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でん粉を利用した食品素材

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最終更新日:2012年12月10日

でん粉を利用した食品素材〜過熱水蒸気処理による乳化能の付与〜

2012年12月

石川県農林総合研究センター 農業試験場 主任研究員 三輪 章志
 


【要約】

 トウモロコシでん粉に油脂、有機酸などを加え、過熱水蒸気処理することにより、乳化能を付与し、乳化剤に代わる食品素材を得ることができた。得られた乳化能は水溶性画分が多かった。

はじめに

 乳化剤および乳化安定剤は、食品加工の幅広い分野で利用されている。しかし、食品業界では、添加物を敬遠する消費者ニーズに対応して、乳化能(注1)を持つ食品素材を求めている。 そこで、トウモロコシでん粉に油脂や有機酸を加えて過熱水蒸気(注2)処理することにより乳化能を付与し、乳化剤を代替する食品素材に変換する技術を開発したので紹介する。

(注1)油脂と水とを均一に混合させる性質。
(注2)100℃で蒸発した飽和水蒸気を常圧のまま100℃以上に加熱した水蒸気。

1.食品加工における乳化剤の役割

 現在、指定添加物および既存添加物である乳化剤および乳化安定剤は、食品加工の幅広い分野で利用されている。すなわち、1)油脂と水とを均質化する乳化(クリーム、マーガリンなど)、2)油脂の分散(チョコレート、ショートニングなど)、3)油脂の可溶化(香料の飲料への溶解など)、4)起泡(スポンジケーキ、ホイップクリームなど)、5)消泡(豆腐、ジャム、飲料など)、6)湿潤(チューインガム、粉末食品、ティーバッグなど)、7)洗浄(食器や野菜などの洗浄)、8)防曇(透明樹脂製容器)などの用途がある。

 さらに、乳化能を持つ素材は、化粧品や医薬品など乳液やクリーム、洗剤(野菜用、食器用)、樹脂容器(消泡作用)などの食品以外の製造にも利用されている。

 このことから、乳化剤や乳化安定剤の国内の市場規模(2008年)は、およそ乳化剤が215億円/年、乳化安定剤が130億円/年程度である。

 こうした中、食品業界では、添加物を敬遠する消費者ニーズに対応して、乳化能を持つ食品素材を求めているが、現在のところ国内、国外ともにでん粉に化学的に有機酸や脂肪酸を結合させることで乳化能を付与する技術しかなく、商品化されたものは食品添加物として扱われている。

2.でん粉に乳化能を付与するための技術

 そこで、本研究では、トウモロコシでん粉に油脂や有機酸を加えて過熱水蒸気処理することにより乳化能を付与し、指定添加物である乳化剤に代わる食品素材に変換する技術の開発を行った。これまで、過熱水蒸気処理は、肉、魚、野菜などの調理に利用されており、でん粉の加工処理での利用はされていない。そこで、トウモロコシでん粉のみを過熱水蒸気処理して、過熱水蒸気処理がでん粉に与える影響を検討した。

1)温度の影響

 過熱水蒸気処理温度を150、170、190、210、230 、250℃の6水準で行い、でん粉の白度を測定した。その結果、でん粉のみの場合は、210℃以上で着色が認められ230℃以上では視覚的にも褐変しているのが確認できた。また、単糖を加えると190℃以上で褐変化した。これらから、処理温度は170℃を選択した。


2)処理時間の影響

 170℃で加熱して処理時間を5、10、20、30、60分の5水準にした。その結果、ほとんど白度が変わらないことが確認できた。
 
 
 
 
3)過熱水蒸気処理でん粉の乳化能

 次に、表の添加物の配合と処理条件(温度、時間)によりでん粉を処理して乳化能の発現について評価した。でん粉の乳化能の評価の方法として、水に過熱水蒸気処理でん粉と脂溶性色素アスタキサンチンを添加して一定時間撹拌して遠心分離し、得られた水相の吸光度(520nm)により水へのアスタキサンチン色素の乳化程度を評価する簡便な方法を開発した。その方法を用いて、過熱水蒸気処理1〜5の試料は、過熱処理をしない無処理B0、B4およびB5の試料に比べて吸光度が高く、乳化能が向上したと考えられた。また、植物油とクエン酸を添加しての過熱水蒸気処理1〜3の試料では、過熱水蒸気処理(170℃)の処理時間が短いほど吸光度が高く乳化能が高いと考えられた。同じ組成での乾熱処理C1の試料は、過熱水蒸気処理1〜3の試料に比べて吸光度が低かった。植物油、クエン酸と糖添加の過熱水蒸気処理4および5の試料では、果糖添加の過熱水蒸気処理4の場合よりもブドウ糖添加の過熱水蒸気処理5の場合の方が吸光度が高かった。過熱水蒸気処理4は、同じ組成で乾熱処理したC2の試料と比べると吸光度が高かった。以上の結果から、過熱水蒸気処理することで、でん粉が乳化能を持つようになると考えられた。

 さらに、各サンプルをアセトン、水の可溶性画分と不溶性画分に分けて採取し、各画分の乳化能について評価した。
 
 
 無処理B4とB5の試料には、各画分ともほとんど乳化能が認められなかった。一方、乾熱処理C1とC2の試料、ならびに過熱水蒸気処理4と5の試料では、水溶性画分が最も乳化能が高かった。過熱水蒸気処理3の試料は、不溶性画分が最も乳化能が高かった。可溶性画分の吸光度を比較すると、過熱水蒸気処理5が最も乳化能が高く、各画分の中でも一番乳化能が高かった。

 以上のことから、過熱水蒸気処理によって得られた乳化能は、水溶性画分が多いため食品素材として利用しやすいと考えられる。

おわりに

 過熱水蒸気処理を施すことにより、でん粉に乳化能を付与できることが明らかになった。これにより、食品素材としての新たなでん粉の用途創出の可能性を示すことができたと考える。なお、現在当センターは、塩水港精糖鰍ェ主査機関となっている農水省の実用技術開発事業による共同研究グループに参画し、本技術を利用した乳化能を有する米粉由来素材の製造技術の開発を行っている。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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