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スポーツドリンクと糖質

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最終更新日:2010年10月5日

スポーツドリンクと糖質

2010年10月

大塚製薬株式会社 ニュートラシューティカルズ事業部 佐賀栄養製品研究所 桜井 政夫

 スポーツドリンクに糖質が含まれる理由の一つには、一般の清涼飲料水と同様に味をよくして飲みやすくすることがあげられますが、今回はスポーツドリンクの主要な機能である水分・電解質補給、エネルギー補給に着目し、これらにおける糖質の役割について紹介します。

1. はじめに

 運動時に水分を摂ることは、かつては制限されるのが一般的でしたが、近年では熱中症予防の観点からも水分の補給が奨励されています。スポーツドリンクは、このような運動時に飲む飲料として消費者に広く認知されていますが、求められる主要な機能は水分、電解質およびエネルギーの補給であると言われています。
 
 水分と電解質の補給については発汗で体外に失われたものを補うこと、またエネルギー補給については疲労防止、パフォーマンスの維持、向上を目的としたものです。日本国内ではその組成について特に規定のようなものはなく、上記以外にさまざまな機能を期待した成分が含まれている製品も存在しますが、ほとんどのスポーツドリンクには電解質と糖質が含まれています。
 
 

2.糖質が水分補給効果に及ぼす影響

 われわれの体には、運動などにより体温が上昇したときに皮膚血流の増加と発汗によって熱を外に逃がし、体温を一定に保つ機能が備わっています。しかし、発汗が続いて多くの水分と電解質を失った場合には、血液性状の変化や血漿量(血液中の水分の量)の減少が起こり、この体温調節機能がうまく働かなくなります。その結果、熱中症のうち症状が最も重篤な熱射病が起こる危険が高まってしまいます(*1)。
 
 さらには、血漿量が低下した場合、全身の血流を維持するため、心拍出量や心拍数も増加し、循環器系への負担も増します。同じ運動でも、温度、湿度、風、日射などの環境や着衣などにより水分と電解質の損失量は大きく異なりますが、1リットルの水分を汗で失うごとに、およそ直腸温は0.3度、心拍出量は1分間当たり1リットル、心拍数は1分間当たり8拍上昇すると言われています(*2)。このような状態にならないよう、運動中はもちろん、日常生活においても暑熱環境下で汗をたくさんかいている時には、水分補給は大変重要となります。
 
 どのように水分補給をしたらよいかというと、日本体育協会では運動前には250〜500ミリリットル、運動中には1時間あたり500〜1,000ミリリットルを摂取目安量としています。また、飲みやすいものが薦められており、水温は5〜15度で0.2%程度の食塩と4〜8%程度の糖分を含んだものが適当とされています(表1)(*3)。
 
 また、アメリカスポーツ医学会は、運動中には脱水量が体重の2%を越えないよう水分を摂取することを推奨しており、飲料には電解質と糖質を含んでいることがよいとしています(*4)。
 
 糖質を含んだ飲料が推奨される理由としては、腸管での水分吸収を促進することが挙げられます。主要な糖質であるブドウ糖は、腸管内でナトリウムが同時にあると速やかに吸収されます。そしてそれらに引っ張られ水分も吸収されるというのがそのメカニズムです。
 
 実際に、ブドウ糖だけ、あるいはナトリウムだけの溶液より、それら両方を含んだ溶液の方が水分の吸収が速いことが実験で明らかになっています(*5)。また、単糖であるブドウ糖に比べて、同じ糖質量であれば重合した(マルト)デキストリンの溶液では浸透圧が低くなるため水分吸収が速まりますし、ショ糖の溶液あるいはブドウ糖と果糖の混合溶液ではブドウ糖以外の糖の影響により水分吸収はさらに速まることも報告されています(*6)。
 
 以上により、適度に糖質を含んだ飲料は、体内ですばやく水分補給効果を発揮することが期待できます。ただし、糖質濃度の異なる飲料を摂取したときに、胃から腸に飲料が送り出される速度は糖質の濃度が10%以下であれば差はないのですが、これを超えると遅くなるので(*7)、水分補給の際には飲料の糖質濃度に注意が必要です。
 
