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海外需給【牛肉/豪州】畜産の情報 2025年9月号

牛肉輸出量は過去最高を更新、米国・中国向け需要がけん引

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25年7月若齢牛価格、牧草肥育農家の需要増で急上昇
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2025年7月以降上昇傾向で推移しており、直近7月31日時点では1キログラム当たり814豪セント(800円:1豪ドル=98.22円(注1))と、3年ぶりに800セント台を突破した(図1)。
 この要因について現地アナリストは、主要肉用牛生産地域であるクイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州を中心とした広範囲にわたる降雨予測により、今後も牧草の確保が可能と見込んだ牧草肥育農家の肥育もと牛の需要が高まったことを挙げている(図2)。また、この価格上昇を支えているのは、米国向けの加工用牛肉(90CL:赤身率90%のひき肉)の堅調な需要とされており、7月第4週の同価格は、現地通貨建てとして歴史上初めて1キログラム当たり11豪ドル(1080円)を突破した。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年7月末TTS相場。
 






 
 
と畜頭数は堅調に推移、24/25年度は過去2番目の高水準
 2025年7月の週間成牛と畜頭数は、6月に引き続き高水準で推移しており、7月第4週は15万7840頭(前年同期比12.9%増)を記録した(図3)。MLAによると、24/25年度(7月〜翌6月)のと畜頭数(推計値)は879万7513頭と、大規模な干ばつの影響があった14/15年度に続く過去2番目に高い水準とされており、国際市場における堅調な需要がこの結果を生んでいると分析している。
 



 
25年6月の牛肉輸出量は最高値を記録、24/25年度も史上最高値
 豪州農林水産省(DAFF)によると、2025年6月の牛肉輸出量は13万4596トン(前年同月比26.8%増)と大幅に増加し、単月の数値として最高値を更新した(表)。また、24/25年度実績でも史上最高値となる144万4377トンを記録した。報道によると、その中でも穀物肥育牛肉が顕著な伸びを見せており、豪州のフィードロット事業の成長と米国の穀物肥育牛肉の生産減が今回の記録更新に寄与したとされている。
 



 
 6月の輸出量を輸出先別に見ると、米国と中国向けが顕著に増加した。米国向けは3万5343トン(同22.9%増)と大幅に増加しており、5月の輸出量と比較すると8%下回っているが、以前として高い水準にある。
 また、豪州時間8月1日(金)の朝、トランプ米大統領は貿易相手国・地域に新たな相互関税を課す大統領令を発令した。各国の関税率が引き上げられる中、豪州の関税率は10%に据え置かれたことから、引き続き需要は底堅いとみられている。
 中国向けは2万7265トン(同106.5%増)と、倍以上の増加となる最大の伸びを記録した。報道によると、米国産牛肉の中国市場へのアクセスの問題(注2)に加え、中豪FTAに基づくセーフガード発動基準が近づき、中国の輸入業者の駆け込み需要があったためとされている(セーフガードが発動した場合、最恵国待遇関税である12%が適用される)。そのような中、中国海関総署(GACC)は7月24日付で豪州産牛肉の輸入量がセーフガードの発動基準に達したと伝えており、今後の輸出への影響が懸念されている。
 
(注2)海外情報「輸出需要を背景に若齢牛価格は今期最高値を記録、雌牛と畜割合は上昇」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_003783.html)をご参照ください。
 
(調査情報部 国際調査グループ)