)と記録的な高値が続いている(図2)。欧州委員会は、域内外での牛肉需要が堅調である一方、肥育牛の供給が限られていることが牛肉価格の上昇につながったとしている。現地報道は、肥育牛の供給が限られ、生体価格が高値で推移しているものの、小売販売も好調であることから引き合いは強く、パッカー(食肉処理・加工業者)は利益を圧縮してまで、販売価格を下げる意図はないことから、牛枝肉価格が高値で推移していると分析している。
 
(注2)若雄牛(A)、去勢牛(C)および若齢牛(Z)のうち枝肉の格付けが上(R)、枝肉の脂肪の付着度合が平均的(5段階中3)なものの平均価格(A/C/Z-R3)。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年7月末TTS相場。
 



 
25年1〜5月の牛肉輸出量は減少、輸入量は増加
 2025年1〜5月の牛肉輸出量は、18万8113トン(前年同期比7.8%減)とかなりの程度減少した(表1)。域内の牛肉価格が高値で推移していることから、冷凍牛肉の輸出が同12.0%減、冷蔵牛肉の輸出は5.9%減となった。
 また、同期間の牛肉輸入量は、域内需給のひっ迫や24年にアルゼンチンが牛肉輸出規制を緩和したことなどにより、冷凍牛肉の輸入量が同17.8%増と大幅に増加したため、11万435トン(同4.1%増)とやや増加した(表2)。
 





 
 
(調査情報部 藤岡 洋太)