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ロシアの砂糖産業の概要

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最終更新日:2010年7月1日

ロシアの砂糖産業の概要 〜再び生産拡大基調へ〜

2010年7月

調査情報部 調査課

◆はじめに
 
 ロシアのてん菜糖生産量は、1999/00年度(10月〜9月)から2008/09年度まで右肩上がりで推移してきた。2009/10年度においては代替作物(小麦と大麦)の需要が増え、製糖用のてん菜の作付面積が減ったことと、砂糖産業への投資が低下した結果、減少に転じた。
 本稿では、英国の調査会社LMC社からの報告を基に、近年のロシアの砂糖産業について取りまとめたので紹介する。
 
 
 
 
 
◆1.砂糖の需給動向
 
(1)国内需給バランス
 
 ロシアでは、これまでてん菜の作付面積が増加し国内供給量も増加してきたが、国内需要量を満たすには至らず、世界最大の砂糖輸入国であった。近年、景気後退から需要量が減少し、現在ではEUに次ぐ輸入国となっている。とはいえ、西半球で生産される粗糖を中心に、世界の砂糖市場でロシアは依然として重要な役割を果たしている。
 
 生産量については、2008/09年度までの10年間、一貫して伸びを示し、2007/08年度に初めて生産量が輸入量を超え、国産砂糖により国内需要の半分以上を賄えるようになった。また、2008/09年度は、てん菜の作付面積が前年度比10%減少したものの天候に恵まれたため、てん菜糖生産量は前年度比4%増となった。2009/10年度は、てん菜の作付面積は2%増加の見込みであるが、天候不順により産糖量は350万トン(粗糖換算)前後にとどまるとみられる。
 
 
(2)砂糖の生産量
 
 ロシアの市場に出回る砂糖は、国内産てん菜糖、輸入粗糖(甘しゃ糖)を原料とする精製糖、輸入白糖の3種類に分類される。このうち、国内産てん菜糖と輸入粗糖(甘しゃ糖)を原料とする精製糖が大部分を占め、いずれも国内のてん菜製糖工場で製造される。てん菜製糖工場では、8月から12月の間に国内で栽培されたてん菜を原料とした精製糖の製造を行い、それ以外の時期に輸入した粗糖の精製を行っている。
 
 国内で製造された精製糖の標準的な品質は、ロシア連邦規格・計量国家委員会の規格でGost 2194と呼ばれ、糖度が99.7度、ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)基準の色価が90〜120である。一部の工場では、これよりも質の高いGost 2294(色価はICUMSA基準で45〜60)の精製糖も生産されている。
 
 
 
 
 
 
(3)砂糖の消費量
 
 国民一人当たりの砂糖の消費量は、およそ40キログラムでEU27カ国の平均(33〜34キログラム)からみると多い。また、EU諸国における砂糖の家計消費割合が10〜20%であるのに対し、ロシアは消費量の過半が家庭で調理に使われているのも特徴である。
 
 砂糖の部門別消費割合をみると、家庭用以外では製菓・製パンなど食品産業向けが最も多く28%、このほか、サービス部門(ホテル、レストラン、ケータリング)、公共施設(病院、学校、軍など)、食品以外、その他といった部門が考えられるが、これら4つを合わせても消費量全体の4分の1にも満たない。
 
 
 
 
(4)輸出入量
 
 輸入する砂糖は大部分が粗糖で、その最大の輸入先はブラジルである。ブラジル以外で、ロシアが定期的に粗糖を輸入しているのは主にキューバとタイであるが、現在は輸入量が非常に少ない。輸入粗糖は、主に近隣の旧ソ連構成国向け砂糖の輸入港でもある黒海のNovorossiysk港からロシアの南部や中部にあるてん菜製糖工場に列車で運ばれる。
 
 白糖の輸入については、粗糖の不足分を補う形で行われ、その大半がベラルーシ産である。
 
 
 
(5)代替甘味料および異性化糖の位置づけ
 
 ロシアの甘味料市場では砂糖が主流をなしており、代替甘味料は消費量全体のごくわずかを占めるにすぎない。人工甘味料の中では、2002/03年度にはサッカリンの消費量が最も多かったが、アスパルテームの消費が増加しており、2006/07年度以降、サッカリンを抜いてアスパルテームが最も多く消費されている。
 
