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海外需給【牛乳・乳製品/EU】畜産の情報 2025年10月号

25年上半期の乳製品輸出量、チーズと脱脂粉乳は前年同期をわずかに上回る

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25年上半期の生乳出荷量は前年同期比1.2%減
 欧州委員会によると、2025年6月の生乳出荷量(EU27カ国)は1265万トン(前年同月比0.1%減)となり、同年上半期(1〜6月)までの生乳出荷量は前年同期比1.2%減と前年同期をわずかに下回った(図1、表1)。この要因として、(1)堅調な牛肉価格や環境規制の強化などを背景とした乳用経産牛飼養頭数の減少、(2)うるう年であった前年に比べて少ない搾乳日数−が挙げられる。なお、第2四半期は、一部の加盟国を除いた飼料生産と放牧に適した天候の継続により、同0.1%増と前年同期並みとなった。同委員会は、25年7月29日に公表した農畜産物の短期的見通し(注1)の中で、良好な天候が継続する場合の25年の生乳出荷量を前年比0.2%増の前年並みと予測している。一方で、口蹄疫やブルータングなど家畜疾病の流行による生乳出荷量の低下も注視が必要としている。
 
(注1)海外情報「欧州委員会、生乳・乳製品の短期的需給見通しを公表(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_004186.html)をご参照ください。

 
 



 
 
25年7月の生乳取引価格は前年同月比14.1%高
 欧州委員会によると、2025年7月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり53.12ユーロ(1キログラム当たり91.9円:1ユーロ=172.97円(注2)、前年同月比14.1%高)と15カ月連続で前年同月を上回った(図2)。同価格は、高水準で推移するバターなどの乳製品価格にけん引される形で好調を維持している。同委員会は前述の見通しの中で、生乳価格が記録的な高水準で推移することにより、酪農家の収支改善につながると見込んでいる。
 
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年8月末TTS相場。
 



 
25年上半期の乳製品輸出量、チーズと脱脂粉乳は増加
 欧州委員会によると、2025年上半期(1〜6月)のEU域外向け乳製品輸出量は、チーズ(前年同期比1.2%増)と脱脂粉乳(同2.6%増)がわずかに増加した一方、バター(同2.1%減)と全粉乳(同22.9%減)はいずれも減少した(表2)。
 バターや全粉乳は、価格競争力の低下や植物性油脂添加粉乳との競合により輸出量が減少した。一方、脱脂粉乳は、インドネシア、フィリピン、サウジアラビア、ベトナム向けなどの輸出量が前年から大きく回復するなど、国内生産の拡大を図るアルジェリア向け輸出の大幅減を補うための輸出先の多角化が寄与している。現地報道によると、主要輸出先であるサウジアラビアでは、人口増加を背景に育児用粉乳の需要が増加し、また、同国政府が食料安全保障に向け、高品質な輸入粉乳の安定的な確保を図っているとされる。
 



 
(調査情報部 渡辺 淳一)