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タイのタピオカでん粉をめぐる最近の事情

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最終更新日:2010年5月10日

タイのタピオカでん粉をめぐる最近の事情
〜初めてのコナカイガラムシ被害により生産が大幅減、対策に取り組む〜

2010年4月

調査情報部調査課 係長 前田 昌宏

シンガポール駐在員事務所 吉村  力  

はじめに

 2009年に我が国が輸入した天然でん粉16万7000トンのうち、約8割に相当する13万7000トンがタピオカでん粉であり、そのほとんどがタイ産となっている。また、化工でん粉についても、タイは最大の輸入先国となっており、2009年の化工でん粉輸入量40万9000トンのうち、同国からの輸入は26万トンと、63%のシェアを占めている。
 
 タピオカでん粉は、化工でん粉向けも含めて食品、工業用など幅広く使用されていることから、タイのタピオカでん粉生産は、我が国のでん粉需給に大きな影響を与えるものとなっている。現在、同国では害虫によって原料となるキャッサバに大きな被害が生じているため、減産が見込まれ、タピオカでん粉価格も上昇傾向で推移している。
 
 そこで、本稿では、同国におけるタピオカでん粉をめぐる最近の事情について、行政関係者およびタピオカでん粉の主要生産地であるナコンラーチャーシーマー県(以下「ナ県」という。)の研究者、でん粉工場、農家などからの聞き取りなどを基に報告する。なお、本稿中の年度は10〜9月である。
 
資料:タイ農業協同組合省農業経済局<DIV><STRONG>図1 タイの地域区分など</STRONG></DIV>
資料:タイ農業協同組合省農業経済局
図1 タイの地域区分など

1.タイにおけるタピオカでん粉を含むタピオカ製品の概要 〜大部分は輸出向け〜

 まずはタイにおけるタピオカ製品の生産、流通などについて概説したい。
 
 なお、原料となるキャッサバ生産の概要に関しては、でん粉情報2009年12月号「タイのキャッサバをめぐる事情〜担保融資制度から価格保証制度へ〜」に詳述してあるので参照されたい。
 
 キャッサバを原料としたタピオカ製品には大別して、(1)皮付きのままでキャッサバをチョッパーで破砕し、天日乾燥させたチップ、(2)チップをさらに粉砕して圧縮加工したペレット、(3)キャッサバを洗浄・剥皮した後磨砕し、遠心ふるいでかすを除去後、水洗、精製、脱水、乾燥して得られる天然でん粉(native starch)、(4)天然でん粉を酸などの薬品や熱などによって変性させた化工でん粉(modified starch)―がある。
 
 
 
キャッサバおよびタピオカ製品の流通については、図4のとおりとなっている。キャッサバは農家から直接タピオカ製品工場へ納入される場合と集荷業者を経由する場合がある。
 
 タピオカ製品については、中小規模の工場は卸売業者に販売し、卸売業者が国内市場、または輸出業者に販売することが多い。対して大規模工場の多くは、国内卸売業者および輸出業者の機能も兼ねている。
資料:聞き取り調査により機構作成<DIV><STRONG>図4 キャッサバおよびタピオカ製品の流通</STRONG></DIV>
資料:聞き取り調査により機構作成
図4 キャッサバおよびタピオカ製品の流通
なお、チップについては、ペレットのほか、天然でん粉の原料としても使用されている。また、化工でん粉工場の多くは、天然でん粉を購入し原料として使用しているが、一部の大規模工場はキャッサバから天然でん粉を生産し、さらに化工でん粉に加工する一貫した生産設備を所有している。
 
 
 キャッサバの製品別仕向け割合および各タピオカ製品の国内消費と輸出仕向けの割合を見ると、図5のとおりである。キャッサバベースで約45%がチップおよびペレットに加工され、そのうちの80%が海外へ輸出されている。
 
 チップ輸出のほとんどが中国向けとなっており、中国では工業用および飲料用のアルコール原料として利用されている。キャッサバの残り55%は、タピオカでん粉に加工され、国内消費の割合は35%、輸出向けは65%となっている。タピオカでん粉の主な輸出先としては、中国、台湾、インドネシア、マレーシア、日本となっている。化工でん粉については、我が国が最大の輸出先国である。
 