 国内では異性化糖は生産されておらず、年間1000トン程度が輸入されているにすぎない。一方、ぶどう糖と結晶果糖の消費量は15万トンほどあり、また、ソルビトールを中心に糖アルコール向けの需要も少ないながらある。
 
 
 
 
 
◆2.主要な生産状況
 
 砂糖産業の農業生産額への寄与率は2%程度と低い。製糖業は、南部、中部黒土地帯、ボルガ/ウラル地方の3地域に集中している。
 
 
(1)栽培部門の生産状況
 
 近年では、てん菜部門を含む農業部門全体への投資の増加、種子の品種改良、改良型生産資材の使用などによる生産性が向上し、この結果、てん菜の単収は2000年代初めの1ヘクタール当たり20〜25トンから、今日では30〜35トンにまで増えた。
 
 また、図3をみると、1ヘクタール当たりの砂糖の歩留まりは、大きな伸びを示していることがわかる。これは、収量向上だけでなく、てん菜の糖分の上昇、貯蔵時における損失の減少、工場の生産性向上も砂糖歩留まりの改善に貢献しているためである。そのため、砂糖の歩留まりは1ヘクタール当たり4トン(白糖換算)に達している。
 
 
 
 
(2)製糖部門の生産状況
 
 表5に、2000/01年度以降における製糖工場の平均処理能力や平均処理量などの主な生産状況の推移を示した。製糖部門で向上したのは、ショ糖の回収率だけではなく、合理化と処理能力の拡大による工場の稼働率である。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
◆3.砂糖制度の主な特徴
 
 ロシアの砂糖の国内価格は、国際価格に連動しつつも、政府の可変輸入関税(variable import tariff)によって調整されるため、国際市場の水準よりもかなり高く維持されている。
 
 
(1)市場アクセス
 
 ロシアは独立国家共同体(CIS)と自由貿易協定を結び、その国内で生産されたてん菜を原料とする白糖の貿易を自由化するとともに、ウクライナを除く全CIS諸国に特恵市場アクセスを認めている。しかしながら、てん菜ではなく輸入粗糖を精製した大量のベラルーシ産の砂糖が無関税で不正に流入する事例が起きて、両国間の貿易紛争にまで発展したことから、両国は、ベラルーシ産砂糖のロシアへの輸出を制限する取り決めを締結した。限度数量は当初(2007年)18万トンであったが、翌年にいったん10万トンに引き下げられた後、2009年に再び15万トンに引き上げられた。
 
 
 
 
(2)国内価格支持
 
 CIS諸国以外から輸入された砂糖には関税が課せられる。現行の関税制度は2004年に導入されて以来、数々の変更が加えられてきたが、その基本原則は変わっていない。簡単に説明すると、関税率は生産者が国産てん菜糖を販売する時期には高くなり、輸入した砂糖を販売する時期には低くなる。また、関税率が、砂糖の国際価格に反比例することも大きな特徴である。すなわち、砂糖の国際価格が下落すると、国内生産者の保護が強化される。ただし、関税率がこのように変動するのは輸入粗糖だけで、輸入白糖には極めて高率の固定関税が適用される。
 
 図5に、可変輸入関税の仕組みを示した。8月1日から4月30日までの期間は高い関税が適用されることが多く、上限を1トン当たり270米ドル、下限を140米ドルとし、この範囲のなかで、砂糖の国際価格の水準に応じて変動する。関税率は毎月設定され、直近3ヵ月間のニューヨーク先物価格の平均に連動している。また、5月1日から7月31日までの期間は低い関税が適用され、上限を1トン当たり250米ドル、下限が50ドルとし、高関税時と同様の方法で設定される。
 
 なお、輸入白糖に対する関税は通年、1トン当たり340米ドルに固定される。
 
 
 
(3)栽培農家と製糖業者の関係
 
 ロシアでは、大多数の国と異なるてん菜代金の支払い制度を採用している。農家は、現金の代わりに納入したてん菜を原料に製造された砂糖の72%を代金として受け取り、この砂糖を独自に販売することができる。砂糖価格高騰の影響で近年のてん菜の平均価格は1トン当たり42米ドルに上っている。
 
 甘しゃ糖を精製するてん菜製糖工場は、貿易業者の委託を受けて粗糖を精製し、所定の受託料を受け取っている。
 
 
 
