畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > バイオガスプラントの導入による家畜排せつ物の効率的な利用に向けて

話題 畜産の情報 2026年5月号

バイオガスプラントの導入による家畜排せつ物の効率的な利用に向けて

印刷ページ

Anaergia Japan株式会社

1 はじめに

 Anaergia(以下「アナージア」という)は、有機性廃棄物を再生可能エネルギー、バイオメタン、きれいな水、有機肥料などの有用資源へと転換するグローバルなクリーンテック企業である。
 30年にわたり欧州と北米を中心に1750件以上のバイオガスプラントの導入実績を有し、バイオガスプラントに投入する原料の選別システム、メタン発酵システム、バイオ液肥製造システム、バイオガスアップグレードシステムに至るまで、バイオガスシステムを中心としたプラントメーカーとして、廃棄物を資源化するための統合ソリューションを世界各国で提供している(写真1)。本社はカナダにあり、2025年3月に日本子会社のAnaergia Japan株式会社(以下「アナージアジャパン」という)を設立した。
 本稿では、バイオガスプラントについて紹介するとともに、日本においてバイオガスプラント導入の検討を行う方々が直面している課題と解決策などについて説明する。

2 バイオガスプラントの仕組みとそのメリット

 アナージアの主力事業であるバイオガスプラントシステムとは、家畜排せつ物(牛ふん尿、豚ふん尿、鶏ふん)、食品廃棄物、汚泥などの有機性廃棄物を原料にし、嫌気性発酵(メタン発酵)を行うことでバイオガスを安定的に生成し、エネルギー回収と優良な肥料の生産を同時に行うことができるシステムである。
 このシステムを導入するメリットは、単なる廃棄物処理にとどまらず、悪臭・害虫対策による環境改善、エネルギーの地産地消およびSDGs(持続可能な開発目標)・脱炭素経営への貢献を同時に実現できるという点である。また、生成したバイオガスには、電気エネルギー(発電)や熱エネルギー(ボイラー使用)の生成およびその利用といった幅広い用途がある上に、通常「消化液」と呼ばれる発酵を通じて生成される液体は、液肥として耕作地への利用が可能である。
 日本では、かぶとバイオファーム発電所(岡山県笠岡市、2023年運転開始)およびトーヨーバイオメタンガス発電所(兵庫県養父市、2019年運転開始)が当社のバイオガスプラントを導入し、稼働している(写真2)。

 

3 バイオガスプラントの普及における課題と解決策

 海外、特に欧州では、家畜排せつ物などの有機性廃棄物処理と再生可能エネルギー生成・利用の両立を目的に、バイオガスプラントの導入が急速に進んでいる。一方、日本でも200件以上のバイオガスプラントが導入されているものの、その普及は欧州ほど順調とは言えない。そこには、日本特有の農業構造と運用環境に起因する複合的な課題があると考え、アナージアジャパンでは、それぞれに対応した解決策を提案している。
 
(1)ユーザーが抱える導入前の不安や悩み
 バイオガスプラントは、臭気の軽減、ふん尿処理の省力化、CO2削減、地域のエネルギー循環など多くのメリットを持つ。しかし、畜産農家、農業協同組合、食品加工会社、食品廃棄物の処理会社などが導入を検討する際に、以下のような課題に直面することも少なくない。
● 誰に相談すれば良いのか分からない。
● 建設コストの見当がつかず、高額な印象がある。
● 運転管理が難しそう。
● メタン発酵槽から出る消化液の使い道が分からない。
 つまり、日本では「技術の問題」よりも、「導入プロセスの不透明さ」がバイオガスプラント普及の障壁となっており、プラントを熟知するプラントメーカー自らがバイオガスプラント導入を検討する方々に対して、それぞれの課題やニーズに応じた説明を行うことが必要だと考える。
 アナージアジャパンは、バイオガスプラントの仕組みや導入事例の説明から始まり、資金調達支援、許認可申請書類作成までを含めた導入支援プログラムを提供している。単なる設備販売ではなく、「ユーザーが導入できる状態を作る」ことに重きを置いている。
 
(2)バイオガスプラント導入における課題
 ア 導入するメリットがあるのか?
 バイオガスプラント導入を検討する畜産農家は、飼養頭数が500頭(1日当たりのふん尿量は約30トン)以上の飼養規模が一般的であるが、500〜1000頭程度の経営規模である場合、初期投資コストの大きさや運用・メンテナンスの容易性や人的リソースが足りるのかについて懸念する導入検討者が多いと認識している。
 日々の営業活動を通じて、小型で、かつ、メンテナンスを含め運用が容易なプラントの提案が、プラントメーカーである当社にも強く求められているところである。
 
