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甘いおやつの効用

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最終更新日:2010年7月1日

甘いおやつの効用

2010年7月

静岡県立大学 食品栄養科学部栄養化学研究室 教授 越 英彦

 近年、日本は高ストレス社会あるいは超高齢化社会などと言われています。その中でも特に深刻な社会問題として、ストレスや高齢化に起因すると思われる多くの事件や病態が生じています。急速に変化する高度情報化社会の中で、子供から大人、また、高齢者まで多くの国民が過剰なストレスにより疲れを感じているのではないでしょうか。
 
 精神的、また、身体的なこれらの愁訴は、脳の働きと関係があります。病気になってしまってからは医者や薬の世話にならなければなりませんが、そうなる前に、予防的な立場で関与するのは食べ物です。基本的な3度の食事に加え、上手なおやつの取り方で生活にハリを持たせ、健全な精神活動や活気のある社会を維持したいものです。
 

1.食べ物と脳との関係

 まず初めに、食べ物(栄養)と脳は関係があるのかを考えてみます。脳も生体内の臓器の一つですから、エネルギーが必要です。そのエネルギーは何から供給されるかというと、当然食べたものからきます。また脳自体が作られる素材、脳内のいろいろな調節因子、あるいは脳内ホルモンと言われるもの、これらも食べたものから作られます。それ故、食べ物が脳に何らかの影響を及ぼすことは明らかです。
 
 ところで、脳機能において大切な役割を果たしているものに神経伝達物質(Neurotransmitter)があります。生理活性を持つこの物質の直接的な素材は、アミノ酸(タンパク質)で、食欲、睡眠、記憶・学習、あるいは喜怒哀楽といった情緒などを調節しています。この脳内神経伝達物質は食べ物に含まれる栄養素であるタンパク質(アミノ酸)、糖質(炭水化物)、脂質などにより影響を受けることが明らかになっていますが、今回は、糖(砂糖)の摂取と脳との関連に焦点をあてます。
 

2.ぶどう糖の生体内での役割

 私たちは疲れを感じると甘い物が欲しくなり、また、お腹が空くと御飯などを食べたくなります。日常食べる食事の半分以上は糖質であり、これは、糖質が脂質やタンパク質に比べてエネルギーに転換されやすいからです。糖質には、ぶどう糖、果糖、ガラクトースなどの単糖類や、それらが2〜3個つながった砂糖(ショ糖)などの少糖類、あるいはもっと多く結合した多糖類、また、一部が修飾された糖などがあります。その中でも栄養的に体の中で最も多く利用されているのはぶどう糖です。
 
 主要な糖質源は、このぶどう糖が多数つながった(重合)でん粉ですが、これをぶどう糖にまで分解する消化吸収には時間がかかります。それに比べて砂糖は、ぶどう糖と果糖の2個の単糖が結びついた単純な構造をしているので、速やかに分解され、脳内にも取り込まれます。

3.脳のエネルギー源は?

 多くの臓器は、エネルギー源として糖質、脂質、タンパク質などを利用しますが、赤血球や脳はぶどう糖しか利用できません。しかも、脳でのぶどう糖の消費量は非常に大きく、例えば、安静時での各臓器別のエネルギー消費量を比較すると、脳は体重の約2%程度の小さな臓器であるにもかかわらず、そのエネルギー消費量は体全体の約20%にもなります。
 
 骨格筋は体重の約50%を占めますが、エネルギー消費量は脳とほぼ同じです。また、生後間もない赤ん坊の場合、脳のエネルギー消費量は体の全エネルギー消費量の約半分を占めています。このことからも、脳は多くのぶどう糖を必要とし、酸素を用いてエネルギーを生成していることが分かります。
 
 ぶどう糖やグリコーゲンは、脳に蓄えることが出来ず、また、筋肉や肝臓でのグリコーゲン貯蔵量にも限りがあるため、血糖値が低下しすぎないように、常に食事から糖質を摂る必要があります。効率よくエネルギーを供給するには、一日3度の食事を取る必要がありますし、脳のエネルギー消費量の高い子供においては、食事だけでなく適度なおやつを取ることも必要になります。
 

4.糖の摂取と集中力

 ぶどう糖の摂取と注意力の関係について、ゲームセンターでよく見る運転ゲームを利用した興味深い実験があります。空腹状態とぶどう糖を摂取した状態とで、車のスピードの上昇と事故発生率との関係を調べた報告です。高速運転時にはちょっとした不注意が事故につながるので(事故発生率の増加)、そのような環境を注意力の変化を探る材料として利用したのです。
 
 その結果、予め運転者にぶどう糖を与えておくと、必ずしもスピードの増加に伴って事故発生頻度が増加するわけではないことがわかりました。このことから、ぶどう糖が脳のエネルギー源として利用され、脳機能の面でも注意力や集中力の維持に何らかの効果があったと思われます。
 
 子供のおやつの効果についても興味深い報告があります。アメリカの公立学校で、朝登校してからお昼まで、何も食べないクラスと、授業の合間に飴を与えたクラスとで、1学期間での勉強の達成度を比較したところ、飴を与えたクラスの方が、成績が良かったそうです。この結果については、子供達は飴(砂糖菓子)をもらったので喜んで勉強したのかもしれません。ですが、子供の脳は、多くのエネルギーを消費しているので、授業により消費されたエネルギーを、その都度、飴によって補給していた結果だとも考えられます。
 
 糖分を摂取すると脳内の神経伝達物質の一つであるセロトニンが増加します。ラットにぶどう糖を経口投与すると、速やかに血糖は上昇し、それに伴い血中インスリン濃度も増加します。また、脳内のセロトニン、及び、その代謝物の量は徐々にではありますが、大きく増加します。セロトニンは、記憶学習にも関与すると言われていますが、脳をリラックスさせる働きもあります。集中力は、緊張しているときには出ません。スポーツや勉強においても、極度に緊張していたのでは本来の能力は発揮できません。今回の場合においても、リラックスしているときにこそ、集中力が出ていたと思われます。
 

5.適度なおやつを

 糖分(砂糖)は脳のエネルギー源として重要であるばかりでなく、脳の活動から精神活動にまで影響を及ぼす可能性があります。脳の活性化、エネルギー供給のために、朝食などの3度の食事をしっかり取り、また、仕事や勉強などで疲れたとき、適度なおやつをとることは大切です。疲れた時、気分転換を図りたいとき、また、ストレス解消のためには、砂糖を入れたコーヒーや紅茶、また、緑茶の場合には、付け合わせに甘い羊羹など、糖分を含むおやつを食べてリフレッシュすることをお勧めします。
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