今回公表されたABARESの中期見通しでは、世界的な貿易政策や地政学的状況の継続的かつ急速な変化を含め、世界市場には依然として大きな不確実性が存在するとして、世界経済の成長率は2031年まで3%前後で推移すると想定している。なお、例年公表されている中期見通しの前提となる気候条件シナリオは公表されておらず、26/27年度は豪州南部全域で乾燥との短期的な見通しのみが示された。
(1)肉用牛・牛肉
ア 26/27年度の牛飼養頭数はわずかに減少
豪州の牛飼養頭数は、放牧主体であることから、干ばつなどの発生による飼養環境の悪化や飼料確保のためのコスト上昇が見込まれると
淘汰が進むなど、気象条件に大きく左右される(写真4)。長期的な飼養頭数の推移を見ると、2019/20年度(20年6月末時点)は、主要畜産生産地域の豪州東部で20年に一度とされる深刻な干ばつが発生し、過去30年間で最低の2534万頭(前年度比4.9%減)にまで落ち込んだ(図1)。その後は3年連続でラニーニャ現象が発生し、降雨に恵まれたことで牛群再構築が進展し、23/24年度には2821万頭(同1.4%増)にまで拡大した。
翌24/25年度は、米国の牛群再構築の進展による米国産牛肉供給量の減少で豪州産牛肉の需要が増加したためと畜が進み、2806万頭(同0.5%減)に減少した。この傾向は25/26年度以降も続き、25/26年度には2726万頭(同2.9%減)、26/27年度には2698万頭(同1.0%減)といずれもわずかに減少すると見込まれている。
イ 26/27年度のと畜頭数は減少も、牛肉生産量は高水準を維持
2025/26年度は、米国国内での牛肉供給のひっ迫を受け、米国に加え、米国産牛肉が席巻してきたアジア市場においても、豪州産牛肉の需要が高まったことから、と畜頭数は954万頭(前年度比2.8%増)、牛肉生産量は過去最高の282万トン(同2.2%増)といずれも増加が見込まれている(図2)。
26/27年度は、牛飼養頭数の減少により、と畜頭数は887万頭(同7.0%減)、牛肉生産量は264万トン(同6.5%減)といずれも減少するものの、牛肉生産量は過去10年平均を18%上回る高水準を維持すると見込まれている。
ウ 26/27年度の肉用牛生体取引価格は下落
2025/26年度の肉用牛生体取引価格は、堅調な輸出価格が食肉加工業者の需要をけん引して家畜市場の取引価格を押し上げたことで、1キログラム当たり775豪セント(866円、前年度比27.1%高)と過去10年平均の同568豪セント(634円)を大幅に上回ると見込まれている(図3)。
一方、26/27年度は、中国が26年1月から輸入牛肉に対するセーフガード措置を開始
(注2)したことで、同国向け豪州産牛肉の輸出量が減少し、肉用牛の需要が減少するため、同価格は同705豪セント(787円、同9.1%安)と見込まれている。
(注2)海外情報「中国の新たなセーフガード措置に対する豪州の反応(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_004262.html)をご参照ください。
エ 26/27年度の牛肉輸出量は減少も高水準を維持
2025/26年度の牛肉輸出量は、米国の旺盛な需要などにけん引された牛肉生産量の増加から、過去最高の161万1626トン(前年度比5.0%増)とやや増加すると見込まれている(図4)。
一方、26/27年度の牛肉輸出量は、牛飼養頭数の減少による牛肉生産量の減少から、148万3332トン(同8.0%減)とかなりの程度減少するが、引き続き高水準を維持すると見込まれている。
ABARESは、主要牛肉輸出先である米国の牛群は、25年に中西部広域での干ばつの継続と米国内での牛肉価格の高騰による肥育牛の出荷増加を受けて大きく縮小したとしている。このため、同国の牛肉生産量と輸出量は26年から27年にかけて減少し、中期的には豪州の牛肉産業に輸出機会をもたらし続けるとしている。一方、1)主要市場である中国がセーフガード措置を実施したことで豪州産牛肉の需要が減退すること、2)豪ドル高が進行していること−などから、輸出価格は下落すると見込まれている。
オ 26/27年度の生体牛輸出頭数はわずかに増加
2025/26年度の生体牛(と畜場直行牛および肥育用もと牛)輸出頭数は、輸出需要を背景としたフィードロットや食肉加工業者からの旺盛な国内需要を受け、66万頭(前年度比3.9%減)とやや減少すると見込まれている(図5)。
26/27年度は、主要な輸出先であるインドネシアに近い豪州北部で、近年、牛飼養頭数が増加していることなどから、67万頭(同2.1%増)とわずかに増加すると見込まれている。
(2)酪農・乳製品
ア 26/27年度の乳用経産牛頭数および生乳生産量はともに減少
2025/26年度の乳用経産牛飼養頭数は、酪農家戸数の継続的な減少に加え、豪州南部での乾燥による牧草の生育不良と牛肉価格の高騰により乳用牛の淘汰が進んだことで、127万頭(前年度比2.2%減)とわずかな減少が見込まれている(図6)。これにより生乳生産量も、815万キロリットル(同2.0%減)とわずかな減少が見込まれている(図7)。
26/27年度も酪農家の減少が続くことなどから、乳用経産牛飼養頭数は126万頭(同1.3%減)、生乳生産量は806万キロリットル(同1.1%減)といずれもわずかに減少し、それ以降も減少傾向が継続すると見込まれている。
イ 26/27年度の乳製品輸出量は減少
2025/26年度の乳製品輸出量は、国内の生乳生産量が減少する中、牛乳向け需要が堅調に推移し、加工向けが減少することから、主要4品目すべてで減少が見込まれている(図8)。
26/27年度以降もこの傾向は継続するため、乳製品輸出量は減少傾向で推移すると見込まれている。
ウ 26/27年度の乳製品国際価格は上昇
豪州の生産者乳価にも影響する乳製品国際価格は、世界の需給状況を反映して大きな変動を繰り返している。2025/26年度は、米国、EU、ニュージーランド(NZ)の生乳生産量増加により世界的な供給量が増加する一方、中国国内の生乳生産量の増加で乳製品需要が鈍化するなど、乳製品国際価格は下落すると見込まれている。
26/27年度は、米国では引き続き生乳生産量が増加する一方、EUとNZでは減少が見込まれ、全体として乳製品需給が緩和するため、乳製品国際価格は上昇すると見込まれている。乳製品国際価格に影響する需要に関しては、引き続きインドネシアなどの東南アジアを中心に増加し、乳製品需要の伸びが供給量の伸びを上回ると見込まれている(図9)。
エ 26/27年度の生産者乳価は下落
2025/26年度の生産者乳価は、国内生乳生産量が減少する中、加工業者の原料乳調達競争が激化するため、1リットル当たり73.5豪セント(82円、前年度比2.6%高)とわずかな上昇が見込まれており、過去10年平均の同56.6豪セント(63円)を大幅に上回る水準にある(図10)。
26/27年度は、加工業者が高水準を維持する乳価の見直しを行うことから、同71.1豪セント(79円、同3.3%安)とやや下落すると見込まれている。