(4)販売制度
 
 統一された販売体制は整備されておらず、てん菜製糖業者や砂糖で代金を受け取った農家は、地元の市場で民間の取引業者に販売するほか、実需者に直接販売する。てん菜製糖業者から砂糖を買い入れた民間の取引業者は、主として50キログラムの袋詰めで各地域の消費センターに輸送する。砂糖は、地元の卸売商(merchant)が消費センターで購入した後、実需者や小売業者に販売される。
 
 大手の実需者は製糖工場と直接契約して、必要とする品質で砂糖の安定的な供給を確保している。
 
 
(5)てん菜糖加工業発展計画
 
 ロシア政府は、てん菜糖の増産(2008/09年度の350万トンから2012/13年度までに432万トン)および砂糖価格の長期的な安定を目標とした、2010〜2012年のてん菜糖加工業発展計画を策定しているところである。総額予算550億ルーブル(約17.8億米ドル:1615億円)のうち連邦政府から77億ルーブル(約2.5億米ドル:226億円)が交付されるが、残額は製糖業者の出資および金融機関からの融資により財源を確保するものとなっている。
 
 
 
 
 
◆4.製糖産業の概要と構造
 
 ロシア国内では77の砂糖工場が稼働している。このうち75工場でてん菜糖を製造しており、2つの工場が、輸入粗糖の精製を専門に行っている。てん菜糖工場のうち33工場が輸入粗糖の精製も手がけている。
 
 てん菜糖の製糖部門では、7社(Prodimex社、Razguliay社、Rusagro社、Dominant社、Sucden社、Ivolga社、EDF Man社)でロシア全体のてん菜糖の製造に占める比率が70%を超え、上位4社(すべてロシアの企業で、近年、製糖部門にかなり投資をしている)だけでも、シェアが60%に達する。
 
 また、上記4社は、輸入粗糖の主要な精製企業でもある。精糖ではほかにCargill社も大手で、およそ15%のシェアを握る。
 
 
 
 
 
 
 
 この表7をみると、平均的な工場は107日間稼動して、てん菜糖(白糖)をおよそ4万5,000トン製造したことがわかる。製糖作業を行わない期間、これらの工場では結晶化の処理能力(業界全体で一日当たり平均373トン)を活用して、粗糖の精製を行う。メンテナンスに30日が必要であると想定すると、230日近くを精製作業に割くことが可能で、平均的な工場はてん菜糖のほかに、8万5,000トンの精製糖(甘しゃ糖)を製造できるものと考えられる。
 
 輸入粗糖の精製は通常、委託ベースで行われる。だが、精製能力が大きい半面、粗糖の輸入が減少し、競争が激化していることから、精製による収入は精製費用をわずかに上回るにすぎない。
 
 
 
 
◆5.砂糖産業の課題
 
 ロシアでは1999/00年度から2008/09年度まで、てん菜糖の生産量が増加して、輸入への依存度が低下する傾向が顕著であったが、ここにきてその勢いが失われつつある。代替作物の価格高騰と金融危機が砂糖産業に深刻な打撃を与え、農家がてん菜から収益性の良い作物への転換を進めたため、てん菜製糖業界の経営状態が悪化した。
 
 このような状況の変化に伴い、小規模で効率の悪い工場は閉鎖され、てん菜平均処理能力は向上した。近年、主な代替作物(麦などの穀物)の価格が急落するとともに、砂糖の価格が急激に高騰した結果、てん菜の作付面積の減少基調が、今後、増加基調に転じるのは確実と見られる。製糖業界が金融危機による影響から回復するには少し時間が必要となるものの、てん菜の供給量の増加により今後、てん菜製糖業界の財務状況は大幅に改善されるとみられる。
 
 砂糖産業の今後の見通しは、明るい状態がしばらくは続くと考えられる。少子高齢化により需要が確実に減退しているとはいえ、今後、数年間で砂糖産業内の競争環境は、過去10年間と比べ確実に好転するといえる。その理由は、大きく2つあり、ひとつは政府の輸入政策が比較的安定し、CIS諸国(主にベラルーシ)からの砂糖の流入にも一定の歯止めがかけられたこと。もうひとつは、ブラジルは2000年代中盤からの通貨レアル高で、米ドル換算での製糖コストが着実に上昇している。
 
 ロシアは可変輸入関税に保護されているが、ブラジルが砂糖の国際価格に及ぼす影響は大きいため、同国の輸出価格の上昇により国際価格に連動しているロシア国内砂糖価格も長期間上昇してきた。これは今後、ロシアの砂糖産業に大きなメリットをもたらすと推測される。
 
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713



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