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医薬品添加物としての砂糖

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最終更新日:2010年12月2日

医薬品添加物としての砂糖

2010年12月

日本製薬工業協会 企画部長 草井 章

 医薬品に砂糖(白糖や精製白糖)が使用されているのはご存知でしょうか。代表例として糖衣錠があります。言葉通り、粉末や顆粒の混合物を錠剤機により圧縮成形して調製した錠剤(素錠あるいは未包皮錠と称します)に、白糖の液を掛けて、乾燥して中身を包み込んだものです。糖衣錠は糖層が厚く、そのため硬くて分割することは難しいですが、包丁やカッターでカットすることで糖衣の様子を観察することができます。
 
 また、散剤や顆粒剤などにも苦味低減やマスキングの目的で添加されています。さらに、小児用の溶液製剤であるシロップ剤でも汎用されています。ここでは、医薬品添加物としての白糖、精製白糖について、分かり易く記載することにします。また、「砂糖」は一般名ですが、医薬品添加物の場合は、公定書である日本薬局方で使用されている「白糖」、「精製白糖」と呼びますので、この名称を使用します。
 
 なお、くすり(有効成分)としての砂糖に関しては、本誌2005年11月号に千葉大学大学院薬学研究院の戸井田先生が「“クスリ”としての砂糖」と題して執筆されていますので、ご参照下さい。
 

有効成分と医薬品添加物

 くすりには、当然ですが有効成分(くすりとしての作用を発現する物質)が含まれていますが、患者様や病院の調剤室の薬剤師が取り扱いやすく、また服用しやすいように工夫がされています。例えば、錠剤の場合、大体、直径を6〜9ミリメートルとしており、そのため質量が80〜300ミリグラムのものが多くなっています。このうち、有効成分の量は、くすりによって異なりますが、通常1〜150ミリグラム程度となっています。また、散剤、顆粒剤では一回の服用量は0.5〜2グラムですが、有効成分は100〜500ミリグラム程度です。
 
 その他は、全てをまとめて医薬品添加剤と称しますが、何が、どのような目的で加えられているのでしょうか。
 
 医薬品の添付文書や箱などをご覧になりますと、添加物という欄に名称が列記されてあります。以下、添加物が記載されることになりました経緯について説明します。
 
 まず、医薬品添加物によると思われる安全性の問題が提起されたことから、1988年の厚生省薬務局長通知(10月1日付薬発第853号)で、すべての医療用医薬品(病院や医院で医師の処方箋に基づいて病院の薬剤部や調剤薬局で処方される医薬品)については、本通知で特定された添加物の名称もしくは分量を添付文書、または必要であれば、容器もしくは被包への記載が義務付けられました。
 
 一方、一般用医薬品(薬局で医師の処方箋なしで購入が可能な医薬品)に使用されている医薬品添加物については、日本製薬団体連合会の自主申し合わせ(1991年3月27日付日薬連発第165号)、1991年6月3日付薬務局医薬品安全課事務連絡により医療用医薬品と同様の表示が求められることとなりました。
 
 その後、医薬品という生命関連商品について、可能な限り情報の開示を求める社会的趨勢に応えるため、2002年に日本製薬団体連合会の自主申し合わせ(日薬連発第170号、3月13日付)により、医療用医薬品、一般用医薬品ともに、添付文書に全成分表示を行い、一般用医薬品においては、外箱(またはそれにかわるもの)にも自主記載指定成分を含む添加物の名称を表示することになりました。
 
 このようなことから、上記の日薬連発第165号は廃止され、2002年4月9日付医薬安発第0409001号により、上記1991年6月3日付薬務局安全課事務連絡も廃止されることとなりました。
 
 

医薬品添加剤とその役割

 くすりの有効成分以外は、すでに記しましたように医薬品添加剤と称しています。その定義は用語解説欄に記しました。
 
 医薬品添加物辞典2007(編集 日本医薬品添加剤協会、発行 株式会社薬事日報社)では、精製白糖は、安定(化)剤、甘味剤、基剤、矯味剤、結合剤、光沢剤、コーティング剤、糖衣剤、賦形剤、崩壊剤、防湿剤、白糖はこれらに加え、防腐剤、溶解剤、溶解補助剤、滑沢剤として使用されていると記されていますが、賦形剤、崩壊剤、結合剤、糖衣剤、甘味剤が主な用途といえます。
 
 賦形剤は、文字通り形を賦与するものであり、有効成分のみですと微量で取り扱いに困難なため、不活性成分を添加し希釈することにより、取り扱うことが容易な嵩(かさ)・質量にします。有効成分と反応せず、品質がいつも一定で、比較的安価で、入手性が安定していることが必要です。有効成分と混合したときに、どこを採っても有効成分が均一に分布している(混合均一性といいます)ことも重要です。
 
 結合剤ですが、くすりの成分は基本的には粉末ですので、粒にしたり、固めたりする際に、粉末どうしをくっつける必要があります。その作用をするものが結合剤で、のりのような作用をする成分です。
 
 次に崩壊剤です。くすりが作用を発揮するためには、有効成分が体内の作用するところ(作用部位)に送り届けられる(送達される)必要があります。もちろん作用部位に送達するのは血液ですが、その血流に乗るためには、錠剤はコップ一杯(150〜200ミリリットル)の水または白湯で服用された後、胃内で崩れ(崩壊といいます)、次いで、胃内や消化管を移動中にその崩れた断片から有効成分が溶け出し(溶出といいます)、主として小腸上部から吸収され、その部位の毛細血管から血液に溶解した状態で血流とともに肝臓を経由し、全身静脈血とともに心臓へ流入し、肺を経由したのち動脈血とともに全身に流れ、作用部位に届けられることが必要です。
 
