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米国およびメキシコにおける砂糖需給の変化

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最終更新日:2010年5月14日

米国およびメキシコにおける砂糖需給の変化
〜NAFTA域内の砂糖不足に伴う輸入量増加の可能性〜

2010年4月

調査情報部・特産調整部

 2008年1月、北米自由貿易協定(NAFTA)の下で、砂糖生産量、消費量でそれぞれ世界10指に入る米国、メキシコ両国間の甘味料貿易の完全自由化が実施された。これを受け、同年以降メキシコから米国への砂糖輸出は著しく増加した。

 NAFTAによる市場統合後の両国の砂糖需給は、両国の砂糖生産動向だけでなく、米国における異性化糖の価格動向により大きく左右される状況となっている。その中で両国の2009/10年度(10月―翌9月)の砂糖需給は前年度に続いてタイトに推移しているとみられ、世界市場から輸入することによる世界需給への影響も懸念されている。このことから、本レポートでは、USDA(米国農務省)のレポートをもとに両国の最近の砂糖需給動向について報告する。

両国の砂糖の生産と貿易の背景

 米国の砂糖生産量は700万トン、消費量は1000万トン弱であり、不足分は輸入で補われる。一方のメキシコは砂糖生産量、消費量がそれぞれ500万トン程度であるにもかかわらず、2008/09年度には世界の主要輸出国となった。その要因は、NAFTAの貿易自由化の下、メキシコが国内で生産した砂糖を国内よりも価格の高い米国に輸出し、国内供給は第三国からの輸入により手当てしたことによる。

 メキシコから米国への砂糖輸入についてはNAFTAの下、1994年以降、関税率が段階的に引き下げられ、2008年1月完全自由化となった。貿易自由化以前、砂糖価格はメキシコが米国を上回っていたが、2008年後半には需給ひっ迫により米国の砂糖価格が上回り、メキシコからの米国向け砂糖輸出が増加した。

 また、両国の砂糖貿易は異性化糖の需給動向の影響を受ける。これは、メキシコで異性化糖消費量が増加すると相対的に砂糖消費量が減少し、これによって発生する余剰砂糖が恒常的に砂糖が不足する米国に輸出されるためである。メキシコ国内の甘味料市場に占める異性化糖は10%以下であるが、近年飲料メーカーを中心に砂糖から異性化糖へのシフトが進んでおり、消費量は2002/03年度の13万トンから2007/08年度には78万2000トンにまで急増した。大半は米国からの輸入で賄われていることから、メキシコにおける異性化糖の消費・輸入の拡大は、同国から米国への砂糖輸出拡大に寄与することとなる。

 
 

2008/09年度の砂糖貿易状況

 USDAは2009年12月公表のGAIN Report“SUGAR SEMI―ANNUAL Mexico”で、2008/09年度のメキシコの砂糖輸出量を127万トン(粗糖換算)に上方修正した。これは同国において砂糖在庫率が2009年初頭に高かったことと、砂糖業界が一時輸出措置制度(TEP)(注)のもと、2009年後半に砂糖輸入を実施するため、前倒しで輸出を決定したことを反映したものである。

 しかしながら、2008/09年度のメキシコの砂糖生産量は予測を下回り、2009年の国際砂糖価格の高騰により第三国からの砂糖輸入は難しくなったことから、同国は供給不足と在庫率低迷の脅威にさらされることとなった。2009年8月、9月に三度にわたり、メキシコ政府は国内市場の安定を図るため、特別関税割当により合計で白糖73万4000トン(粗糖換算)、粗糖21万9000トンを輸入するとの声明を発表した。このうち55万トンの白糖輸入が既に許可されたが、国内さとうきび生産者、製糖業者、上院の農業特別委員会は、さらなる輸入は2009/10年度の国内砂糖需給の混乱要因になるとして反対しており、輸入が声明どおり実施されるかは不確定である。


2009/10年度の見通し

 USDAは3月公表の“Sugar and Sweeteners Outlook”で、2009/10年度におけるメキシコの砂糖生産量を490万トン(粗糖換算)とし、前月の予測から20万トン下方修正した。悪天候により、2月現在でさとうきび作付面積は28万380ヘクタール(前年同期比10%減)、1ヘクタール当たり産糖量は7.67トン(同7.3%減)と減少し、歩留まりも前年同期の14.16%から8.42%に低下したためである。また、同国の砂糖消費量は、世界金融危機の影響による消費者の購買力低下のため、前年度と同程度の500万トンにとどまるとみられている。

 一方、異性化糖消費量は、イエローコーン価格の下落に伴う異性化糖価格の下落および砂糖価格の高騰により、前年度の65万3000トンから大幅増加となる120万トン(乾燥重量)と予測され、その大半は米国から輸入されるとみられる。

 このように、メキシコ国内では砂糖消費量が減少し、異性化糖消費量が増加するものの、砂糖生産量の低迷を反映し、砂糖輸出量は49万トンと予測されている。

 米国は深刻な砂糖不足に見舞われており、2009/10年度は195万7000トンの輸入が必要とみられている。従来、米国は砂糖の不足時にはメキシコからの輸入で補ってきたが、メキシコは今年度、米国の不足分をカバーするだけの供給余力を有していない。また、2009年後半にはメキシコの砂糖価格は再び米国の価格を上回っており、メキシコから米国向け輸出がどの程度行われるか不透明であることから、米国はメキシコ以外の国から輸入する可能性がある。

 メキシコ経済局は2010年2月9日、特別関税割当により25万トンの砂糖輸入を行うと発表していることもあり、両国の砂糖貿易が今後どのように展開していくかが注目される。

資料:USDA“Sugar and Sweeteners Outlook”2010年2月、3月、USDA GAIN Report“SUGAR SEMI―ANNUAL Mexico”2009年12月11日


 注:FAOによれば、メキシコの一時輸出措置制度(the Mexican Government's Temporary Export Permits)は1995年4月に導入され、国内の砂糖輸出業者が輸出した砂糖と同量の砂糖を6カ月以内に輸入する場合に限り、輸出税が免除される制度である。なお、メキシコ政府が国内需給状況により砂糖の再輸入は不要と判断した場合、再輸入は実施されない。

 メキシコの国内砂糖供給は生産期間の12月〜翌9月に増加し、端境期には減少する。TEPは国内における一時的な供給過剰を緩和し、価格を下支えすることが目的とみられる。

 
 
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
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