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EUにおける最近の砂糖需給動向

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最終更新日:2010年6月3日

EUにおける最近の砂糖需給動向

2010年6月

調査情報部

はじめに

 EUはかつてブラジルに次ぐ砂糖輸出国として、毎年500〜700万トン(注1)を世界市場に供給してきたが、2006年からの砂糖制度改革により輸出量は大幅に減少した。このことは世界の需給構造に大きな変化をもたらし、最大消費国インドの減産と相まって、2009年の国際価格高騰の一因となった。
 
 EUは、輸出に占める地位は低下したものの、ブラジル、インドに次ぐ世界第三位の生産地域、インドに次ぐ世界第二位の消費地域として世界の砂糖需給における存在は大きく、また、最近ではLDC(後発開発途上国)諸国、ACP(EUの旧植民地であるアフリカ、カリブ、太平洋)諸国からの輸入自由化により輸入の増加が見込まれるなど、生産・貿易状況は変化しつつある。
 
 本レポートではUSDA(米国農務省)のレポートなどをもとに、EUにおける最近の砂糖需給動向について報告する。
 

WTO裁定と砂糖制度改革により生産、輸出は大幅減少

 砂糖制度改革以前のEUは、毎年2000〜2200万トンの砂糖を生産し、そのうち500〜700万トンを世界市場に輸出してきた。しかし、2005年にWTOパネルにおいて、補助金を受けず域外に輸出されなければならない生産割当超過分の砂糖(C糖)輸出、およびACP諸国産粗糖を原料とする砂糖の再輸出が違反裁定を受け、輸出量の上限として年間137.4万トン(白糖換算)を遵守することとされたこと、「EBAの原則」(LDC諸国からの武器・弾薬以外の品目について、数量制限なしに無税輸入を認める制度)に基づき、これら諸国からの輸入が2009年7月以降、完全自由化されることとなり、域内の供給過剰の恐れが生じたこと、域内価格が国際価格の3倍の水準となっている状況の是正が必要とされたことなど、さまざまな課題に対処するため、欧州委員会は砂糖制度の抜本的な改革に取り組むこととなった。
 
 この取り組みの一環として、各加盟国に割り当てる生産割当数量を2010年2月末までに600万トン(異性化糖、イヌリンシロップを含む。)削減し、生産規模を縮小することとなった。また、域内価格水準を引き下げるため、介入価格制度を廃止し、割当糖(生産割当数量内で生産した砂糖)の市場価格の基準として、新たに参考価格制度を導入した。参考価格は2007/08年度の1トン当たり631.9ユーロから、2009/10年度は同404.4ユーロと、段階的に引き下げられた。
 
 これらの取り組みにより、生産効率の低い加盟国は砂糖生産から撤退し、2006/07年度以降、生産量、輸出量はそれぞれ減少傾向にある。
 
 
 
 

2009/10年度は記録的な増産となり、輸出も例外的に増加

 2009/10年度(10月〜翌9月)の砂糖生産量は、1668万トン(前年度比19.1%増)と、大幅な増加が見込まれる。これは、前年度末の穀物価格下落を受け、てん菜生産への回帰が生じ、作付面積が159万ヘクタール(同5.1%増)に増加したこと、天候に恵まれ、単収が1ヘクタール当たり64.7トン(同1.4%増)と記録的な高水準となったことなどにより、てん菜糖の生産量が1640万トン(同18.8%増)と大幅に増加したことによる。なお、残りの28万トンはフランスおよびポルトガルの海外県で生産される甘しゃ糖である。
 
 増産により同年度における生産割当数量1330万トンを大幅に上回ることとなり、生産された砂糖のうち50万トンは2010/11年度の生産割当に持ち越されるとみられる。
 
