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4.世界の需給に影響を与える諸国の動向

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最終更新日:2010年7月1日

4.世界の需給に影響を与える諸国の動向

2010年7月

調査情報部

◆ブラジル◆ 〜2010/11年度の生産は順調な滑り出し〜

(1)2010年6月における見通し

2010/11年度はさとうきび、砂糖生産量とも増加の見込み
 
 主産地である中南部地域の生産は、例年より約1カ月早く開始された。同地域の4月から6月1日までのさとうきび生産量は1億2800万トン(前年同期比16%増)、砂糖生産量は630万トン(同25%増)となり、2010/11ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)は順調にスタートした。
 
 2009/10年度の生産期間は季節外れの大雨に見舞われ、約50万トンのさとうきびが刈り残された。これらは2010/11年度に収穫されるが、品質が悪く、さとうきび1トン当たりの回収糖分(ATR)は138.3キログラムと、前年度の同131.0キログラムから増加するものの、過去5年間の平均を下回るとみられる。
 
 しかしながら、さとうきび収穫面積が前年度比8.0%増の810万ヘクタールと見込まれること、また、前述の通り前年度に刈り残されたさとうきびが収穫されるため、圧搾可能なさとうきびは6億3910万トン(前年度比6.6%増)に増加すると見込まれ、さとうきびの仕向け割合は前年度並み(砂糖54.3%、エタノール45.7%)と予測されることから、2010/11年度の砂糖生産量は4090万トン(粗糖換算、同13.3%増)、エタノール生産量は287億リットル(同13.0%増)といずれも増加が見込まれる。ただし、今年度は開始されたばかりであり、圧搾がピークを迎える7〜9月の天候次第でこれらの予測は修正される可能性もある。
 
 
製糖工場の資金繰り悪化が2011/12年度の生産に影響も
 
 ブラジルの製糖工場の約7割はエタノールの生産ラインを併設しており、これらの工場は砂糖とエタノールの価格動向に基づき、さとうきびの仕向け割合を調節している。直近の動きをみると、エタノール価格は新年度の開始により供給が潤沢となったことから続落し、5月の含水エタノール平均価格は1リットル当たり0.72レアル(前月比11.1%安)となった。エタノールの生産コストは同0.75〜0.80レアルとされ、現在の価格水準は生産コストを割り込んでいる。
 
 一方、砂糖価格の指標となるニューヨーク粗糖相場(期近)は、6月中旬に1ポンド当たり16セント前後で推移し、粗糖の生産コストは同14セントとされるため、砂糖の収益性はエタノールに比べやや高く、製糖工場は当面、砂糖生産を優先させるとみられる。
 
 2010/11年度においては、国際砂糖価格の急落により、価格高騰時に販売価格を先決めした一部の工場を除き、製糖工場の収益は前年度に比べ低下すると予測される。収益低下による製糖工場の資金繰り悪化は、同年度におけるさとうきびの新植ペースを停滞させるとみられ、このことは2011/12年度のさとうきび生産量に影響を及ぼす可能性がある。
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 2009/10年度の輸出量は2550万トン(粗糖換算、前年度比15.4%増)となり、最大の輸出先はインドであった。2010/11年度の輸出量は増産を受け、過去最高の2840万トン(粗糖換算、同11.4%増)に達するとみられる。輸出の伸びが増産ペースをやや下回ると見込まれるのは、前年度に国際砂糖価格の高騰を受け、在庫を取り崩し輸出量の確保を優先した業者が、今年度は余剰砂糖を在庫の積み増しに回すことによる。
 
 また、輸出先については、インドが生産回復により輸入量を大幅に減らすと予測されるため、ロシアや中東、アフリカ諸国が中心になるとみられる。
 
資料:LMC “Monthly Sugar Report, June 2010”
   USDA GAIN Report “Brazil Sugar Annual” 2010/04/10
 
 
 

◆インド◆ 〜2009/10年度の生産量は年初の予測を大幅に上回る見込み〜

(1)2010年6月における見通し

 LMCの2010年1月の予測では、2009/10インド砂糖年度(10月〜翌9月)の砂糖生産量は1680万トン(粗糖換算)と見込まれていたが、同年6月の予測では、砂糖生産量は1990万トン(粗糖換算)に上方修正された。この要因として、マハーラーシュトラ州とカルナータカ州などで2010年1月前後の降雨と肥料使用量の増加によりさとうきびの単収が増加したこと、収穫開始の遅れによりさとうきびの生育期間が伸び、糖度が前年度よりも上昇したことが挙げられる。
 
 また、北部のウッタル・プラデーシュ州などさとうきびの用途として分みつ糖と競合するグル,カンサリ(注)といった伝統的な製法による含みつ糖の生産地域において、価格が高騰した分みつ糖に仕向けられるさとうきびが増加したことも増産の要因とされる。
 