 イ 消化液をどうするか?
 日本のバイオガスプラント普及を語る上で避けて通れないのが、消化液の扱いである。欧州では、「家畜排せつ物 → バイオガス生成 → 消化液散布 → 飼料作物栽培 → 家畜」という農業循環が確立している。北海道はこれに近く、広大な農地を背景に130件以上のプラントが稼働している。しかし、北海道以外の地域では状況が異なり、散布可能な農地の不足(散布可能な量を上回る消化液の生産)や域内飼料生産の循環が未確立といった状況も多く、プラントの稼働制約が、「発酵」ではなく「液肥処理」で決まるケースが少なくない。高額な排水処理設備を導入するか、稼働率を下げるかという選択を迫られる例もある。
 この場合、肥料としての価値を高めるとともに、散布にかかる運転コストをいかに削減できるかについて検討する必要がある。
 アナージアジャパンでは、こうした課題の解決に資する日本の条件に適したプラント設計を進め、昨年10月より二つの新システムを展開している。
 
 (ア)パッケージ型バイオガスシステム
    「SMART-D」
 パッケージ型バイオガスシステムは、牛ふん尿を原料として利用するバイオガスシステムで、500頭、700頭、2000頭用の3タイプをパッケージ化しており、乳用牛・肉用牛を飼養する畜産農家が導入しやすいプラントで、豚ふん尿および鶏ふんのそれぞれに適したパッケージ化も可能である(写真3)。
 設計および部品を共通化・標準化することで、低コスト・短納期、運転の簡素化、保守性の向上といったメリットを提供する。また、ガス精製ユニットやポンプステーションをコンテナ化するアナージア独自の「PROCONテクノロジー」により、現場での建設・建築コストを最小限に抑えることができる(写真4)。
 


 
 (イ)消化液濃縮・バイオ液肥製造システム
    「D-UF+RO」
 消化液濃縮・バイオ液肥製造システムは、バイオガスプラントの発酵槽から排出される消化液を濃縮することにより、肥料としての価値を高めるとともに散布にかかる運転コストを削減する(写真5)。アナージアの脱水技術とろ過技術を組み合わせることで、品質の高いバイオ液肥を生成できることに加えて、ろ過後の水を再びプラントに循環して利用でき、厳しい排水基準があるエリアでも排水できる。また、濃縮して消化液量を低減することは、貯留タンク縮小化、散布労力の低減につながる。消化液を、「処理対象物」から「高付加価値商品」へと転換できることが、このシステムの特長である。
 
 
 
(3)バイオガスプラントの運用と管理
 日本のバイオガスプラントの市場規模は、今のところ欧州ほど大きくないため、専門メーカーが少なく、価格や技術もさまざまであり、以下のような問題が発生するケースも散見されている。
● メタン発酵装置単体ではなく、付帯設備も含めたトータルでのエンジニアリングができる
   メーカーが少ない。
● ポンプの詰まりや機器トラブルにより、プラントが停止することがある。
● 発酵槽内の固形物の蓄積、発酵管理がうまくいかないなどの理由により、運転が停止する
     ことがある。
● 稼働開始後のアフターサポートが十分でなく、メンテナンスで苦労している。
● 計画段階で想定した原料のガス発生量および発電効率が、実際の運用条件や原料性状の
     変動により、計画値通りに維持できていない。
 これらの問題の解決には、バイオガスプラントは機械ではなく“運用システム”であることを認識した上で、周辺設備・物流・農業運用まで含めた事前のプロセス設計とO&M(オペレーション〈運用〉とメンテナンス〈管理〉)を行うことが不可欠である(写真6、7)。




4 おわりに〜今後の展開〜

 これまで説明した通り、バイオガスプラントは臭気の軽減、ふん尿処理の省力化、CO2削減、地域のエネルギー循環などといった点でメリットがある一方、日本国内での普及に当たっては、いくつかの課題がある。これらの課題については、消化液の安定的な利用方法の確立や発電効率の安定化に向けた運転管理・メンテナンスといった対策が考えられ、バイオガスプラントの導入を検討する場合には、このような点についても事前に考慮しておくことが、円滑な導入とその後の適切な運用・管理につながると考える。
 バイオガスプラント導入の検討段階の支援から、日本の各地域の畜産環境に適合したバイオガスモデルの導入および稼働後のメンテンナンス支援までユーザーに伴走することで、家畜ふん尿の効率的な利用による地域資源循環システムの普及に貢献するとともに、国内の農畜産業の発展にも寄与してまいりたい。