 
 
 

3. エネルギー補給のための糖質

 運動時の主要なエネルギー源は糖質と脂肪です。糖質は、脂肪に比べて体内に貯蔵されている量が圧倒的に少ないものの、酸化されエネルギー産生に利用されやすいため、長時間にわたる運動時には血糖や筋グリコーゲンとして貯蔵された体内の糖質が枯渇することが、疲労の一因であると考えられています(*8、*9)。
 
 そして、1時間当たり30〜60グラムの糖質の摂取によって、血糖値を維持し疲労を防ぐことが可能と言われています(*2)。さらに、運動時にたくさんの糖質を補給して、積極的にパフォーマンスを向上させることが可能かどうかについても検討されており、1時間程度の運動や2時間以上の運動においても、運動直前や運動中の摂取が有効であることが示されています(*10−*12)。
 
 さらに近年では、摂取する糖質量が同じであれば、ブドウ糖単独よりも果糖あるいはショ糖など他の種類の糖と混合している方が、パフォーマンスをより向上させることも報告されています(*13)。ただし、これらの実験では糖質の摂取量が1時間当たり100グラム以上と多いため、安全に運動をするために重要な水分補給を同時に行おうとすると、飲料の糖質濃度が高くなりすぎて下痢などの腹部症状が生じる恐れがあります。そのため、効果的な水分補給とエネルギー補給を運動中に両立させるために、糖質濃度が4〜8%の飲料が推奨されています(*2)。
 
 また、スポーツドリンクにもよく使われている果糖ですが、ブドウ糖にくらべてゆっくりと酸化され(*14)、脂肪の酸化を抑制しないという特徴をもっています(*15)。運動中に積極的に脂肪を使って体内に糖を蓄えておきたい場合には有用であるといえます(*15、* 16)。
 
 運動により消費された骨格筋中のグリコーゲンは、運動後すぐに糖質を補給したときの方が、2時間後に補給した場合よりも大きく回復することが報告されています(*17)。運動後には、汗で失った水分と電解質をスポーツドリンクでしっかり補うだけでなく、すみやかに糖質を補うことも重要であると言えます。
 

4. まとめ

 以上ご紹介したように、スポーツドリンクに含まれる糖質は、水分補給効果を高め、エネルギーの補給に役立ちます。また、糖質とはいっても、摂取後に生体内で起こる生理学的、生化学的反応は、その種類によって異なる場合があります。スポーツの現場では、目的に応じてスポーツドリンクを使い分けるとよいでしょう。
 
 

参考文献

*1)森本武利, 臨床スポーツ医学 16: 326, 1999. 
*2)Coyle EF and Montain SJ, Med Sci Sports Exerc 24: S324, 1992. 
*3)日本体育協会, スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック, 1994.
*4)Sawka MN, et al., Med Sci Sports Exerc 39: 377, 2007.
*5)森田雅弘ら, 医学のあゆみ 145: 773, 1988. 
*6)Shi X, et al., Med Sci Sports Exerc 27: 1607, 1995. 
*7)Costill DL. Fluid homeostasis during exercise. In: Perspectives in Exercise Science and Sports Medicine vol. 3: 97, 1990. 
*8)Åstrand P-O and Rodahl K, Textbook of work physiology, 1976. 
*9)Bergstrom J and Hultman E, Jama 221: 999, 1972.
*10)Neufer PD, et al., J Appl Physiol 62: 983, 1987.
*11)Coyle EF, et al., J Appl Physiol 61: 165, 1986.
*12)Coyle EF, et al., J Appl Physiol 55: 230, 1983.
*13)Jeukendrup AE, Curr Opin Clin Nutr Metab Care 13: 452, 2010.
*14)Burelle Y, et al., Br J Nutr 96: 56, 2006.
*15)井垣京子ら, 体力科学 43: 695, 1994.
*16)Levine L, et al., J Appl Physiol 55: 1767, 1983.
*17)Ivy JL, et al., J Appl Physiol 64: 1480, 1988.
 
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