 このようにタピオカ製品のタイ国内での需要はキャッサバベースで生産量の3割弱となっており、輸出が大半を占めている。
 
出所:タイタピオカ取引業者協会<DIV><STRONG>図5 キャッサバの仕向状況(2008年度)</STRONG></DIV>
出所:タイタピオカ取引業者協会
図5 キャッサバの仕向状況(2008年度)
 タイ国内でのタピオカでん粉の用途は、糖化用、グルタミン酸調味料や甘味料などの食品用のほか、製紙、繊維、のり、医薬品など多岐にわたっている。農業大学の研究者によると、高付加価値化を目的として、タピオカでん粉から脂肪分や食物繊維の代替品を生産する試みも一部で進められている。
 
 また、キャッサバを原料としたバイオプラスチックについても研究が進められている。現在、世界的に環境保全への意識が高まっていることから、将来的に有望な市場として関心が高まっている。
 
 なお、キャッサバのエタノール仕向けについては、タイ農業協同組合省農業経済局(以下「農業経済局」という。)によると、2008年度におけるキャッサバ生産量2516万トンのうち0.2%の5万トンと、現在のところわずかである。しかしながら、タイ政府は輸入エネルギーによる依存率が約6割となっている状態を改善しようと、バイオエタノールやバイオディーゼルなどの再生可能エネルギーの導入を継続的に推進している。
 
 タイにおけるエタノール生産の原料は、現在のところ砂糖生産の副産物である糖みつが主となっているが、砂糖の生産状況から、糖みつの供給量の急激な増加は考えにくい。そのため、今回聞き取りを行ったエネルギー省の関係者は、今後はキャッサバチップがエタノール原料として注目されるとみている。
 
 これは、前述した中国への輸出に依存している現在の状態から脱却し、キャッサバチップの国内需要増を推進することにもなる。なお、タイのエタノール生産に関する詳細については、次回以降紹介する予定である。
 

2.キャッサバへのコナカイガラムシ被害とその対策

(1) 被害の状況 〜キャッサバ生産量は当初見込みより2割以上の減少〜

 タピオカ製品の原料となるキャッサバは、タイでは通年収穫される。植え付けからおおよそ1年ほどで収穫を迎える。収穫のピークとなる11〜3月で、年間生産量の概ね65%が収穫される。
 
 
 タイの農地開発は、ほぼ限界まで進んでおり、これ以上の面積拡大は難しい。そのため、タイ政府は、将来的にキャッサバの収穫面積は現状と同程度の740万ライ(約118万ヘクタール、1ライ=0.16ヘクタール)のまま推移すると見込んだ上で、増産対策として、単収の向上を奨励してきた。
 
 具体的な目標としては、2014年までに1ライ当たり4.7トンの単収の実現を掲げている。この目標は、適正な施肥、管理を行った場合に1ライ当たり10トン程度の収穫量が得られた試験結果を踏まえると、十分達成可能であると考えられている。
 
 農家に対しては、土壌を深耕し、キャッサバが根を張りやすい状態にした上で、有機肥料などの施肥を適正に行うことを指導している。
 
 単収向上を図ってきたことやキャッサバの収益性が良好であったことなどから、2007年度までキャッサバの収穫面積および生産量は表1のとおり増加傾向で推移してきた。
 
 しかし2008年度は、作付面積が前年度比0.8%増の740万ライ(約118万ヘクタール)と微増したものの、生産量は天候に恵まれなかったことが影響し、同6.5%減の2516万トンであった。また、農家販売価格については、世界的な穀物価格高騰が影響して過去最高の水準となるキログラム当たり1.73バーツを記録した。
 
 2009年度については、当初、前年度に農家販売価格が良好で農家の作付け意欲が向上したことを反映して、収穫面積(前年比12.1%増の829万ライ)、単収(同6.7%増のライ当たり3,629キログラム)とも増加し、生産量は同19.6%増の3008万トンと増加に転じると見込まれていた。
 