 2009/10年度における輸出量は、WTOが定めた輸出量の上限を大幅に上回る220万トンとみられる。なお、この輸出量には、2010年1月に欧州委員会が発表した砂糖50万トン(白糖換算)の追加分も含まれる。同委員会は、2009/10年度の生産が大幅に増加し、生産割当数量を上回る砂糖をエタノール生産やその他産業向けでは消費しきれず、在庫が積み上がったことへの対策として、追加輸出を決定した。主な輸出先はイスラエル、アルジェリア、ノルウェー、スイス、中東諸国である。
 
 一方、輸入量は、主要輸入先のLDC諸国およびACP諸国からの増加を受け、345万トン(前年度比8.8%増)とみられる。
 

貿易状況に変化

 EUの輸入先国の大半は、LDC諸国およびACP諸国である。前述の通り、LDC諸国からの輸入は「EBAの原則」に基づき、2009年7月以降、自由化された。一方、ACP諸国については1975年からのsugar protocol(砂糖議定書)が2009年9月末に終了し、現在ではEPA(経済連携協定)のもと無税輸入が認められている(注2)。
 
 また、EUは以前よりアンデス共同体(ボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルー)とFTAの締結に向け交渉を行っており、共同体同士での締結は断念したものの、コロンビアおよびペルーとの国別交渉が妥結し、2010年5月に仮署名する運びとなった。このFTAには砂糖の輸入割当が含まれ、EUはコロンビアから6万2000トン、ペルーから2万2000トンを輸入することとなる。同割当は毎年3%ずつ拡大されることから、EUの輸入量増加の一因になるとみられる。
 
 このように、EUの砂糖輸入量は増加が見込まれる一方で、国際価格高騰時における安定的な輸入確保に課題が生じている。EUの域内価格は、砂糖制度改革前は国際価格の約3倍の水準にあり、このことがLDC諸国やACP諸国にとって、EUに砂糖を輸出するメリットとなっていた。ところが、制度改革により域内価格水準が引き下げられ、さらに2009年に国際価格が高騰し、EUの域内価格を上回ったため、LDC諸国やACP諸国がEUに輸出するメリットが無くなり、これらの諸国からの輸入が見通せないという事態が発生し、域内の供給不足が懸念された。
 
 その後、国際価格が急落し、供給不足の懸念は和らいだものの、EUは国際価格が再び高騰した際に安定的な輸入を確保するための体制整備が必要とされている。
 
 
 

2010/11年度は生産、輸出ともに減少の見通し

 2010/11年度は、前年度の生産分50万トンが持ち越されるため、砂糖の生産割当数量は縮小するとみられる。このため、てん菜作付面積は156.4万ヘクタール(前年度比1.6%減)に減少し、砂糖生産量は1390万トン(同16.8%減)と大幅な減少が見込まれる。
 
 輸入量は、LDC諸国およびACP諸国からの輸入増加に加え、FTA締結によりコロンビアおよびペルーからも供給されるため、390万トン(前年度比13.0%増)と、かなり大きく増加するとみられる。一方、輸出量は前年度比33.6%減の146万トンと、大幅に減少するとみられ、WTOの上限137.4万トン(白糖換算、粗糖換算にすると149.4万トン)を下回ると見込まれる。
 
 EUは、砂糖制度改革により主要輸出地域から主要輸入地域に転じた。域内生産体制の縮小、砂糖生産国との貿易協定の締結、および国際価格の下落から、当分の間、EUの輸入は増加すると見込まれる。しかしながら、国際価格が再び高騰した際には、輸入量の確保に不安もあり、域内供給の安定へ向けたEUの動向が注目される。
 
注1:本レポートの数量は、断りがない限り粗糖換算である。
 
注2:包括的なEPA締結はカリブ海諸国とのみ、その他の地域については個別のACP諸国と暫定協定を締結。
 
資料:USDA GAIN Report “EU-27 Sugar Annual 2010” 2010/4/22 LMC “Monthly Sugar Report” 2010年2月 独立行政法人農畜産業振興機構「砂糖類情報」2010年2月号
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713



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