 2009年の砂糖価格高騰によりさとうきびの作付けが増えたことから、2010/11年度の収穫面積は前年度比24.6%増の492万ヘクタールと、2007/08年度の水準に回復するとみられる。これに伴い、砂糖生産量は2550万トン(粗糖換算、前年度比28.1%増)と大幅に増加するとみられる。ただし、さとうきびの生産量はモンスーン期(6月〜9月)の降雨次第で変動することから、同年度の砂糖生産量については引き続き注視が必要である。
 
注:グルは、遠心分離機を使わず、オープンパン(釜炊き)でさとうきびの搾汁を煮詰め、固形状もしくは板状にした砂糖。カンサリは、搾汁液を清浄化した後、オープンパンで煮詰めた砂糖。
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 2009/10年度の生産量は年初の予測を大幅に上回るものの、消費量2500万トン(粗糖換算)を依然下回る見込みである。不足を賄うため、インドは410万トン(粗糖換算、前年度比6.8%減)を輸入し、残りは在庫の取り崩しで対応するとみられる。
 
 2010/11年度については、生産量が2550万トン(粗糖換算)に達するとの見込みから、国内需要は基本的に国内生産で賄われ、インドは輸入しない可能性もある。仮に生産量が予測を上回った場合でも、余剰砂糖は在庫の積み増しに回されるため、輸出量が大幅に増えることはない見込みである。
 
 輸入関税について、現在のところ粗糖、白糖ともに一時的に免除されている。しかし、国際砂糖価格の急落に伴う国内価格の下落を受け、輸入関税は近々再設定される見通しである。インド製糖業者協会(ISMA)は国内産業保護のため、砂糖輸入に少なくとも40%の関税(実行関税率60%)を課すよう求めている。
 
資料:LMC “Monthly Sugar Report, June 2010”
 
 
 

◆中国◆ 〜干ばつにより2009/10年度の生産量は大幅減少〜

(1)2010年6月における見通し

 2009/10中国砂糖年度(10月〜翌9月)の生産は5月末に終了し、同年度の砂糖生産量は1070万トン(白糖換算、前年度比13.0%減)とみられる。このうち、主要産地である雲南省は過去60年間で最悪の干ばつに見舞われ、9カ月間にわたり降雨がほとんどなかった上、12月には霜害も発生した。最大産地の広西壮族自治区でも干ばつの被害が発生しており、両地域の砂糖生産量は前年度に比べ、合計で100万トン以上減少した。
 
 また、てん菜についても、2009/10年度の収穫面積は大幅に減少し、黒龍江省では前年度に比べ60%も減少した。これは、政府の最低買付価格や買入制度で保護される穀物への作付転換が行われたためである。
 
 2010/11年度については、前年度の砂糖価格高騰を受け、てん菜収穫面積は22万ヘクタール(前年度比46.7%増)に回復すると見込まれる。なお、中国農業統計資料(2008年)によると、2008/09年度における甘味資源作物の作付面積のうち、さとうきびの比率は87.6%、てん菜の比率は12.4%となり、中国における砂糖生産の原料はさとうきびの比率が高まっている。  
 
 LMCは、2010/11年度において、さとうきび収穫面積を147万ヘクタール(前年度比2.6%減)、また、前年度に干ばつにより減少した単収が回復するとすれば、砂糖生産量は1220万トン(白糖換算、同14.0%増)に増加すると予測する。ただし、さとうきび収穫面積は、主要産地の広西壮族自治区と雲南省で干ばつによりさとうきびの株出しが深刻な影響を受けた一方、広西壮族自治区で3月から4月にかけ大雨が降り、干ばつの影響が軽減されたことから、今後変動する可能性もある。
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 2009/10年度において、生産量1070万トン(白糖換算、前年度比13.0%減)に対し消費量は1400万トン(白糖換算、同2.2%増)と予測されることから、330万トンが不足するとみられる。このうち200万トンは砂糖の国家備蓄放出により賄われ、残り130万トン分については輸入が必要とされる。政府は国内価格を抑制するため、今年度において5回にわたり計120万トンの砂糖を放出した。2009/10年度は、砂糖価格の高騰を受け、異性化糖(HFCS)への代替が進んだことから、砂糖消費量の増加率は前年度の3.8%から低下した。
 
 2010/11年度は、砂糖価格の下落を受け、消費量は前年度比5.0%増の1470万トン(白糖換算)とみられる。一方、生産量は1220万トン(白糖換算、同14.0%増)と予測されることから、250万トンが不足するとみられる。前年度の放出により国家備蓄が底をついたため、不足分は輸入で補う必要があるとみられる。このことから、2010/11年度の輸入量は260万トン(同62.5%増)と大幅に増加すると見込まれる。
 
資料:LMC “Monthly Sugar Report, June 2010”
 
 
 
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