砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 砂糖の国際需給・需給レポート > 4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

印刷ページ

最終更新日:2010年8月4日

4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

2010年8月

調査情報部

◆ブラジル◆ 〜2010/11年度の砂糖生産量は過去最高の4220万トンの見通し〜

(1)2010年7月における見通し

 さとうきび生産の約9割を占める中南部地域の生産が順調であることから、LMCは2010/11ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)のさとうきび生産量を前月の予測(6億3910万トン)から6億6410万トン(前年度比10.8%増)に上方修正した。前年度の砂糖価格高騰により作付けが増加しており、さとうきび収穫面積は807万ヘクタール(同7.5%増)とみられる。さとうきびの増産を受け、砂糖生産量は4220万トン(粗糖換算、同16.9%増)、エタノール生産量は3000万キロリットル(同18.1%増)といずれも上方修正された。さとうきびの仕向け割合は砂糖54.3%、エタノール45.7%と、前年度並みとみられる。
 
 2009/10年度は季節外れの大雨により生産が停滞したが、2010/11年度は主産地の中南部地域で乾燥気候となり、生産は順調に行われている。しかしながら、乾燥気候が今後も続けばさとうきびの生育に悪影響を及ぼす可能性があり、その結果、砂糖生産量が減少することも懸念されている。今後の天候状況による生産への影響が注目される。
 
 
 
 
 
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 砂糖生産量の上方修正を受け、2010/11年度の輸出量は前月の予測から140万トン上方修正され、2980万トン(粗糖換算、前年度比15.5%増)とみられる。前年度の国際砂糖価格高騰を受け、在庫を取り崩して輸出を行った業者が、今年度は在庫の積み増しを行う必要があること、また、国内消費量が1250万トン(粗糖換算、同2.5%増)と増加が見込まれることから、輸出の伸びは増産ペースを下回るとみられる。2009/10年度の最大輸出先であったインドは、生産回復により輸入を大幅に減らすと予測されることから、主要な輸出先はロシアや中東、アフリカ諸国になるとみられる。
 
 最近、ブラジルでは砂糖輸出の遅延が問題となっている。同国にはサンパウロ州のサントス港をはじめ、砂糖の輸出港が6カ所あり、合計輸出量は最大で月間230万トンとされる。これに対し、6月末時点で290万トンの砂糖が船積み待ちの状態にあるとみられ、港湾処理能力をはるかに上回る砂糖が港に流入していることがうかがえる。これは、前年度分の契約について、主産地の中南部地域の大雨による生産停滞から、一部の出荷が2010/11年度に持ち越されたことに対応するため、新年度に入り、同地域の製糖工場が例年を上回るペースで生産、出荷を行ったことが原因とみられる。
 
 6月1日までに、同地域の生産量は前年同期比30%増の670万トンに達した。また、最近の国際砂糖価格下落を受け、需要国が輸入を再開し、ブラジル産砂糖への引き合いが強まっていることも、港湾への過剰な砂糖流入の原因の一つとみられる。ブラジルの輸出量は世界の約5割を占めており、同国の輸出遅延による供給不足は、最近のニューヨーク粗糖相場の堅調な推移の一因とされる。
 
 
 

◆インド◆ 〜2010/11年度の生産量は前年度比31.0%増加の見込み〜

(1)2010年7月における見通し

 2009/10インド砂糖年度(10月〜翌9月)の生産は終了し、砂糖生産量は2030万トン(粗糖換算、前年度比32.7%増)と前年度から大幅に増加するとみられる。同年度の生産量は当初、モンスーン期の少雨によるさとうきび生産の停滞により1600万トン程度と予測されていたが、主産地のマハーラーシュトラ州やウッタル・プラデーシュ州で2010年1月前後に降雨があり、さとうきび生産量が増加したことを受け、砂糖生産量も増加した。
 
 2010/11年度については、前年度のさとうきび価格高騰により作付けが増えたことから、さとうきび収穫面積は494万ヘクタール(前年度比25.1%増)とみられ、さとうきび生産量は3億3230万トン(同22.0%増)、砂糖生産量は2660万トン(同31.0%増)といずれも大幅な増加が見込まれる。しかしながら、7月上旬までのモンスーンによる降水量が過去50年間の平均を20%下回っており、さとうきびの単収低下が懸念されている。現時点では、このことが今年度の生産に及ぼす影響は未知数であるが、インドの生産量はモンスーン期(6月〜9月)の降水量で大きく変動することから、今後も注視が必要である。
 
