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有材心土改良耕のてん菜及びばれいしょ栽培への効果

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最終更新日:2010年4月28日

有材心土改良耕のてん菜及びばれいしょ栽培への効果

2010年5月

財団法人北海道農業開発公社 前審議役 丸山 健次

1 背景 〜課題は緊密土壌層の形成〜

 これまで、北海道では特殊土壌に対して各種の排水改良法や土層改良法が開発され、現地で導入や改善が進められてきました。近年の機械化農業における収穫管理作業用機械の大型化は、農業機械の走行に伴う踏圧の著しい増大をもたらし、土壌圧縮による堅密土層の形成が農地の適正な管理という面において深刻な問題を提起しています。すなわち踏圧の増大は圧縮土層を経年的に拡大し、耕起・耕耘作業の耕深範囲の下層に圧縮された堅密土層を形成します。堅密土層の存在は、有効土層(根圏域土層)の狭小化だけではなく、土壌の物理的機能の適正な発現を妨げるために作物根の伸張・繁茂が抑制され、生産性を低下させます。

 作物の生産基盤としての畑ほ場が備えるべき土壌物理性として、(1)作物根を伸張・繁茂しやすくする膨軟性(土壌に適度な有機物や空気が含まれており、ふわふわした状態)(2)有効土層(根圏域)内の過剰水分を速やかに排除し、作物根の呼吸に必要な空気を確保するための排水性(3)十分な養水分を貯留・保持するための保水性(4)農業機械の走行に耐えうる土壌構造の安定性−などがあげられますが、土壌圧縮による堅密土層の形成は(1)〜(3)の物理性の劣悪化に関わる極めて重要な問題です。すなわち堅密土層の存在は、表層の根圏域の土壌水分環境を不安定化し、降雨時には過剰水分の速やかな排除が困難であるために表層土は過湿状態となり、旱天時には下方からの水分補給が遮断されるため著しい乾燥状態を呈します。このような不安定な土壌水分環境の下では、養水分吸収や呼吸代謝における作物根のストレスは増大し、収量や品質の低下は避けられません。

 そこで、これらの欠点を解決した透排水性、保水性改善効果の高い土層改良工法として有材心土改良耕を提案し、適応可能な土壌条件、耐久性、効果について紹介します。

2 有材心土改良耕の概要

 従来、このような堅密土層の存在によるほ場の排水不良を改善する場合、一般に多く採用されている土層改良工法として、チゼル(破砕爪)により堅密土層を破砕して多数の亀裂間隙をつくり、土層の膨軟性回復を図るサブソイラや心土破砕工などがありますが、これらの工法は、土層改良効果並びにその持続性が不十分でした。そこで下層土に性質の違う資材を投入する工法が考えられ、以前は耕作土を(1)25センチはぎ取り(2)下層土を露出させ(3)その露出させた表面に有機物を散布し(4)プラウ耕起により斜めに資材を形成し(5)耕作土を埋め戻しする工法−を行っていましたが、コストは高水準になりました。

 そこで、このような欠点を克服するために当公社が開発したのが、オプナーと呼ぶ溝切りで堅密土層に壁状の亀裂間隙をつくり、その亀裂間隙に透水性(排水性)が極めて大きな資材(疎水材)を充填することにより間隙の保持を図る土層改良工法です。施工方法は、湿地10トン級トラクタに装着した直装型の24インチボトムプラウで耕作土を25〜30センチ耕起し、その耕作土直下の心土部分に耕幅8〜10センチ、高さ30センチ程度の透水壁を造成します。透水壁の間隔は施工機械の作業性から最小間隔は60センチですが、ほ場の排水不良の状況に対応して間隔を120センチに選定することができます。疎水材としてはたい肥、バーク(樹木の皮の部分)、貝殻、チップ、粗粒火山灰などがありますが、現在では排水性と保水性の関係から、バークたい肥などの有機物が主流になっています。
 
 
 
 
 
 

3 有材心土改良耕の効果

(1)心土の物理性の変化

 有材心土改良耕を施工した直後の土壌断面は、図4のように疎水材透水壁が形成されています。また透水壁の周辺にはオプナーによる切断破砕の過程で形成されたと思われる多数の亀裂が認められました。

 有材心土改良耕を施工して3年経過後には透水壁周辺の土壌に弱い塊状構造が形成されており、根域がこれを中心に発達している様相が認められました。施工3年後の透水壁周辺の深さ45〜50センチ付近の心土の土壌物理性(詳細は解説を参照)を表1に示します。各処理区の土壌硬度は原土区の1.97MPaに対して0.40〜0.53MPaと小さく、また乾燥密度は原土区の1.69Mgm-3に比べて0.38〜1.48Mgm-3と明らかに低い結果です。