 しかしながら、8月には生産量見込み2776万トンと下方修正され、さらに2010年2月時点の農業経済局の見込みでは、収穫面積は前年比9.9%減の747万ライ(当初の見込みから82万ライ減)、単収は同15.4%減のライ当たり3,108キログラム(同521キログラム減)、生産量は同22.8%減の2322万6000トン(同686万トン2000トン減)にまで大きく下方修正された。一部では、さらに低い生産量を予測する現地報道も見られる。
 
 
 
 この下方修正の要因となっているが、キャッサバの害虫「コナカイガラムシ(cassava mealybug)」による被害である。
 
 コナカイガラムシは、主にキャッサバの茎葉の部分に付着し、養分を吸い取ってしまうため、地中のいもは栄養が足りずに肥大が阻害され、結果として単収が減少してしまう。直接地中のいもに対して被害を与えるわけではないが、生育初期に被害を受けてしまうとほとんどいもが育たず、収穫量が大きく減少するため、被害は大きいものとなる。
 
 ナイジェリアなどアフリカで1970〜80年代に大量発生し、キャッサバ生産に長期間にわたって多大な被害を与えたことで知られ、タイでは2009年4月から5月にかけて初めて発生が確認された。
 
<DIV><STRONG>図7 コナカイガラムシ</STRONG></DIV>
図7 コナカイガラムシ
 今回、コナカイガラムシの被害にあっている畑を調査することができた。図8は通常のキャッサバ畑である。一方、図9が被害のあったキャッサバ畑である。葉が変色し、収縮して丸まっていることが確認できる。
 
 コナカイガラムシ自体は非常に小さく、1ミリメートル程度であった。図10に見える白い粉のようなものはコナカイガラムシの卵である。現地の関係者によると、コナカイガラムシの繁殖サイクルは30日で、1匹が約300匹に増殖してしまう。
 
 コナカイガラムシの排せつ物には糖分が多く含まれており、これに引き寄せられるアリや風などによって媒介され拡散する。この畑は幸いにも植付けから9カ月ほどのものであったため、すぐにいもを収穫して出荷した後、焼き畑にする予定とのことであった。
 
 また、今年度は干ばつ気味の気候であることも、乾燥を好むコナカイガラムシの被害を悪化させている。逆に雨季には、ある程度死滅することが期待されている。
 
 
 
 このようなコナカイガラムシの被害によって、生産量が減少しているため、キャッサバ市場価格は上昇傾向にある。タイの価格保証制度における指標価格(キャッサバ市場価格に基づき、月2回(15日ごと)算定される価格)は、2010年2月16日時点で、2009年10月1日時点と比較して、32.1%高のキログラム当たり1.85バーツとなっている。
 
 2009年9月ごろまでは、キャッサバ価格が、同1.1〜1.2バーツと低迷していることが問題になっていたが、状況は一変し、現在の価格は、2008年の世界的な穀物価格高騰時に匹敵する水準である。
資料:タイ農業協同組合省農業経済局注:2009年10月以降の値は指標価格<DIV><STRONG>図11 キャッサバ農家販売価格の推移</STRONG></DIV>
資料:タイ農業協同組合省農業経済局
注:2009年10月以降の値は指標価格
図11 キャッサバ農家販売価格の推移
 聞き取りによると、タピオカでん粉の生産コストの3/4程度は原料費が占めている。このため、タピオカでん粉価格も同様に上昇しており、LMC社によると1月および2月の平均価格(FOB)は、1キログラム当たり0.41米ドルと前年同期比57.7%高となっている。

(2) タイにおけるコナカイガラムシ対策 〜薬剤の使用、管理の徹底、天敵の導入の3本柱〜

このように甚大な被害を与えているコナカイガラムシへの対策として、タイ政府が取り組んでいるのは以下の3つの方法である。
 
(2)-1 薬剤の使用による耐性強化
 
 キャッサバの植付けは、25センチほどの茎を畑に挿すだけの簡単なものである。コナカイガラムシ対策のため、植付けに当たっては、茎を薬剤溶液(薬剤として殺虫作用を持つチアメトキサム(thiamethoxam)など)に5〜10分ほど浸してから行うよう指導している。この方法により、薬液を散布した場合よりも防虫効果が持続し、約1カ月の間はコナカイガラムシに対して耐性を持つことが確認されている(散布した場合は2週間程度)。
 