 
 
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 2009/10年度の輸入量は380万トン(粗糖換算、前年度比13.6%減)とみられる。生産は回復したものの、消費量2500万トン(粗糖換算、同2.0%増)を依然下回っており、輸入と在庫の取り崩しによる対応が必要とみられる。
 
 2010/11年度の消費量は2550万トン(粗糖換算、前年度比2.0%増)とみられ、同年度の砂糖生産量が予測どおり2660万トンに達すれば、インドは2年度ぶりに国内消費の自給が可能になると見込まれる。輸入量は120万トン(同68.4%減)と予測されるが、この大半は輸入粗糖を精製して再輸出を行う業者によるものとみられる。
 
 通常、砂糖の輸入には粗糖、白糖ともに60%の関税が課せられるが、2010年12月末までこれらは一時的に免除されている。国内砂糖価格の下落を受け、砂糖業界は早期に関税賦課を再開するよう求めているが、政府はインフレを懸念して、再開についての決定を先延ばしにした。
 
資料:LMC “Monthly Sugar Report, July 2010”
 
 
 
 

◆中国◆ 〜2010/11年度の輸入量は大幅増加の見込み〜

(1)2010年7月における見通し

 2009/10中国砂糖年度(10月〜翌9月)の生産は終了し、砂糖生産量は前年度比12.6%減の1180万トン(粗糖換算、白糖換算では1070万トン)に落ち込むとみられる。減産の主な要因は、主産地の雲南省と広西壮族自治区で干ばつによりさとうきびの生産量が落ち込み、両地域の砂糖生産量が合計で100万トン以上減少したためである。また、北部のてん菜生産地域で作付面積が前年度比37.5%減の15万ヘクタールに減少し、てん菜糖生産量は70万トン(粗糖換算、同30%減)と、大幅に減少したことも一因である。
 
 てん菜作付面積の減少は、政府の最低買付価格や買入制度で保護される穀物への作付転換が行われたことによる。なお、中国農業統計資料(2008年)によると、2008/09年度における甘味資源作物の作付面積の割合は、さとうきび87.6%、てん菜12.4%と、砂糖生産の原料は主にさとうきびとなっている。
 
 政府は、2010/11年度に黒龍江省および新疆ウイグル自治区のてん菜作付面積を2008/09年度の水準に回復させること、また内モンゴル自治区の作付面積を拡大させることを目指しており、これらが達成された場合、同年度の作付面積は28万ヘクタール(前年度比86.7%増)に増加し、てん菜糖の生産量は120万トン(粗糖換算、同71.4%増)に回復するとみられる。
 
 また、さとうきび生産量についても、収穫面積は干ばつによる影響が不確定ではあるものの、現時点で、前年度と同程度の147万ヘクタール、単収は前年度の干ばつによる減少から回復が見込まれることから9890万トン(同15.0%増)に増加するとみられる。これらのことから、中国全体の砂糖生産量は1360万トン(粗糖換算、同15.3%増)とかなりの増加が予測される。
 
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 2009/10年度において、生産量1180万トン(粗糖換算、前年度比12.6%減)に対し、消費量は1520万トン(粗糖換算、同2.0%増)と予測され、340万トンの不足が生じるとみられる。不足分は砂糖の国家備蓄放出と輸入によって補われるとみられ、政府は、これまでに6回にわたり合計で130万トン(白糖換算)の国家備蓄を放出した。輸入量は前年度から大幅増加の150万トン(粗糖換算、前年度比36.3%増)と見込まれる。
 
 2010/11年度は、生産量が1360万トン(粗糖換算、同15.3%増)に回復すると見込まれるものの、消費量は1600万トン(粗糖換算、同5.3%増)と依然生産量を上回るとみられ、また、前年度の放出により国家備蓄は枯渇し、2010/11年度においては放出が行われないと見込まれることから、輸入量は250万トン(粗糖換算、同66.7%増)と、前年度から大幅な増加が予測される。
 
資料:LMC “Monthly Sugar Report, July 2010”
 
 
 
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713