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砂糖と酪農

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最終更新日:2010年9月2日

砂糖と酪農

2010年9月

独立行政法人 家畜改良センター 新冠牧場 衛生課長 有山 賢一

 

1.子牛に与える砂糖水

 独立行政法人家畜改良センターは、我が国における畜産の発展と国民の豊かな食生活に貢献することを使命として、生産性が高く、安全でおいしい畜産物を生産できる家畜づくり、その飼料となる作物づくりなどの業務を行っています。
 
 日頃の業務改善のための工夫から生まれたアイデアのうち、畜産農家、試験研究機関などの畜産現場で活用できるものについては、「畜産現場で使えるアイデア集」としてまとめ、家畜改良センターのホームページ(http://www.nlbc.go.jp/)に公開しています。
 
 その中で紹介したものに「台所にある塩と砂糖を使った低コスト簡易経口補液剤」があります。詳細は後述しますが、ポイントは、下痢や発熱などトラブルの発生しやすい子牛の時期に、子牛のし好性の高い砂糖を使うことによって、十分な水分補給を行えることです。その結果、トラブルの発生や重症化を防ぐことが期待できます。
 
 簡易経口補液剤の作り方や特徴を紹介します。
 
 腸管から水分の吸収を良くするため、塩化ナトリウム濃度は0.45%、し好性を考慮して、ショ糖濃度を2%としました。この濃度で1リットルの簡易経口補液剤を作る場合には、食塩4.5グラム(小さじすりきり1杯)、砂糖20グラム(大さじすりきり1杯)を温水に溶かします。
 
 いざという時のために、用いるバケツや水槽の容量に合わせて砂糖と食塩を計量し、あらかじめビニール袋などに分封しておくことが勧められます。砂糖や食塩は一般家庭の台所にあるもので十分で、砂糖はグラニュー糖であれば、取り扱いが容易です。
 
 簡易経口補液剤の1リットル当たりの作成経費は3円程度であり、市販の経口補液剤に較べ割安で、コストを気にせず多用することが可能です。
 
 ただし、簡易経口補液剤には、子牛が下痢を起こした場合に失われるカリウムなどが入っていないので、下痢による重度の脱水症状を呈した時には、適宜、市販の経口補液剤や点滴などで補う必要があります。
 
 また、子牛が飲むことを嫌がる経口投与薬(良薬口に苦し?)をこの簡易経口補液剤に溶かすことで、子牛が自発的に飲むことによる投薬作業の省力化が期待されます。
 
 牛は、生後6カ月を過ぎると反すう胃がほぼ完成し、第1胃内に共生する微生物が作り出した揮発性の脂肪酸を第1胃から吸収し、肝臓でぶどう糖を作って利用するようになります。この月齢以降、口から摂取した糖分は、第1胃内の微生物の餌となりますから、コスト面から考えて牛の飼料として砂糖を与えることはなくなります。しかし、甘いものを好むというし好は一生涯続くようです。
 
 

2.より多くの牛乳を搾るために

 牛は妊娠して、子牛を分娩した後、泌乳を始めます。平均的な日本のホルスタイン種では年間8,000〜9,000 キログラムの乳を生産しますから、日量25〜30キログラムの乳を生産します。中には年間20,000 キログラム以上の乳を出す牛もいます。乳1キログラムの生産には4.3メガカロリーのエネルギーが必要とされますから、その日の乳生産に必要なエネルギーを飼料として摂取する能力が求められます。
 
 ですから、酪農家や畜産技術者は、(1)毎日牛が食べきれる量の中で、(2)その時の乳生産に必要なエネルギーや栄養成分を賄い、(3)子牛のときから牛とともに育ててきた第1胃内の微生物が十分に働ける飼料の組み合わせを考え、さらに、(4)安く(5)年間を通じてこれらの要件が満たせるかということに頭を悩ませることになります。
 
 このような仕事を飼料設計と言います。実際には自家生産される牧草や飼料作物を、乳酸発酵をさせてし好性と保存性を高めたサイレージにしたり、省力的な管理のために放牧したりして利用します。その後、自家生産される牧草で不足する分のエネルギーや栄養成分はトウモロコシなどの穀類を中心とした配合飼料で補うことになります。最終的には、どの飼料をどれくらいの量与えるかを決めなければなりません。
 
 現実には、より多くのエネルギーを牛に摂取させるために、牧草の部分を削ってトウモロコシなど高カロリーの成分を多く含む配合飼料を与えることも行われてきました。しかしながら、トウモロコシのでん粉のように第1胃内の微生物にとって使い勝手のいい糖分を与えすぎますと、第1胃で急速に揮発性の脂肪酸に分解されて、第1胃のpHを急激に下げ、第1胃が正常に働かなくなる原因の1つになります。
 
 第1胃の働きを高め、より多くの乳生産を目指すための飼料として、第1胃内でかさがあり、第1胃内の微生物に分解される繊維分を多く含む飼料が求められます。
 
 このような要件を満たす飼料の1つにビートパルプペレットがあります。これは、てん菜糖生産の際生じる副産物で、てん菜を細断し、糖分を搾った残しを乾燥後、ペレット状に加工したものです。日本では北海道で約20万トン生産されるほかに、約40万トン(2006年)が、アメリカ、中国、チリなどから輸入されております。ペレット状に加工されて配合される飼料はビートパルプペレットに限りませんので、配合飼料の中では目立たない存在ですが、第1胃内微生物の働きを十分に引き出す飼料として重要な役割を果たしております。
 
 
 
 

3.まとめ

 酪農では、普通は人が食べない牧草を牛に食べさせて、人が食べられる食品(乳や肉)を生産します。農作物の生産に適さない寒冷地、傾斜地でも牧草は生産できますので、酪農は行えます。北海道をドライブしていると、市街地に近い比較的便利なところはてん菜などの畑作、山間部など少々不便なところには牧草地と、利用する土地を棲み分けていることが感じられます。
 
 てん菜畑からの産物も、人間は砂糖、牛は副産物のビートパルプとうまく分け合っていることがわかります。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713



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