 生育初期にコナカイガラムシが付着した場合は、キャッサバの塊根部はほとんど肥大せず、被害が大きくなることから、この方法は生育初期の対策として有効であるとされている。
 
(2)-2 農家による管理および確認の徹底
 
 (2)-1を実施した上で、農家に対してこまめにキャッサバの状態を確認することを求めている。キャッサバ畑においてコナカイガラムシの付着を確認した場合は、作付け後1〜4カ月であれば当該キャッサバを処分し、4〜8カ月であれば、薬剤散布による拡散防止、大発生している場合は、ただちに塊根部を収穫して、地表部分を全て処分するよう指導している。
 
(2)-3 天敵の導入
 
 コナカイガラムシがアフリカで大発生した際に、駆除に効果を上げた天敵の寄生バチ(Anagyrus lopezi、図12)の導入も進められている。この寄生バチは、一日当たり20〜30匹のコナカイガラムシを捕食するとともに、15〜20匹に卵を生みつけて寄生する。
 
 西アフリカのベナンから輸入された後、試験場段階では効果が確認されており、現在は実用化に向けて繁殖させているところである。
 
 
 タイ政府は、上記(2)-1および(2)-2の対策を農家に周知、徹底させるための費用として、2009年度に約6000万バーツ(約1億6800万円)の予算を計上した。
 
  一部の農家が対応を怠ってしまうと、その畑が害虫の避難場所となり、対策の効果が薄れるため、確実な実施を呼び掛けている。
 
<DIV><STRONG>図12 コナカイガラムシの天敵の寄生バチ Anagyrus lopezi</STRONG></DIV>
図12 コナカイガラムシの天敵の寄生バチ Anagyrus lopezi

(3) 今後のキャッサバ生産への影響の見通し 〜関係者の意見から〜

 今年度のコナカイガラムシ被害は、キャッサバ価格の上昇に表れているように深刻なものとなっている。その顕著な例の一つとして、ナ県のあるタピオカでん粉工場では、被害のあった農家が収穫を前倒しで行っているため、調査を実施した2月末現在で収穫が終わりつつあるとの話があった。
 
 この工場は、例年であれば通年で稼働するところ、4〜5月に原料不足から操業を停止することも想定しており、取引先からの予約の申し込みには慎重にならざるを得ないとのことであった。
 
 コナカイガラムシの駆除の見通しについては、関係者の意見はさまざまであったが、共通していたのは、以前のアフリカよりも被害は抑えられるとの見解であった。アフリカでは天敵の利用という対策を発見するまでに時間を要したが、タイはアフリカの前例を参考に、すでに対策に取り組んでいるためである。
 
 楽観的に考えれば、と前置きした上で1〜2年で完全に駆除できるとする意見もあった。
 
 
 
 関係者が懸念しているのは、キャッサバ農家が、ほかの作物へと作付け転換することである。
 
 キャッサバの生産が行われている地域では、従来から、農家は同地域で作付け可能なとうもろこし、さとうきびといった競合作物の価格を比較し、最も利益が高い作物を選択してきた。特に最近のさとうきび農家販売価格は、砂糖の国際価格が上昇していたため、高水準となっており、2010年2月を見ると、前年同月比20.3%高の1トン当たり850.85バーツとなった。
 
 農家がさとうきびの高価格に興味をもっていることに加えて、今回の害虫の問題から、今年は、例年よりも多数の農家がキャッサバからさとうきびへと転作するのでは― という見方が、関係者の多くから聞かれた。
 
 しかしながら、(1)さとうきびは、キャッサバと異なり、「さとうきび及び砂糖法」という政策の下、さとうきび販売価格などが管理された作物であること、(2)さとうきび生産において十分な単収を確保するには水が必要となるので、かんがい用水のない地域では敬遠されること、(3)現在の高いキャッサバ価格は、農家を引き止める要素となること― などから、転作する農家の数は限定的になるとの見解もあった。

3.タピオカでん粉の生産事例 〜燃料費を抑えて低コスト化が進む〜

 ここでは、ナ県の2つのタピオカでん粉工場の特徴などについて紹介したい。

(1) ナコンラーチャーシーマー県の概況

 ナ県は、その中心都市名からコラート県とも称され、また、タイ東北部の最も西寄りに位置していることから、「東北部の入り口」とも呼ばれている。最大のキャッサバ生産県となっており、2009年度のキャッサバ収穫面積は、170万ライ(約27万ヘクタール)と全国の22.8%、農家戸数についても14.5%を占めている。
 