 気相率は原土区の0.03m3m-3に比べて0.07〜0.10m3m-3、飽和透水係数が原土区の10-8に比べて10-6と排水能力が格段に高くなっており、透水壁周辺の透水性や通気性が良好な状態を維持されています。また、降雨後における排水状況を調査した結果、無施工のほ場では滞水していたのに比べて、施工ほ場は明らかに排水されていたことが認められました(図5、6)。
 
 
 
 
 
 
 
 

(2)農作業機械の走行性に与える効果

 降雨時には有材心土改良耕で形成された透水壁と接続した配水管から余剰水の流出が確認されましたので、日雨量53ミリの翌日にバークたい肥区で行った機械走行性試験の結果を表2に示します。

 走行性が「不能」と判断された原土区に比べて「容易〜やや難」と判定され、改善効果は明らかになりました。このことは、有材心土改良耕により50ミリ程度の降雨であれば翌日から機械作業が可能となり、特に降雨後に必要とされる防除作業が容易に行えることから、病害発生の軽減にも寄与できることを示しています。
 
 

(3)作物収量効果

 作物収量効果について、表3に示すようにばれいしょは生育初期から処理区の方が原土区よりも生育(草丈や茎葉)が旺盛であり、収量も高く、また施工間隔が狭い方が高い収量水準で、品質が明らかに向上していました。同様の傾向がてん菜でも認められました。
 有材心土改良耕による増収効果は施工後5年経過しても維持されており、従来の心土破砕については、2〜3年以内で効果が無くなるとの農家の方々の評価に比べて、改良効果の持続性が高いことが確認されました。

 また、バークたい肥等有機物を疎水材に使用したところ、干ばつ時でも順調な生育を示しました。このことは、有機物の疎水材が重力水(土壌の間隙を重力によって流れ去る水)は排除するが、それ以外の水分は透水壁に保持していたことによると考えられます。
 
 
 
 
 
 
 
 

4 有材心土改良耕の耐久性

 有材心土改良耕の疎水材透水壁の耐久性について調査した結果、図7、8のとおり、平成2年度(19年経過)および平成3年度(18年経過)に施工したほ場の透水壁では、依然として施工時の状態が維持されていました。このことから、疎水材透水壁は20年以上維持できると推測されます。施工された農家の方々に評価を伺ったところ、降雨後の防除などほ場管理が他のほ場に比べて容易であるとの意見でした。

5 有材心土改良耕の経済性

 有材心土改良耕の透水壁60センチ間隔区と120センチ間隔区の施工費は、疎水材投入資材費をトン当たり3000円とした場合、平成21年度でそれぞれ10アール当たり約13万円と約9万円となり、耐用年数20年から計算した年間投資額はそれぞれ同6500円、同4500円となります(表4)。

 有材心土改良耕を施工した場合、透水壁間隔が狭くなるほど施工費の増加よりも収量増加に伴い、経済効果は大きくなります。

6 まとめ

 有材心土改良耕の有効性について要約しますと、以下のようにまとめられます。
 
(1)堅密な心土の土壌硬度や乾燥密度が低下し、改良効果が20年以上の持続性が認められます。
 
(2)泥濘化しやすい土壌の場合にも、日雨量50ミリ程度の降雨後に農業機械の走行が可能であり、防除作業などほ場管理が容易です。
 
(3)疎水材透水壁の周辺は根の伸長に良好な環境となり、心土での根域の発達および養分吸収が旺盛になります。
 
(4)疎水材に有機物を使用すると、重力水は排除されますが、透水壁には水分を保持し、干ばつ時には作物生育が干ばつの影響を回避することが出来ます。
 
(5)透水壁間隔が狭くなるほど効果が大きく、収量が増加し、所得指数も高くなります。
 
〈引用文献〉
 1)相馬尅之・前田隆・虻川雄介・石田勲・泉陽一・藤野善晴・住友寛・丸山健次1991:改良型有材心破による畑圃場の排水改良(第1報)、第40回農業土木学会北海道支部研究発表会講演要旨、78-81 2)相馬尅之・前田隆・柏木淳一・伊藤幸範・泉陽一・藤野善晴・住友寛・丸山健次1992:改良型有材心破による畑圃場の排水改良(第2報)、第41回農業土木学会北海道支部研究発表会講演要旨、40-43 3)横井義雄・北川巌・後藤英次・田丸浩幸2001:北海道上川地方の堅密固結性土壌に対するオプナー式有材心土改良耕の効果、土壌の物理性、No.88,37-44
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