 つまり、錠剤や顆粒剤などの固体状態の製剤が、崩れ、有効成分が溶解することが必要であり、固められた製剤が水分を吸収して崩れやすくする作用を有するものを崩壊剤といいます。白糖は水を吸って膨張することはありませんが、水への溶解性が極めて高いため、固体成分から白糖のみが溶解することにより、製剤の形状を保持することが出来なくなり、その結果崩壊するということになります。
 
 コーティング剤は、苦味をマスクしたり、外気や湿気から内部を保護したり、体内での崩壊・溶出の調節(胃内で崩壊しないように腸でのみ溶解する皮膜を用いる、あるいは徐々に有効成分を放出するように工夫するなど)したり、他の錠剤と区別し易く(色や印字により識別性を賦与)したり、錠剤の外観を美しくしたりするために使用されています。白糖は糖衣錠に使用されています。
 
 その他、昔から「良薬口に苦し」と言われているように、くすりは塩基性薬物が多いため大体苦味を呈しますが、散剤や顆粒剤の場合、服用時に有効成分固有の苦さを緩和する目的で、甘味剤を加えることがあります。通常、香料を一緒に使用し、甘味作用を増強します。余談ですが、日本では香料としてイチゴ味やオレンジ味が汎用されています、海外ではバナナ味やレモン味が好まれているようですが、味に対する国民性というか民族差があるようで興味深いことです。
 
 
 
 

医薬品添加物としての白糖や精製白糖

 経口投与製剤には固形剤(錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤など)、内服用液剤(シロップ剤、懸濁剤、乳剤など)、漢方エキス製剤がありますが、そのうち、白糖、精製白糖は、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などに医薬品添加物として使用されています。錠剤では、主として糖衣として、散剤や顆粒剤、シロップ剤の場合には、主として甘味剤として用いられています。いずれも、患者様の服用性向上のために用いられています。
 
 なお、シロップ剤では、溶液の40〜60%は白糖です。また、有効成分の安定性確保のため、製品としては粉末あるいは顆粒状態ですが、服用時に水などを加え分散・溶解してシロップ剤として使用するドライシロップ剤があります。
 

規格および使用前例

 砂糖(白糖、精製白糖)は既に記したような理由・目的で、くすりに使用されていますが、どのような砂糖でも使用可能なのでしょうか。
 
 日本薬局方に収載されている、使用可能な砂糖は白糖、精製白糖です。白糖、精製白糖として求められる規格について「第十五改正日本薬局方」には、性状、確認試験、確認試験、旋光度、純度試験、電気伝導度、乾燥減量、強熱残分などの項目で定められています。貯法(保存方法)も密閉容器と定められています。
 
 医薬品添加剤として使用するには、使用前例があること、つまり、投与経路(経口、注射、外用など)ごとに、既に承認を受けたくすりで使用されている量を上回らないことが必要とされています。製剤設計担当者が常に考慮すべきことの一つが、この使用前例の有無と最大1日投与量です。白糖、精製白糖の使用前例については、「医薬品添加物辞典2007」(日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社発行)には、経口投与時1日最大投与量は、白糖が適量、精製白糖は33グラムと記されています。
 
 
 
 

製剤の製法

 固形製剤の製法を図示(図1)しましたが、最終的な剤形は異なっていても、各単位操作は同じであることがお分かりになると思います。これら単位操作を組み合わせて、多岐にわたる剤形が製造されています。
 
 なお、糖衣錠は外観が美しく、服用性が優れていますが、何度も糖層を掛け(錠剤の40〜70%)、徐々に乾燥させることから製造に時間がかかる、製造時に錠剤内部に水分が蓄積する(防湿フィルムを最初に掛けることがあります)などの課題もあります。また、ドライシロップは顆粒剤に準じて製造されます。
 
 一方、シロップ剤ですが、最終的な白糖の濃度は30〜60%となるように製造されています。「単シロップ」は白糖の水溶液で、白糖850gを精製水で溶解し全量を1000ミリリットルにしたもので、20℃での比重は1.310〜1.325と規定されています。粉末などを溶解分散させ、販売されていないシロップ剤を病院や医院の調剤室で院内製剤として薬剤師が調製するときに使用されます。
 
 
 

最近の動向

 白糖、精製白糖は上記のように汎用されており、今後もその状況は維持されると思われます。なお、一般用医薬品では白糖や精製白糖の代わりに、消化管から吸収されないエリスリトールを使用し健康志向(例えば、糖衣錠ではシュガーレス糖衣、顆粒剤では低カロリー)をアピールしている製品も出てきています。また、エリスリトールやキシリトールは水に溶解するときに吸熱するため、服用時に口腔内で溶解すると清涼感を感じることから、顆粒剤や散剤で、白糖の一部をこれらに置き換え使用されているようです。
 
 精製白糖に機能性を付与した添加剤として、精製白糖球状顆粒があります。これは精製白糖を顆粒状に調製したものです。これを芯物質として、表面に有効成分をコーティングし、さらに、水不溶性膜などの機能性のコーティングを施すことにより、徐放性(徐々に放出されて効果が持続する性質)などの機能を付与し、投与回数を減じることが出来るようにする際に使用されています。
 
 また、同様に難溶性薬物を表面にコーティングし、溶解表面積を大きくすることにより、溶解速度を高め、経口吸収性を向上する目的で使用されています。この精製白糖球状顆粒は、医薬品添加物規格(薬添規)に収載されており、1日最大使用量は384ミリグラムとされています。
 
 今後、白糖、精製白糖を使用した新たな機能性を有する医薬品添加剤が生まれてくることが期待されます。
 
 
 
このページに掲載されている情報の発信元
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