 キャッサバの生産が集中していることから、キャッサバチップ、ペレット、でん粉工場の多くがこの県に立地している。また、コメ、さとうきび、とうもろこしなどの生産も盛んである。
 
 

(2) タピオカでん粉工場の事例

A工場
〜排水から発生するバイオガスを燃料利用して、重油の代替に〜
 
 A工場は、1970年代から操業を行っており、敷地面積は約350ライ(56ヘクタール)、従業員数約190人で、年間のでん粉製造量は約10万トンである。収穫期の1日当たりのキャッサバ処理量は概ね1,450トン程度となっている。
 
 製品の出荷先は、国内向け40%、輸出向け60%の割合である。輸出先としては、主に台湾、日本、香港、マレーシアで、ほかに少量であるが、インドネシア、中国向けもある。輸出先での用途は、製紙、製めんのほか、甘味料となっている。
 
 出荷単位は、1トンフレコンのほか、500キログラム、50キログラム、25キログラムなど取引先によって対応している。
 
 なお、2月末現在でキャッサバの買い取り価格は、でん粉含有率30%のもので、1キログラム当たり2〜2.2バーツであった。キャッサバの買い取り価格は状況に応じて変更しており、1日に2回変更することもある。
 
 A工場の特徴は、燃料としてバイオガスを使用していることである。2008年ごろに設備を導入し、排水を発酵処理する際に発生するメタン(CH4)をバイオガスとして使用することで、重油をほぼ100%節約することを実現している。このようなバイオガスの燃料利用はタイでは主流になりつつあるとのことであった。
 
 
 
B工場
〜農家との信頼関係を構築〜
 
 B工場は、1990年代から操業を行っており、従業員数約300人で、年間のでん粉製造量はA工場と同様、約10万トンである。例年の収穫期であれば1日当たり500トン程度のでん粉生産があったが、現在は害虫の影響によって400トン程度になっている。
 
 製造されるでん粉は、食品向けがほとんどで、出荷先は国内が40〜50%、残りが海外となっている。輸出先としては、マレーシア、シンガポール、日本、フィリピン、豪州に加えて、最近ではインドネシアからの需要が増加している。出荷単位は、ほとんどが850キログラムであるが、50キログラム、25キログラムでの対応も行っている。
 
 2月末現在でのキャッサバ買い取り価格は、でん粉含有率30%のもので、1キログラム当たり2.15バーツであった。これを基準に含有率プラス1%につき0.04バーツプレミアを上乗せ、マイナス1%につき0.05バーツ減額している。
 
 燃料コストの削減については、精米所からもみがらを購入し、ボイラーの燃料として使用している。この方法によって重油の約半分を置き換えている。バイオガスの導入についても検討中である。
 
 B工場の特徴は、農家との信頼関係の構築を重要視している点である。その一つとして、キャッサバのでん粉含有率の測定の実施を、出荷した農家がいつでも確認できるようにしていることである。この点については農家も重要視しており、搬入先を選択する基準となっている。また、コナカイガラムシ対策の周知徹底や栽培技術の指導なども積極的に行っている。
 
 
 

4.まとめ

 2009年度のタイにおけるタピオカでん粉生産をめぐっては、原料となるキャッサバの価格支持制度の見直し、初となるコナカイガラムシの発生など、大きな変化が生じることとなった。
 
 中でもコナカイガラムシによる被害は、想定されなかった事態であり、タピオカでん粉生産に大きな影響を与えている。現地報道などに目を向けると、関係者のさまざまな意見や予測があり、いまだ実態について不透明な部分があることは否めない印象である。コナカイガラムシは、ベトナムやカンボジアでも発生が報じられていることから、今後は周辺国を含む生産動向を注視すべきであろう。
 
 また、これまでタピオカでん粉の利点の一つとして、「安価」であることが挙げられていたが、今年度に限れば価格の上昇は避けられない状況となっている。今後のタピオカでん粉の需要者の動きについても注目していきたい。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
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